弁護士会研修で若手弁護士に伝えられたノウハウ(伝聞です、転載了承済み) | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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福岡若手弁護士のブログ「ろぼっと軽ジK」は私です。交通事故・企業法務・借金問題などに取り組んでいます。実名のフェイスブックもあるのでコメントはそちらにお寄せ下さい。

【総論】

● 不利な事情については,依頼者はなかなか言いたがらない。信頼関係の構築が重要。

● 客観証拠の収集においては,有利なものだけでなく,不利なものに目を配る。確認する。

● ストーリーに不整合な事実や証拠がある場合は,無視してはならない。その詳細や背景事情を調査する。

● 時系列表は非常に重要。

● 手持ちの証拠の証明力を正確に認識することは重要。

【書面について】

● 主要事実と重要な間接事実に対する認否ははっきりして欲しい。

● 認否における否認理由は簡潔に書く。
  否認理由が長くなる場合は,被告の主張などの部分で,まとめて主張した方が裁判所は分かりやすい。

● 背景事情等については,細かく認否しなくても良い。
  但し,何も対応しないと自白したとみなされる余地もあるので,「背景事情なので認否しない」などの一言があるとベター。

● 裁判所は,当事者双方がどのようなストーリーを主張しているのか,という点に着目している。
  そのため,認否の後に,認否記載事項と多少重複しても良いので,自らのストーリーを改めて主張して欲しい。

● 主張と証拠との対応は明確にしてほしい。

● 書証番号だけでは,どこが証拠となるのか分かりにくい場合は,当該書証の具体的な箇所まで指摘して欲しい。

● やめて欲しいのは,主要事実を記載する代わりに,「甲n号証の契約を締結した」,「甲n号証の損害が発生した」という書き方。
  主要事実については,必ず具体的に主張して欲しい。

● ノン・コミットメントルール違反の書面が出た場合は,その部分を削除した書面を出させる,その部分を陳述させないなどの方法がある。
 ただ,この部分について,当事者から異議が出ないと裁判所がスルーしてしまうことがある。そのため,当事者は,異議を出すべき。

☆彡ノンコミットメントルールとは?
  口頭の議論を活発にするべく、例えば非公開の準備手続で実質争点についてディスカッションを行う場合は、その発言は訴訟手続では後日、有利にも不利にも斟酌しないことを当事者双方に約束させて、自由な発言の不利益を最初から除く。

【証拠について】

● 当事者間で大量のメールが遣り取りされていたような場合は,枝番号を付して整理して欲しい。
 大量のメールを一つの書証として出して,しかも,「当事者間で遣り取りされたメール」のような立証趣旨だと立証効果が乏しい。

● 録音証拠について,裁判官は一般に証明力を高く評価しない。
  なぜならば,録音が為されている場面では,誘導的な質問が為されるから。

● 重要な書証が後出しされると,証明力に争いが生じることがある。

● 録音や録画が長時間に及ぶ場合は,立証に関わる箇所を証拠説明書に記載し,反訳にはマーカーを塗る。

● 大部の書証には目次をつける。

● メールやLINEは時系列に並べて提出する。

● 証拠説明書の「立証趣旨」では,①当該書証から判明する事実と,②その判明した事実が要件事実(あるいは重要な間接事実)とどのように関連するかを具体的に記載するのが原則。  但し,一見して明らかな場合は簡潔なもので良い。

● 証拠説明書は非常に重要。裁判所は尋問や判決作成に臨む際に用いる。

【訴訟手続】

● 文書提出命令が採用されないというときは,裁判所がその文書について重要性を認めていないということ。
 当事者として命令をもらう必要があるならば,裁判所を重ねて説得しなければならない

● 訴訟の序盤では,情報も証拠も当事者に偏在している。
  そのため,これらの情報を裁判所に提示しなければ,裁判所も釈明権を行使できない。

● 裁判所が何を考えているか不明な場合は,「裁判所はこの部分をどういう風に捉えているか」という質問をすれば良い。

● 和解を考えている場合は書記官経由でも良いので,その意向を裁判所に伝えて欲しい。
  和解希望を申し入れたからと言って,裁判所の心証に影響を与えることはない。


  岡口基一裁判官とまこつ弁護士の対談書と重なる部分もわりとあり、あの対談書がいかに裁判実務法曹にとって有用なものであったかが改めて分かります。離婚事件でありそうな主張立証活動を意識した研修っぽい印象です
 
 

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