日弁連委員会ニュース2014年9月号に載っていた項目の要約。
1、暴対法施行から20年、2012年時点での暴力団構成員は減少傾向にあるが、いまなお6万人近くの暴力団構成員が存在している。
日本には暴力団の存在自体を規制する法律はない(連結させるべきかどうかは二の次に、宗教団体には宗教法人法がある)。暴対法はあくまで暴力的要求行為を規制するものである。
2、弁護士会では《暴力団が一定の要件を充足する場合、その暴力団に公安委員会が解散命令を出せる》制度を法的に設けることができないかを検討してきた。
しかし、暴力団にもさまざまな形状があるし、憲法上の結社の自由との兼ね合いなどもあって(憲法と暴対法の関係を検討した裁判例として福岡地裁1995/3/28判タ894号92頁)、クリアすべきハードルも決して低くない。
例えば、上部団体Aを解散しても、下部団体BやCに吸収されれば、解散命令は換骨奪胎。であれば、Aを解散するときはBやCも同時に解散できればよいのだが、いかなる要件を充足すれば一定の要件を満たす団体がAしかないときに、BやCにも同時に効果を及ぼせるのか、その枠づけが非常に難しい。
3、2012年に、住民に代わり適格団体が暴力団事務所の利用差止を求める暴追団体訴訟制度が創設された。
http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_soc_police20130302j-02-w330
弁護士会は、さらに、暴力団による不法収益を得にくくするための、民暴課徴金制度の創設もうたっている。
その内容は、公安委員会が1次団体の組長に被害額の例えば3倍の課徴金納付を命じ、その中から被害弁償などを工面することで、被害回復を容易にする制度である。
なお、課徴金制度は既に独禁法で導入されているが、民暴について被害回復と連結させると、単なるペナルティにとどまる独禁法よりも存在意義が強調できるのではないか。
http://www.jftc.go.jp/dk/seido/katyokin.html
4、暴力団の撲滅を着実に進めるためには、離脱者支援を欠かすことはできない。暴力団に加入するより離脱する方にメリットというかリスク軽減があれば、暴力団は離脱者を防ぎきれなくなり、最終的には組織を維持できなくなるから。
しかし、暴力団離脱者に対する社会復帰支援についての相談件数自体がまだまだ少なく、全国的にも就労支援体制の足並みがそろっていない(大阪の例↓)
http://www.boutsui-osaka.or.jp/05center/center11.html
5、最後に、暴力団勢力に関する情報提供について、暴力団員であることを隠してゴルフ場でプレーすることが詐欺罪に該当するか否かについて、有罪と無罪が真っ向割れた2つの最高裁判決2014/3/28が現れた。
http://www.sankei.com/west/news/140417/wst1404170001-n1.html
この判決以降、企業にとって暴力団排除の規約整備とともに、それを実効あらしめるための情報入手ルートの確立も必要になってきた。http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/sotai/haijo_q_a.htm
東京都は↑問合せ先を明記しているが、各県警でこのような情報提供は徹底していないのではないだろうか。
参考までに、東京都条例に即した格好になっているが業種別対応も列挙した概説書が販売されている↓
これも参考にしてほしい。http://www.seirin.co.jp/book/01616.html
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