浮気の慰謝料に関する法律問題 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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「配偶者の浮気相手に慰謝料を請求できるカルシファー、このことはTV番組の影響もあって社会常識になりつつあるようです(ちなみに最高裁1979/3/30判タ383号46頁ほかで、司法も肯定しています)。

 ただ実際の世の中では浮気をめぐって一筋縄にいかない問題が起きたりします。下記の例は実際ありがちなエピソードなんです。

 例えばその1、シティホテルに入ってから2時間経って揃って出てきたところを激写して問い詰めたら「食事をしていただけ。ラブホじゃない」としらをきられた。

 例えばその2、携帯電話履歴から相手の素性を調べて浮気を白状させようとしたら「もともとの知り合いじゃない。出会い系サイトで出会っただけ。だから結婚してるとはつゆも思わなかった」としらをきられた。

 慰謝料の相場もネットにはいろいろ書かれているが、どれが本当なのか幅もあってハッキリしたことは曖昧模糊としています。

 そんな中、男女問題を取り扱う市井の実務家にとって必読の論文が安西二郎裁判官執筆の、判タ1278号45頁「不貞慰謝料請求事件に関する実務上の諸問題です。

 圓道至剛元裁判官もtwitterで「過払→別冊判タ33号過払金返還請求訴訟の実務を読め!交通事故→リーガルプログレッシブシリーズ交通損害関係訴訟を読め!二段の推定→法曹会民事訴訟における事実認定の該当箇所を読め!」という記述に加え、ゲキ推薦しています。

  かなりのボリュームなので、参考までに項目立てて紹介します。
 分かりやすく不貞された人をX,不貞した配偶者,不貞の相手をとします。どれもこれも従来の論文には余りなかった著述が多いです。

1、YとAの間にどこまでの肉体関係があれば不貞になる

2、関係当時、AがXと結婚していることをYが知っていた場合は故意あることになるが、それ以外にYが責任を負う場面は?
 YがAから「おれは離婚したんだ」と騙されて信じた場合は?

3、関係当時、AX間の夫婦関係が既に冷え切って破綻していたときYは慰謝料支払い義務を負わない(最高裁1996/3/26判タ908号284頁)
 はてさて「夫婦関係が既に冷え切って破綻」とはどういう状態?
 まだ破綻に至っていなかったが、YがAから「Xとはとっくに冷え切ってしまっているんだ」と騙されて信じた場合は?

4、AY間の不貞で、AXが離婚に至った場合と、Xが子供のことなども考えて離婚をこらえた場合で、Yが支払うべき慰謝料は変わる?

5、慰謝料の金額にはどんな要素が影響する(職業、年齢、結婚・不貞の期間とYのどちらが主導したか、Yの妊娠出産の有無)?

6、興信所の調査費用をXはYに請求できる?逆にAに騙されて不貞を開始したYはAに慰謝料請求できる?

 私からこの論文には掲載されていなかった判例を1つ紹介します。

 弁護士がXからAには慰謝料500万円・Yには別個に慰謝料300万円、あわせて800万円を請求したい」という要望を受けたとします。
 慰謝料の相場と関連しますが、残念ながら浮気の慰謝料で300万円を超える金額が妥当だと裁判所判断こと多くはないです。

 XはAから慰謝料500万円を先に受け取りその後、Yにおもむろに慰謝料300万円を請求しました。
 ところが、
Yは「私が支払うべき慰謝料は既にXから500万円受け取ったことで補填されているから支払義務は無くなった」と反論しのです。

 横浜地裁1991/9/26判時1414号95頁は「AYの不貞行為は、Xに対する共同不法行為を構成し、Aが支払うべき慰謝料とYが支払うべき慰謝料は不真正連帯債務の関係になるから、Aが相当額を上回る慰謝料を既に支払った以上、Xの精神的損害は全額補てんされてしまい、XはYに重ねて慰謝料を請求できない。」と説示したのです。

 法律家の意見は法律構成に照らせば皆そういう結論にならざるを得ないと一致するでしょうが、しかし、一般常識からは「不倫するなら金持ちのAと不倫すればYはノーリスクじゃん」となんか納得できない感覚なのではないでしょうか。

 最後、最近は携帯やPCメール不貞の証拠に持ってこられることが大変増えました弁護士にとっては立証は結構やりやすくなりました。
 とにかく不倫の代償はいろいろと高くつきます。皆さんご留意を。
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