法曹養成制度検討会議中間的取りまとめに対する批判意見の要旨 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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第1、「法曹有資格者の活動領域の在り方」について
  1、法曹有資格者を社会の隅々に配置することが国民の幸福に結びつくかの如き理念自体を,根本的に見直すべきである。また,法学部のある我が国において,時間も金もかかる法科大学院を上乗せする制度も,設計ミスである。
  2、活動領域について「広がりがいまだ限定的」としているが,もともとそれほどニーズが無いのである。「社会がより多様化複雑化する中,法曹に対する需要は今後も増加していくことが予想される」との推測のもとに大増員が行われたが,嘘で間違いであった。中間とりまとめには,誠実な総括と反省が一切なく,同じ誤りを繰り返そうとしている。
  3、「関係機関,団体が連携して有資格者の活動領域の開拓に積極的に取り組むことが重要である」と言うが,法曹に対するニーズがあるとして増加させたはずで本末転倒である。また,法曹の増加(供給)が需要を顕在化させるという主張が間違いであることは,既に実証されている。専門家に対する費用支払の財源が無ければ需要は拡大しない。
  4、企業法務,地方自治体,福祉分野,海外での活動領域の拡大と言うが,法曹資格が必要な領域ではない。司法試験や司法修習で要求される資質ではなく,法科大学院及び司法研修所で修練される分野でない。基本的には法学部の教育課程で対応すべき分野である。これまで平均年間約4万人合計約200万人の法学部修了者と約20万人の弁護士隣接業種などが,適材適所に役割を分担し,それで十分足りる。
  5、法テラス常勤,企業内,地方自治体,海外での活動領域の拡大と言っても,大幅な供給過剰は全く解消しない。財源の問題があり,多くが期限付きで立場が不安定である。

第2、「今後の法曹人口の在り方」について
  1、司法試験合格者の年間3000人目標の大増員は大きな間違いであったが,この間違いを犯した原因を全く検証していない。法曹に対する需要拡大はなく,弁護士が大幅な過剰状態にある。今後も需要が増加する見込みがほとんどなく,法曹に対するニーズが増えるとする記述は虚偽である。
  23000人目標は撤廃するが,新たに数値目標を設けずに,「その都度検討する」と言うが,無責任である。事件数と法律相談が減少し,就職難が年々厳しくなっている現状からして,合格者数1000人以下の方向性を明示すべきである(1000人合格でも毎年500人増加し,法曹人口は5万人以上になる)。そうしなければ,法曹の職業的魅力(法曹資格の価値)が著しく低下し,そのために志願者激減という危機的な事態に歯止めをかけられない。今後,有為な人材が益々司法に来なくなり,法曹の質が低下し,独立して職務を適正に行うことが困難となり,司法の機能を低下させる。法曹過剰は司法と国民の権利と生活に重大な影響を及ぼす。
  3、このような,極めて深刻な法曹の質の低下と弁護士過剰による過当競争の弊害について,全く議論されていない。法曹志願者の激減,就職難及び法律事務所の経営破綻に対する危機感が不足し,委員によっては,全く欠如している。
  4、司法拡充のための財政的裏付けがない。裁判官や検察官の採用が減少傾向に転じ,司法予算は1割も減少している。
  5、裁判所改革が全く触れられてない。裁判が被害救済に不十分で利用価値が低いままでは,弁護士需要は増加しない。

第3、法曹養成制度の在り方について
  1、法曹志願者激減の分析が行われていない。旧試験で合格率が約2%でも志願者が非常に多く,志願者激減の原因は,低い合格率ではなく,弁護士の大幅な供給過剰である。
  2、法学未修者の法的知識を受入時に問わず,1年で既修者と同じレベルになることを求める制度設計自体が無理であり,未修者コースにおいても,法学既修者の割合が70%を越えること(全体では87%)について,検討が行われていない。成文法の我が国において,ソクラテスメソッド等双方向の議論を重視した教育は法曹養成課程として合理性がない。
  3、受験資格要件は撤廃すべきである。予備試験受験者が多いので将来見直しを検討すると言うが,予備試験組の司法試験合格率が大学院組より約3倍も高いので,合格率が均衡するように予備試験合格者を拡大することが公平である。
  4、受験回数制限の「緩和も考えられる」としたが,制限する理由に合理性がなく,制限を撤廃すべきである。「法科大学院の教育が薄れないうちに」と言うが,5年しか教育効果が持続しないなら法科大学院の教育を改善すべきである。
  5、実務家の法曹養成の中核は,法科大学院ではなく司法修習である。OJTも重要である。法科大学院創設のための「点からプロセスへ」というスローガンは,誤導である。法曹養成全過程を検証し制度を根本的に見直す必要がある。
  6、司法修習について「多様な分野について知識,技能を修得する機会がより多く設けられていることが望ましい」と言うが,専門性の高い養成を行うべきであり,広く浅い教育をしかも1年で行おうとすること自体が間違いである。
  7、前期修習は,実務修習の効果を上げるために必要不可欠である。強い復活の要求があるのに,十分検討していない。
  8、司法修習生の貸与制を維持するとしたが,司法制度を担う法曹養成は国の責務であり,給費制は絶対に必要である 。
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