竹山瑞希ちゃんは、白い。
二の腕の内側までバニラアイスクリームのように、白い。
白くて、触ると蠟人形みたいにすごくひんやりしてる。
山形から出て、狭いワンルームマンションで一人暮らしをしている。
霞ヶ関に近い場所にある会社では「派遣さん」で、名前で呼ばれない。
コンパもうまくいかない。
今年30歳になる。
いつもにこにこしている。
でも、ファッション誌のモデルさんの笑顔と同じ型だ。
でも、雑誌の中のモデルじゃない。
現実に生きている女の子だ。
感情がないわけがない。
ないわけないじゃないか。
なにかあったかいものを食べさせてあげたかった。
(部分抜粋)
2008年「別冊文藝春秋」初出
著者:山本文緒(1962.11.13~2021.10.13)
2003年(40歳)のときうつ病を発症し、執筆を中断して治療。
約6年後、エッセイで復帰。
2011年軽井沢に移住。
2021年春より体調を崩し膵臓癌4b(余命4か月)の診断を受け、
自宅療養を続け、軽井沢の自宅で亡くなられた。(58歳)
著書:「ばにらさま」短編集 他5編
発行:文藝春秋 2021.9.10発行
装画:タカノ綾
