裁判員を務めてストレス障害になったとき国は補償してくれるのか | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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http://mainichi.jp/select/news/20140930k0000e040187000c.html

 どうも原告は【証拠の遺体写真を見せられたり、被害者が通報中にうめき声をあげる録音テープを聞いたという、裁判官や検察官の具体的な行為の当否については過失と主張していず、争点を専ら裁判員制度は違憲だからその裁判員に選任されて務めさせられたこと自体が違法な国家の行為であり、その結果ASDに罹患したのだから国家賠償という論点に絞った】ため、原告の請求を斥ける福島地裁2014/9/30が出たそうだ。

 

 裁判員の職務は憲法18条後段が禁ずる苦役に該当しないという最高裁解釈は、とっくに2011/11/16 判タ136262頁で明言されている。


《裁判員の職務は、司法権の行使に対する国民の参加という点で、参政権と同様の権限を国民に付与するものであり、これを苦役ということは必ずしも適切ではない》

《国民の負担を過重にしないという観点から、辞退に関し柔軟な制度を設けている(裁判員を辞退できる者を類型的に規定している、個々人の事情を踏まえて身体上精神上経済上の重大な不利益が生じると認めるに足りる相当な理由がある場合には辞退を認めている、出頭した裁判員候補者に旅費日当を支給し負担を軽減している)ことを考慮すれば、憲法が禁じる苦役にあたらない。》

 

織田信夫弁護士は「参政権は参加義務じゃないでしょ、投票放棄もできるでしょ。司法参加と選挙権行使とは負担のレベルが全然違うでしょ。この最高裁判例の考えはおかしい」と、この最高裁に風穴を空けたかったのだろうし、原告本人もそれに同意したからこの戦術を選択したのだろう。

 

ただ、制度そのものの違憲合憲とは切り離して、一民間人である裁判員に向けて、上記の所為をした結果ASDに罹患させたのだからそれが憲法に適合する行為であっても職務執行にあたり過失があったと評価して、具体的な被害を呈した原告に対する国家賠償を求めるという戦術の方がスタンダードだと思うんだがなあ。
 とりあえず、裁判員を務めてストレス障害になったとき国は補償をしないとまでは言い切れない(上記の戦術選択はそういう一般論までは導いていないから)と、ここではコメントしておく。

  ⇒国家公務員災害補償法による補償があるらしい。私の調査不足を恥じる



 さて、施行5年を過ぎた裁判員制度の課題として①出席率低下②精神的負担があがっている。
 http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/188311.html

 

 裁判員制度のメリットに、日数短縮のほか、裁判への親近感や世論の反映があげられているけれども、よくよく考えるとこれらは個々の裁判員に動員される人にとっては、必ずしも体感できるメリットじゃない。
 私は弁護士なのでそもそも裁判員になることがないが、私が弁護士以外の仕事だったとして仕事を空けて出席しようとか、自発的になろうと全く思わない。国が裁判に親近感を持たせたいなら
アメリカみたいにTV中継がよほど早い

 http://www.saibanin-seido.net/merit/

 

 大体、選挙権が辞退(棄権)も行使するかも自由なのに比べ、辞退するためにいちいち重大な不利益が生じるおそれを疎明しなければならないとは、なんちゅー高飛車な制度だ。
 こんな義務感満載じゃ出席率が低下するのもあたり前の話だ。
 [裁判員には日当のほかに漏れなくご当地グルメ(期間に応じて1万円・3万円・5万円・10万円相当分…と分ける)を自宅に送ります]とか特典がついていたら、家計に優しいので出席率も少しはUPするかもしれんが、そこまでしてこの制度を続ける必要があんのか?制度の弊害ばかりが今や眼について、制度維持が自己目的化してるようにしか見えんぞ

 

 最後に、裁判員制度が導入される前に高校生がディベートしたという情報がネット公開されていた。
いっちょ、施行
5年を迎えたこの時期に高校生のディベート、やらないか、公開してみんか
http://debate.on.coocan.jp/tdn/voice/saibanin/

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