#平安文学の沼🫠続いてます
「大鏡」
武田友宏 編著
保坂弘司 訳
日記系を辿ってきたところで、歴史物語「大鏡」へ。
大鏡は、文徳天皇即位(850年)から後一条天皇の時代(1025年)にかけての14代、176年間について、皇家と藤原家の繁栄を語る対話形式の歴史物語です。作者は不詳、成立年も分かっていませんが、11世紀後半が有力視されているそうです。
二人の長寿の翁と若侍の対話によって話が進められ、藤原北家、特に藤原道長(966-1028)への賛美が物語の根幹を成しています。
※藤原北家は、藤原不比等の次男・房前を祖とする家系。
この本は読むのに時間がかかりました💦
なにしろ、皇家と藤原家の歴史を辿る本。知らない人が多い上に、出てくるのはほぼ藤原氏(源氏や紀氏、菅原氏なども少しだけ出てくる)で、一族皆めちゃくちゃ名前が似ている!!
系図を見ていて思ったのですが、平安時代の貴族階級の名前には、流行りとかルールはあったのでしょうか🤔
親子で名前の字を受け継がないパターン(藤原基経→忠平→師輔→兼家→道長など)が多い。一方で兄弟で名前が一字同じパターン(藤原道隆、道綱、道兼、道長など)が多いです。また、少し前の先祖や親戚の字を一字使ったのかな、というパターンもあって、読みながらアレ❓🙄この人前にも出てきたような。あ、違った、一字違い💦となること多数。
巻末の系図と、話ごとに書かれている丁寧な注釈の助けを借りて、なんとか読み切った感じでしたが、名前を眺めながらあれこれ考えるのが意外に楽しかったです。
厳密な時系列ではなく、皇家・藤原家それぞれ人ごとに話がまとめられていて、人物紹介のエピソードが具体的で面白いです。
筆者は道長贔屓なので、道長関連のエピソードが豊富。若い頃から大胆不敵、政治家として手腕を振るうようになってからは政敵を着実に排除する冷淡さを持ちつつも、政敵・伊周を気遣うなど懐が深いとべた褒め。一方、道長の父の兼家に対しては、兄・兼通に冷遇され気の毒だったとしながらも傲慢さを指摘し辛口。道長の兄・道隆は大酒飲み&美男がポイントが高かったのか採点は甘め、もう一人の兄・道兼は花山天皇退位事件、父・兼家の喪に服さなかったなど諸々あり、けちょんけちょんに貶されています😅
同じ人物について視点を変えながら何度も語られることもあり、逆にさらっと流されている人もいます。善政を敷いたかどうかではなく、藤原家に関わる出来事がどれだけあったかということを主眼に書かれているようで、ゴシップ的な面白さもありました。
また、平安時代では「血筋は何よりも貴い」が絶対であることを改めて感じました。そのため、母が誰であるかが非常に重要。本書では、天皇・大臣達について、母が誰か細かに記述されています。藤原家ゆかりの女性たち(女御、中宮、皇后になった人のなんと多いことか😳)のエピソードも豊富。政治を動かしたのは男性ですが、男性が権力を手に入れるためには女性の存在が何より大事だったわけで、どちらかが一方的に強いという関係でもないのだなぁと思いました。
また、人柄や才能が当たり前のように血筋と結びつけられています。では、血筋が貴いが、素行に問題のある貴人(冷泉天皇や花山天皇など)はどう扱うのか。ここで怨霊の出番。先祖の誰それが恨みを買い、子孫である誰それが祟られたので、あの素行の悪さだった、というような感じ。
意外だったのは、藤原時平が陥れて太宰府に追いやった菅原道真についてのエピソードが豊富であったこと。道真の悲哀に寄り添う内容で同情的です。全ての藤原氏を手放しで賛美しているわけではなく、時たま覗かせる批判精神が興味深いです。
などなど、興味を引かれるエピソードが多く、面白かったです。全然まとまらない感想ですが、何日寝かせても全くまとまる気がしないので諦めて投稿します😅