(抜粋)

自分の人生はワイパーのようにいつも同じ場所を往復しているだけではないのか…

そう思うとき坂口はほんとうに不幸に思う。

その不幸から逃れられることは永遠にないだろう。

それこそ、そう、

別の世界にでも行かないかぎり。

 

(抜粋)

人間は遺伝子の乗り物(ビークル)にすぎない、という説がある

人間とは遺伝子の供試試料にすぎない

 

思いもかけない遺伝子が、

思いもかけない遺伝子のスイッチを入れ、

思いもかけないタイミングで、

機能を発現させる…

 

そうであれば、    気持ちが悪い

 

 

(抜粋)

梨花には、いわゆる識字障害(ディスレクシア)と呼ばれる障害がある。

そのために、知能が未熟と誤解されがちで、つらい子供時代を送ってきた。

いつからだろうか?よく覚えていない

ここは自分がいるべき世界ではない、と思うようになった。

ここではないどこかに、

こんな自分でも生きるのを許容してくれる、

そんな別の世界があるのではないか、

と思うように…いや、祈るようになった。

 

 

著者:山田正紀

著書:「バッドランド」短編収録

     「コンセスター」2007年

     「バットランド」2011年 

     「別の世界は可能かもしれない。」2013年

     「お悔みなされますな晴姫様、と竹拓衆は云った」2014年

     「雲のなかの悪魔」2012年

 

発行:河出書房新社 2018年発行