東日本大震災が起きた2011年秋に起きた大津市中2いじめ自殺事件は、教育委員会の初期対応の拙さや、市長の謝罪会見もあいまって、社会の耳目を集めていました。
このたび、裁判所からの和解勧試案も金額含めてこのように新聞紙上に発表されてしまいます。結果、和解を拒否しても承諾しても、少年の遺族に幾ら支払われたのかは、皆に筒抜けの状態になってしまうのです(このブログ文面で和解勧試案や既払い額の明記は辞めます)
一見、こんなセンシティブな情報をおおっぴらに報道するメディアは鬼かと思えます。幾ら遺族が受け取ったかは、収入よりもっともっと他人に知られたくない情報だからです。現に裁判所の和解自体は、通常の民事裁判と異なり、非公開手続で進んでいます(民訴規32条2項)。
しかし、県や市といった地方公共団体は、損害賠償金を支払うにあたっては公開の地方議会で議決しなければなりません(地方自治法96条1項13号)。非公開の役所の中だけで秘密裏に損害賠償を巡る和解でいくら払うかのかを決めることはできないのです。
賠償金原資は税金で賄われるものだから、果たしてそのシチュエーションで税金を使って被害者にその額を補填する判断が正当化されるかを、住民の代表(議員)で構成されていない密室で決めることはプロセスとして妥当ではないという立法趣旨なので、地方議会で公開して審議されるという限度で遺族のプライバシーが犠牲になることもやむを得ないという状況も、必ずしも不合理とまではいえないでしょう。
ただ、地方議会で公開されるからといって、金額含めて報道で全国ネットで公開するべきかどうかは全く別の次元と思います。いったん全国ネットで公開されてしまうと、その1日にとどまらず、後日、ネット検索などで情報がいつまでも残るからです。今後、マスメディアはそこまで慎重に考えて報道していくべきではないでしょうか。
なお、少年の遺族の弁護団を務める吉原稔LOは積極的に情報発信しています。http://www.yoshihara-lo.jp/otsu-ijime/
本日現在までに1000万円を軽く超えるカンパが全国から寄せられていることも隠さずに公開しています。
ただ、世の中にはいろんな考えの人がいますので、性善説に立脚してお金のこと全ての情報を公開することのリスクをおもんばかるべき場面もあります。カンパが余った分の使途だって勘繰られるでしょう。
今後、地方公共団体を相手とする損害賠償請求を行うとき、ネット情報が容易に拡散する現代で、どのようなスタンスで被害者弁護士は臨むべきかを考える、1つの素材になるのではないでしょうか。
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