瞼を開けると、見慣れた天井が静謐を保って暗闇に沈んでいた。

骨に染みいるような、寂しさ。

 

布団の中で身体を縮めながら、菅沼の言葉がごく自然に思いだされた。

 

「コロナで思い知ったよ。在宅勤務で一日誰とも喋らない」

「平井しか会う人いなかった」

「寂しかった。強烈だったよ。骨に染み入るような寂しさだった」

 

(以上抜粋)

帰る家庭を持たない40歳前後の女性ふたり

 

平井は、印刷会社で経理事務をしていて、ベテランとして頼られているが、

業務効率化やシステム化されてしまうと、自分の仕事が奪われそうで怖い。

その業務外注システム化をするためにやってきたのが菅沼だった。

 

菅沼は、3Dプリンターでフィギアを作る副業をしている

亡くなったペットの犬のフィギアは人気があるらしい

 

形だけ似たからっぽのフィギア

 

失敗作はお焚き上げを行う

 

(以下抜粋)

愛されて死んでいった犬たちとおなじところに行って、

魂の尻尾を振りながら暮らしてくれればいいと思った。

 

 

 

著者:大谷朝子 1990年生まれ

著書:「がらんどう」 (2022年初出「空洞を抱く」を改題)

発行:集英社 2023年発行

 

カバー作品:土屋仁応(彫刻・撮影)

「梟」「ステイホーム」2021年制作