Story Teller 朗読・吸血鬼sable -慟哭のサン・エトラス篇- | ゆるりとしましょ

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日々のこと、遊びのこと、なんかいろいろ。
気を張らずにいきましょ。それがイチバン♪

出演:エリアス/佐藤拓也 ユーリエ/長沢美樹 アルジェント/速水奨
    ロベール/置鮎龍太郎 ルイス梅田修一朗 サラ/宮古風佳 
トマス・他/橘潤二  フォーリー・他/河田吉正

会場:全電通労働会館

 

佐藤記念日はステトラ公演になりました。演目は昨年のフライセル篇(その1その2)から

時間が少し経過したサン・エトラス篇。

昼夜両部公演ともなんとか観劇できました。

 

バラの花と蔦を纏ったマイクスタンドが8本。両側一本ずつが白ばらで残り6本が赤いバラ。
シンプルなステージ作りです。
その分、音楽や衣装にも力が入ってて、ステトラシリーズは出演者の姿も豪華なのです。
 

ステージに現れてライトが当たった拓ちゃんは黒髪!
Xのパンフの撮影チラ見せでみてはいたけど、本当にキレイに黒髪になってる。
黒のファー付きマントに紺と金の模様の入ったベストに黒のパンツ。
前作で白い衣装だったのが、今回は黒い衣装でキャラクターの位置変化を見た感じ。

隣に並ぶ美樹ちゃんは深紅のドレス姿。麗しくよくお似合いです。

物語は人ではなくなったエリアスがユーリエと共に故郷を離れて身を潜めてさ迷うような
生活をしているところから。

冒頭、売春婦を脅していた男を止めに入り、彼の血を吸うエリアス。ヴァンパイヤの衝動を
ユーリエに気づかれずに隠れて発散してた模様。
この時の拓ちゃんの低く抑えた感じで話す声音が、前作ではなかった彼の陰の部分を思わせる。
そして自分の今の状況を彼女には話してなかったのが、ここでなんとなく知らされるのです。

日中、特に体調の悪そうなエリアスを献身的に支えようとするユーリエがまたいじらしくて・・・。
旅の資金が尽きることを気にして自分の宝石を彼に黙って換金してもらったり、食欲がないと
言う彼に食事をすすめたり、それはもう、いじらしくて。
結局、すぐに彼の状態を知ることになり、自らの血を迷いなく差し出すユーリエ。

今作で、二人の間に血のつながらない、でも、大切な娘が出来たんだけど、

これの前段階での二人のやり取りが切なくて。

ヴァンパイアとの間には子が出来ないと知ったエリアス。だけど、それをユーリエに

言えずにいたのです。そうとは知らず、自然と自分達の間に生まれるであろう子の話を
するユーリエがそこにいて、彼は優しく微笑んで聞くことしかできないという、なんとも切ない
シーン。

拓ちゃんの微笑みが、眼差しが言い様もない色をはらんでいたのを覚えてます。


哀しい事件の末に実の父親を奪われた赤ん坊のサラを自分達の子として育てようと
決めたエリアスとユーリエ。
成長したサラ役の古宮ちゃんがまた可愛らしくて、これはエリアス、親ばかになってしまうだろうなぁ
思いながら聴いてました。
そして、その心配はある意味では、的中してしまうんですけどね。
なにせ、彼女はラストで話の流れでルイスと、一緒にいくことになってたし。

物語のメインが切なくて重い感じなので、サラと吟遊詩人のロベールのおっきーとのやり取りは
ある意味、唯一の癒しの時間でありました。
軽妙な口調のおっきーのロベール。それでいて、秘密有りげな雰囲気もちゃんとあるという
絶妙な感じで大好きなキャラの一人。
前作で、親友マルクスと呑んでた酒場に、確か吟遊詩人がいたって描写があったはず。
ロベールはその時の吟遊詩人だろうな。
エリアスが「どこかでお会いしませんでしたか?」って聞いてたし。


こういうちょっとした伏線みたいな仕掛けがあるの、ワクワクする質なのです。

今回でルイスも元は人間だったことが判明。彼をヴァンパイアにしたのは速水さん演じる
アルジェント。
速水さんのラスボス感よ。一言話せば、高貴で圧倒的な強者って感じのさすがの貫禄でした。
生粋の血族が絶対という考えのもと、エリアスの存在を亡き者にしようとするんだけど、
元はといえば、ルイスのせいなんだよねぇ。それを思うと、エリアスが本当に気の毒で。
なりたくてなったわけじゃなくて、諸悪の根源のさらに上司から命狙われるなんて理不尽な話で。


そんなエリアスを自分と同じ世界に引きづり込んだ、ルイス。彼のエリアスの執着の理由も
ちょっと解明。
まだ人間だったころに、兄がいてその兄ジャックにエリアスが似ていたからだとか。
金髪の青年で清廉潔白な青年だったエリアスに兄を重ねて見たのかも。まぁ、見た目とかは

切っ掛けに過ぎなくて、まだなんかありそうではあるから、それは今後明かされるといいなぁ
と秘かに思っていたり。
何気に、兄への思いの深さ故なのか、サラには「ジャック」って名乗ってるんだよねぇ。
 

その生きていた時のジャックも拓ちゃんが担当。
年若く物腰穏やかな口調の青年で、穢れなき15歳の少年な拓ちゃんは本当に貴重です。
エリアスも白系のキャラではあるけど、その上に「若い少年」というファクターが付くのです。
そりゃもう、内心わっほいですよ。普段、あんまり聞かないポジションですもの。


ラストは愛する人を失ったエリアス。サブタイトルの「慟哭」の理由をここで思い知ることに。

ユーリエを失い、愛娘サラを探すことを決意した彼の瞳は若干闇モードでした。


作中、ずっと「私」と言っていたエリアスが「俺」と口にしたのはラストだけ。
エリアスから「セーブル公」になった瞬間だったなぁと思ったり。

 

夜の部では、昼の部とは違うアプローチをしていたところも多々あったキャスト陣。
拓ちゃんも大きなキャラの解釈は変わらないけど、ユーリエを失った直後のシーンはより
鬼気迫る感じになっていたし、目が潤んだ状態で「セーブル」と名乗った彼は、昼の部より

闇堕ちからもう一歩先に行った感じに聞こえたです。堕ちた先は深淵だった、くらいの。


シリアス路線のお話なので、遊べるアドリブが入れられるシーンは限られてて、夜の部では
アドリブもそこそこあった模様。
ロベールがサラに足を踏まれたって発言してたり、娘の将来の結婚を嫌がる
エリアスの子煩悩ぶりに拍車が掛かってたり。

「あなたは、サラには甘いのだから」って言ったユーリエを前に「それは違う、甘いのはユーリエと

サラにだけだ」って言うシーン、甘さが増してて尊いものを拝ませてもらった心持ちでありました。

大ボリュームで90分しっかりしたストーリー。
きっと次もあるはず、って思わせてくれる丁寧な物語を堪能できました。