#平安文学の沼🫠
「更級日記」 菅原孝標女 作
川村裕子 編著
原岡文子 訳注
どれだけ続くねん、とツッコミを受けそうですが、まだまだあります、平安日記文学シリーズ。この時代の日記はテーマがはっきりしていて面白いんです😊
和泉式部日記の次は更級日記。
名前は聞いたことがあるな、ぐらいだったのですが、今までで一番共感できる日記でした📚
更級日記が成立したのは1060年以後だそうです。作者は菅原孝標の娘で、菅原孝標は菅原道真の5代目で国司を務める家でした。そして、母親の年の離れた異母姉が藤原道綱母。
#時の権力者は、藤原頼通(道長の長男)
菅原孝標の娘が13歳で父の任地・上総(千葉)から上京してから夫の死後1年までの約40年に及ぶ回想録。テーマは「物語に憧れ続けた少女のままならぬ人生」。
始まりからしてユニークです。
筆者は継母や姉から聞く「物語」というものを読みたくて読みたくて仕方がありません。仏様に一心にお願いします。「都に早く私を行かせて、たくさんあるという物語をあるだけ全部お見せくださいませ」
他の日記文学と同じく夢の話も出てきます。
当時、夢は現実になるとされて重要な意味を持ちましたが、そのありがたいお告げを筆者は人にも告げず、行動を起こすこともなく、面倒くさいわ、とばかりに全て無視。
#この、ものぐさな気質にすごく共感😆
それよりも物語を読みたい!物語のような素敵な出会いはないかしら?と夢想します。
彼女の憧れの女性は源氏物語の夕顔や浮舟。二人とも儚い系です。
#こういう女性に憧れる時期、少女あるあるですよね🤭
ですが、更級日記を読んでいると、「いや、そういうタイプじゃないよね⁉️」と思えるのが、可笑しい。筆者も分かって書いているようなところがあり、文章に鬱々とした感じがないのです。
祐子内親王に出仕する機会を得ますが、女性は家にいるべき!という古風なタイプの親だったらしく、すぐに結婚して家庭へ。
出産後、再び出仕のチャンスが。次こそは、物語のような恋が?と期待しますが、素敵な男性に出会うものの、結局何も起こらない。現実は物語のようにドラマチックには動かないのです。
それでも、結婚相手は優しい人で幸せな結婚生活であったようです。後半、家庭に入り、これまでの夢見がちな態度を改めて信心深く過ごす様子が描かれています。
物語への憧れのエピソードに埋もれがちだけど、継母や乳母、姉、母親、父親との温かな家族愛や、冒頭の東国からの帰京やお寺詣でに行った時の自然描写の美しさが印象に残りました。
これといって大きな出来事があるわけではないのだけれど、読んでいて共感できるところが多いお気に入りの作品となりました。
📝菅原孝標女が仕えた祐子内親王
父は一条天皇と彰子の子の後朱雀天皇、母は藤原頼通の養女・藤原嫄子の皇女。
藤原嫄子の父は、敦康親王(一条天皇と定子の皇子)。