保釈の際に再犯禁止の条件を付することは現行刑訴法では認められていない | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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http://www.yomiuri.co.jp/osaka/news/20160612-OYO1T50007.html
 この被告人が保釈後に逮捕容疑となった再犯の性犯罪に実際に手を染めたと仮定して話を進めます、無罪推定法理が働くので。

 保釈後の再犯の性犯罪の被害者にいわせれば、「なんで世間の女性にとって存在するだけで危険を放つ、いかにも危ない男性を刑務所送りにする前に保釈したのだ!」と保釈を許可した裁判官に対して怒り心頭でしょうし、その怒りに共感する人が多いと思います。

 しかし、現行刑訴法は「保釈期間中にほかの罪を犯してはならない」などと保釈の際に再犯禁止の条件を付したり、そもそも保釈するか否かを決定する際に、その被告人が保釈期間中に犯罪を犯す可能性があるか否かを判断材料に入れることを認めていません。

 常習犯などを犯罪予備軍扱いして、治安維持のために身柄を拘束して、犯罪を犯せないようにする保安処分を予防拘禁と呼びます。
 日本では戦前に治安維持法で採用されていましたし、現在も精神保健福祉法 には、精神障害のために他人に害を及ぼすおそれのある者を措置入院できるという制度があります。

 しかし、刑事司法一般では、刑確定前の身柄拘束の目的は専ら逃亡防止と証拠隠滅防止(+被害者へのお礼参り防止)に限定されており、社会一般の治安維持は身柄拘束の目的に含められていないので、たとえ性犯罪者による再犯の危険が類型的に高い場合であっても、それを理由に保釈を許可しないわけにはいかないのです。

 ただし、現行刑訴法は、例外的に、89条3号で「常習として長期3年以上の懲役あるいは禁固にあたる罪を犯したものであるとき」は、保釈不許可としてもよいと定めています。常習性の立証は検察官側にあるので、同種前科や複数余罪が確認できるときは、過去のその事実をもって限定的に予防拘禁を許容したといえます。

 個人的には、立法事実が存在するのなら、法創設による予防拘禁もなくはないとも思いつつ、拘禁実行にあたっては予算も必要ですし、そもそも再犯の危険の高低を犯罪類型だけで画一的に決めることも人権との兼ね合いでものさし設定が難しいこともわかります。
 
 月並みですが、予防拘禁はたやすく導入されないだろうから、自分の身は自分で守るしかないことを知っておくべきということになりますね。
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