だらだらと午後から始める散歩のあいだ、「おるもすと」を思う。

 

 

(以下抜粋)

ずっと、ひとりで暮らしてきた

僕の本当の名前を呼ぶ者はない

もうほとんど何もかも終えてしまったんじゃないかと思う

もうずいぶんといろいろな物や事を忘れてしまった

 

夕方の帰るときの並木道はとても長い

立ち止まることなく同じ速さで歩いた

立ち止まると

「歩いてゆく自分」の背中を

「立ち止まった自分」が見送っている

同じ歩幅で歩み去る自分の背中がしだいに小さくなってゆく

 

 

著書:「おるもすと」

著者:吉田篤弘

発行:講談社 2018年発行(2016年、世田谷文学館「記念企画」として限定刊行)