谷崎潤一郎賞受賞作品

「コロナみたいな天下無双の人間になりたい」のキャッチが

読んだ後はせつない。

 

(抜粋):勢いよくガラス戸を開けると、ベンチに腰掛ける沙南の姿が目に入った。

「沙南」こっちを見上げる浴衣姿の沙南に見惚れながら、隣に腰掛ける。

 

この表題短篇のなかで一番好きな場面。

透明な水柱がすっと見えたような気持になる。

 

幼いころからキシネンリョがあってメンヘラの沙南と心中の旅に出たが、

温泉大浴場から帰ってこない沙南を心配で探しわまって

見つけた時の彼の気持ち。

 

たぶん容貌容姿もきれいな沙南が

こんな時でさえ、スタイルもポーズも様になっていて

 

安心したでもなく、心配したでもなく、攻めるでもなく、泣くでもなく、

「見惚れる」

 

沙南がほんとに好きなんだなと。

 

残された彼を思うと死ねなかった時の気持ちは、

「ソーシャルディスタンス」の場所にはない。