歌舞伎町でキャバ嬢をしているきれいな、鹿野ライ

歌舞伎町でナンバーワンホストの、アサヒ

新宿ゴールデン街で「寂寥」店主の、オシン

 

この男性3人と

アニメオタクで二次元の関係にしか興味のない銀行員の、三ツ橋由嘉理の出会い。

 

アサヒがゆかりんに「リハビリ」と言って手を繋ぐのが印象的で

恋愛感情ではなく何度も二人は手を繋いでいく。

 

(本文より抜粋)

新大阪駅のロッカーにバッグを詰めこみ

乗ったことのない電車に乗り込み座席に腰掛ける

 

あと何駅で乗り換えだろうと路線図に目を凝らしている私の

手をアサヒが突然掴み

何ですかと手を引きそうになった瞬間

薄い色の入ったサングラスの向こうに僅かに潤んだ目を見つけて黙り込む

 

悩みは複雑そうだなと呆れつつ

アサヒの手の中で

私はしんと手の力を抜きなされるがままになった

 

誰も俺一人に対して、自分一人で向き合ってくれない。

一人の独立した存在として俺と一対一で関わろうとする人なんていない。

だからいつも溺れそうで誰かに手を伸ばしてる

 

いつも誰かに手を伸ばしているから…

誰か一人だけに本気で手を伸ばしてみたら、その人は…

そうは言えなくて、私は握っていても冷たいままのアサヒの手を握り返す。

 

乗り換えですよと促すまで、

アサヒは黙ったまま私の手を離さなかった。

 

 

 

著書:「ミーツ・ザ・ワールド」

著者:金原ひとみ

発行:集英社 2022/1発行