犯罪被害者を支援する弁護活動は重いらしい | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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 日弁連委員会ニュース2013年2月号2頁に掲載されていた、大分県弁所属の宇都宮妙弁護士(犯罪被害者支援委員会委員)の記事に触発されて投稿しています。

 交通事故犯罪の被害者やその遺族の場合には、経済的損失補てんが損害保険制度でなされるのが普通なので、被害者活動に従事することはいわゆるwin-winの関係にあるのしょうがそれ以外の一般の犯罪被害者(特に性犯罪)を支援する弁護活動の実態に接することができた、よい記事でした

 日弁連執行部は「なんでも話そうよ」とか誰に向けてるのか正直分からないブログ更新するよりも、宇都宮妙弁護士の記事を日弁連ホームページの犯罪被害者支援委員会のコーナーに貼りつけてほしいです。

1、犯罪被害者の「刑事裁判がどうなってるか知りたい」「犯人の科刑に対して意見を言いたい」というニーズに対して、そもそも【①犯罪被害者が刑事裁判の当事者と置かれていない制度構造】【②被告人には無罪推定が働くこと】自体が一般の法感覚から乖離しており、これを犯罪被害者に分かり易く説明するのが困難だそうです
  仮にアタマで理解してもらっても心底納得してもらうことはやっぱり難しいとか

 ちなみに②については刑訴法336条のほか、1789年のフランス人権宣言9条まで遡るという歴史的由来がありますけれどもどうしてそうなのかを一般人に分かり易く説明するのは確かに困難でしょうね
 ①については漢字だらけなんですが、大学生のつくった犯罪被害者と 刑事法制 がみつかったので、興味がある人はご覧ください

2、宇都宮弁護士がケース紹介しています。
 知的障がいのある被害女性への強制わいせつ罪が起訴された案件で、宇都宮弁護士被害者参加制度に関与たそうです。

 被害女性は実刑を強く望んでいたのですが、被告人に前科が無く相応の賠償金も支払われたため、執行猶予が予測されることや、執行猶予の意味を、被害女性や家族に噛み砕いて判決の前に説明はしていたそうです。

 結果、予測とおり、執行猶予の判決が出てしまったので、宇都宮弁護士は被害女性に説明に赴いた。被害女性は意外と普通で、ひとまず刑事裁判で有罪が出たことに胸をなでおろしていた。。。

 ところが、しばらく経って被害女性の入院している病院から「すぐ来てほしい」という連絡が入り、宇都宮弁護士は病院にかけつけました。被害女性はそのとき「どうして**(被告人)は家にいるんですか?刑務所に入ったのではないんですか?」初めて聞く低い、落ち着きながらも怒りを込めた質問を吐き出しました

 つまり、被害女性には心底、執行猶予の意味がきちんと伝わっていず、医師も臨床心理士も弁護士も誰も見抜けなかったのです
 宇都宮弁護士が説明を試みるも、「あれだけ気持を伝えたのにどうして刑務所に入ってないの!私が障がい者だからってバカにしないで下さい!」と途中で遮られて、病院から出てきたが、それ以来、被害女性には会っていないそうです

3、宇都宮弁護士の体験を通じた、重い覚悟や感想を披露してこの記事を終えます。弁護士・一般の方・犯罪被害者は、犯罪被害者を支援する弁護活動についてどういう感想を持たれたでしょうか?

犯罪被害者支援の仕事は、全体的に見て、依頼者から心から感謝されたことは無いように感じる。被害者は100%の被害回復を受けて当然と考えている。しかし、事件前の元通りにしてほしいという希望が100%叶うことは無いから。」
・・・この感想は意外でしたが、その体感こそが実態に合致するんでしょうね。

被告人や被疑者の弁護とは対照的だ。依頼者からしてみれば、否認事件以外は、悪いことをしたにもかかわらず弁護してくれるのだから、少しでも希望が叶えば感謝される。しかし、犯罪被害者支援の仕事は前述のとおり心から感謝されないから、弁護人ほど達成感は無い。」
・・・被告人や被疑者も皆が皆、感謝してくれる時代ではないですから、どっちもしんどいというのが正しい評価なんでしょうね。

「しかも、被害弁償を得たとしても、依頼者が受けた被害を目の当たりにすると、そこから報酬をいただこうというのはとても気がひけて、なかなか受け取れない。」
・・・それを言い出すと全くのプロボノになります。でも、医師も臨床心理士もプロの仕事をする中で報酬を受け取っているのです、プロの仕事を他のプロと協働する以上は気がひけようとも労務に見合う料金をいただく心の強さも絶対に必要です。宇都宮弁護士、ファイト!!!


「それでも、被害者が1人で苦しみを抱え込むより弁護士が一緒に寄り添うことを知っておいてくれた方がマシだ、という思いがある。何が正解か分からないが、とにかく被害者支援の仕事を一生懸命頑張っていこうと日々自分に言い聞かせている。」
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