譲渡命令・売却命令・管理命令…LPシリーズ民事執行より抜粋 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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1)総説…非上場株式を差し押さえて回収手段に利用する際に使います

 差押債権が、条件付もしくは期限付であるとき、又は反対給付に係ることその他の事由によりその取立てが困難なときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、特別の換価方法として、譲渡命令・売却命令・管理命令その他相当な方法による換価を命ずることができる(民執1611項)。

 執行裁判所が、これらの換価方法を命ずる場合には、その決定前に債務者を審尋しなければならず(民執1612項)、また、必要があれば、評価人を選任して差押債権の評価を命ずることができる(民執規1391項)。
 譲渡命令を命ずる決定に対しては執行抗告をすることができ(民執
1613項)、その決定は確定しなければ効力を生じない(民執161条4項)。
 
これらの特別換価方法は、主にその他の財産権に対する執行における換価手続として用いられる。また、実務上は、主に譲渡命令及び売却命令が用いられ、管理命令その他の換価方法が用いられることはほとんどない。

 

2)譲渡命令

 譲渡命令とは、差押債権を執行裁判所が定めた価額で支払いに代えて差押債権者に譲渡する命令である(民執1611項)。

 差押命令及び譲渡命令が確定すると、差押債権者の債権及び執行費用は、執行裁判所の定めた価額で、譲渡命令が第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなされる(民執1616項・民執160条)。
 代物弁済と同様の効果がある点で転付命令と類似するが、同様の効果があるのが券面額ではなく執行裁判所で定めた価額である点で異なる。
 なお、
価額を0円とする譲渡命令は、差押債権者の債権等を消滅させる効果を生じさせないので、このような譲渡命令を発令することはできないとされている(最決2001/2/23判時177474項)。】

 執行裁判所の定める価額が差押債権者の債権及び執行費用の額を超えるときは、執行裁判所は、譲渡命令を発令する前に、差押債権者にその超える額に相当する金銭を納付させなければならない(民執規1401項)。譲渡命令が効力を生じたときは、執行裁判所は差押債権者により納付された金銭を債務者に交付する(民執規140条2項)。

 譲渡命令が確定したときは、裁判所書記官は、申立てにより、差押債権に付されている担保権の移転の登記等を嘱託し、及び差押登記等の抹消を嘱託する(民執1641項)。

 

3)売却命令

 売却命令とは差押債権の取立てに代えて、執行裁判所の定める方法によりその債権の売却を執行官に命ずる命令である(民執1611項)。

 執行官による売却は、執行裁判所の定める方法によって実施されるが、その手続には競売不動産の売却手続に関する規定が準用される(民執1616項・民執65条・民執68条)。

 執行官は、差押債権の売却代金の支払いを受けたときは、債務者に代わって、第三債務者に対して確定日付のある証書によって譲渡の通知をし(民執1615項)、買受人に対して債権証書を引き渡す(民執規1413項)。

 また、売却の手続が終了したときは、執行官が売得金及び売却に係る調書を執行裁判所に提出し(民執規1414項)、執行裁判所によって配当等が実施される(民執16612号)。
 また、転付命令や譲渡命令と同様、申立てにより、裁判所書記官が差押債権に付されている担保権の移転の登記等を嘱託し、及び差押登記等の抹消を嘱託する(民執
1641項)。

 なお、差押債権を売却しても無剰余となる場合には、執行裁判所は売却命令を発令してはならず、執行官は売却をしてはならない(民執規1411項・2項)。

 

4)管理命令その他

 管理命令とは、執行裁判所が管理人を選任して差押債権の管理を命ずる命令である(民執1611項)。管理命令には、不動産の強制管理の規定が広く準用される(同条6項、民執規145条)。
  
 

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