女性のみ再婚禁止期間を定めた民法733条1項は100日超の部分が憲法14条1項に違反する | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151216/k10010343131000.html
 この最高裁2015/12/16 もまた予想外に長く、いま私が解説できるのは多数意見に限定されます。反対意見・8名の補足意見・2名の意見は新聞記事などでご確認下さい。
 当事者代理人となったのは、公立福岡女子大が男性からの願書を受理しなかったのは性差別であると提訴したものの取り下げたことのある、岡山の作花知志 弁護士です。
 
  まず民法733条1項と民法772条を廻る利害状況が図示 されていました。これを見ると、最高裁がなぜ100日超の部分が違憲と判断したのか、分かりやすいと思います。
 ☆下の図はクリックすると綺麗に見えるようです
  



第1、民法772条があるため、女性が前婚の解消から間もなく再婚し子を出産した場合、その子の父が前夫であるか後夫であるか直ちに定まらない事態が生じうる。
 そのために父子関係をめぐる紛争が生じるとすれば、そのことは子の利益に反する。
 他の嫡出親子関係に関する規定における位置づけからすると、民法733条1項の立法目的は、女性の再婚後に生まれた子につき父性の推定の重複を回避し、もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにある(最高裁1995/12/5 判タ906号180頁)。
 父子関係が早期に明確となることの重要性に鑑みると、この立法目的には合理性が認められる

第2、これに対し、仮に民法772条により父の推定が重複しても、父を定めることを目的とする訴えの適用対象を現在の民法773条から広げることにより、子の父を確定することは容易であるから、必ずしも女性のみ再婚禁止規定を設けるという方法で、父性の推定の重複を回避しなくてもよいではないかという指摘がある。
 確かに、DNA検査技術が進歩し、安価に身体に対する侵襲を伴うことなく、極めて高い確率で生物学上の親子関係を確認することができるようになった。
 しかし、父子関係の確定を再婚禁止規定を設けず科学的な判定に委ねる方法を選択するならば、父性の推定が重複する場合は、一定の裁判手続などを経るまで法律上の父が確定できない状況に置かれる。
 子の利益の観点からは、そういう裁判手続などを経るまでもなく、父性の推定が重複することを予め回避するための法規定を維持することにはなお合理性が認められる。

第3、ただし、現行の民法772条を前提とするならば、女性の再婚後に子供が生まれる場合であっても、計算上100日間の再婚禁止規定さえ女性に設ければ、父性の推定の重複は回避できることになる。
 従って、民法733条1項のうち、100日間の再婚禁止期間を設ける部分は、憲法14条1項にも憲法24条2項にも違反しない。

第4、しかし、再婚禁止期間を100日間を超えて6か月間とすることについては、専門家でも懐胎後6カ月程度経たないと懐胎の有無を確定することが困難であり、父子関係を確定するための医療や科学技術も未発達だった立法当時の状況ならまだしも、今日においては正当化できない。
 加えて、ドイツフランスといった諸外国でも再婚禁止期間の制度自体を廃止するなど、世界的には再婚禁止期間を設けない国が多くなっていることも公知の事実である。
 従って、民法773条1項のうち、100日間を超える再婚禁止期間は、合理性を欠いた過剰な制約であり、憲法24条2項で国会に付与されている立法裁量の限度を超えるものとして、違憲となる。
 しかし、法改正しなかったという立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。
 
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