騒音がすべて真直ぐに立ちのぼって行くような秋日和である。

曲馬娘お光はもう人群れに酔いしびれていた。(冒頭抜粋)

 

曲馬の馬が行き来し、八木節が聞こえ、新栗を網で焼く香いや、乳房をあらわに授乳する母親や、鼻たれ小僧たちのいたずらや、

 

賑やかな祭りの喧噪の明るさが、

 

お光の空虚の影を際立たせる。

 

 

曲馬娘としてしか生きられないお光は、

子どものままではいられない。

 

17歳。

慣例のように親方から性の搾取を受けても

あきらめるしかない。

 

しかし、それによって

自分の女性としての性を無意識にも意識し始め、

 

そこにどんな未来があるかもわかっていて

少女から大人へと

心と体がゆらいでいくお光を、

 

川端をおもわせる青年がじっと見つめる(観察している)。

 

 

(部分抜粋)

眼球の悪光りしている素的に耳の大きい鳥打帽の学生らしいのが、

小屋の前囲いの横棒につかまりながら、

さいぜんからお光の顔をみつめている

 

 

 

著者:川端康成

著書:「招魂祭一景」(1921年4月号「新思潮」掲載)

発行:岩波書店 2018年発行「東京百年物語2 1910~1940」収録作品

編者:ロバート・キャンベル 十重田祐一 宗像和重

装画:川瀬巴水「清洲橋」1931年作

 

*変容し続ける東京を舞台とする文学作品を収録(1~3)

1923年9月1日関東大震災発生前の東京を舞台とした作品

招魂社(靖国神社)で行われる秋季大祭で曲馬芸をする17歳のお光が主人公

 

川端のデビュー作

川端康成 1899~1972 大阪生まれ 1917~1935東京在住