判決批評を匿名(編集部名義)で掲載させると弁護士倫理の上でマズイ | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

福岡若手弁護士のブログ「ろぼっと軽ジK」は私です。交通事故・企業法務・借金問題などに取り組んでいます。実名のフェイスブックもあるのでコメントはそちらにお寄せ下さい。

 自由と正義2015年1月号に、一弁が出した懲戒しない決議をくつがえして、複数の弁護士に戒告処分を下す日弁連決定が出ていました。

 その懲戒された弁護士の1人が、五大法律事務所(ビジネス系を指します。●ディー●などニューウェーブ系は普通指しません)に所属し、ビジネス弁護士として、弁護士間だけでなく大企業の法務部の人にはかなり名の通っている著名な弁護士だったので、眼を引きました。
 ちなみに、その著名な弁護士の先祖はその弁護士よりももっともっと有名で、社会の教科書には必ず名前が載ってるくらいです。

 問題は懲戒事由で、五大法律事務所ならではというか、福岡の個人事務所を経営する私には不能犯なんですよ。複数の雑誌の編集部に働きかけるなんて。

【被懲戒弁護士Aたちが訴訟代理人として関与したある事件の一審判決がでた。どうやら、その一審判決はAたちの依頼者に不利な判断を含むものであった。
 そこでAたちは、複数の法律雑誌に、Aたち自身が作成した一審判決を批判する論評を、匿名もしくは編集部名義で掲載できるように、やり取りした。果たして、匿名もしくは編集部名義での一審判決を批判する論評はまんまと複数の法律雑誌に掲載された。
 その後、Aたちは、控訴状の中で、当該論評を引用して、<既に公刊物においても指摘されているが、一審判決はさまざまな矛盾点疑問点を内包している>と、自己の依頼者に有利な判断に控訴審は変更されるべきと論旨を展開した】

 日弁連は【】の行動に対し、①及び②の理由により品位を失う非行に該当すると判断した(ちなみに、2名は懲戒しない決定を維持すべきと反対意見を出している)。

①Aたちの記事が複数の法律雑誌に匿名又は編集部名義で掲載されると、控訴審を有利に導く可能性は否定できない。
 行為の組織性計画性も否定できず、訴訟の一方当事者の関係者が第三者や編集部を装い、一審判決の批評記事を掲載することは読者の信頼を裏切るものである。

②控訴状は控訴審裁判所に提出する重要書面である。この引用は、控訴審裁判官に参照を求めるために行ったもので、自ら執筆した記事を第三者による一審判決批評であるかのように引用する行動は、控訴審裁判官を誤解させる行為で、直ちに控訴審判決に影響する可能性は少ないにしても、フェアー精神を期待される弁護士にあるまじき。

 不思議な謎は、A弁護士たちはなぜこんなリスクゼロではない、やばめの手法をわざわざとったのかということ。
 一審判決批評するだけならば、五大法律事務所のよくやる、大学教授の意見書を書いてもらいそれを提出するというノーマルなやり方で、十分第三者の意見にはなるだろうに。金に糸目はつけないでしょ。
 特に悲しいことに、A弁護士と一緒に懲戒くらったのは、元裁判官で私と同期のB弁護士なんだよなあ。裁判官辞めて何年も経つと、そういうリスクのアンテナが鈍くなるのかなあー
 天網恢恢疎にして漏らさず、壁に耳あり障子に目あり

 情報補充しますと、この事件、法律雑誌業界ではNBL問題 と呼ばれた事件です。<理系弁護士の何でもノート 2010/4/7 >に詳しく書かれてます。クボリンが委員長になった第三者委員会による調査報告書はコレ
 ランキング参加中、更新の励みになります、応援クリックを↓
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村    http://jiko110.jp/