#740 【マニアな一基】 水野線No.2~7 鋼管製の大型美化矩形鉄塔 | 関東土木保安協会

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狭山茶で有名な埼玉県狭山市。
茶畑が広がる中に、大型の特異鉄塔が林立していますので、現地へ見に行ってきました。


以前茶畑の中にある茶畑モチーフの変電所、下富変電所とそのモノポールを紹介しました。


水野線は8回線を収める鉄塔です。
多回線鉄塔なので長方形の基礎を持つ矩形鉄塔で、高さもありかなりユニークな鉄塔となっています。
私は人生の殆どを東電管内で過ごして鉄塔も見ていますので、こんな鉄塔を見てしまうと「え!?ここは関西!?」などと思ってしまいます。
何故かって、東電管内では複数の送電線を束ねたところで、殆どが4回線か多くて6回線鉄塔で、形状も四角鉄塔で段積みの場合が殆どなので、こんな設計はまずされないからです。
関西だと↓のような多回線オンパレードで目を疑います。

▲奥に見える南狭山変電所から続く水野線他6回線

鉄塔は、南狭山変電所に接続されている66kV2回線を4線、計8回線収めています。
水野線、東大和線、川越線、膝折線です。
周囲に高層建築物が無いだけに、かなりの存在感です。
変電所寄りのに6基がこの設計で建設されています。

▲60m級の矩形鉄塔は遠景でもかなりの存在感がある

周囲が茶畑と話しましたが、区割りがかなり独特です。
南北方向の道路が何本かあるのですが、その道路を結ぶ東西の道路が数本あるだけで、細長い長方形の土地が延々と広がっています。
そのため、鉄塔に向かおうとすると道路を少し離れたところまで迂回しないといけないため、取材で回ろうとするとなかなか面倒な環境でした。
そのうえ畑の真ん中に立地している鉄塔も多く、直下に行くのがなかなか難しい鉄塔達でした。
周囲環境を知ることができて、ここら辺もまた鉄塔巡りの面白さの1つです。
(これは水野線のドナウ区間でも思ったのですが、茶畑特有の区割りなんでしょうか、、)

▲周辺は宅地開発がされた区画の他は茶畑が広がる

そんななか、このNo.5鉄塔はフラワーヒルという団地の中の雪見原東公園というところに位置しており、容易に訪れることができました。

多回線鉄塔は一部電線が撤去されていることもよくありますが、この水野線に関しては設計当初の8回線フル搭載のままで、この辺もファンとしては嬉しいところではあります。

▲水野線No.5(1992/8,64m)

水野線の矩形鉄塔の特徴として、鋼管トラス構造で部材が少ない美化鉄塔の設計であることが挙げられると思います。
ベンド点となる腕金下部までがブライヒ結構で、腕金以上が水平材を中心としたラーメン構造になっています。
しかしまた部材一つ一つは大きいため、綺麗には見えますが迫力や威圧感は個人的にはかなりのものです笑。

▲雪見原東公園内にそびえ立つ

各鉄塔は1992年頃に一斉に建て替えられたようです。
こことNo.4が障害標識ありの60m越えとなりますが、他は高く見えても60mは越えてないようです。
設計上は一線を越えたくないであろう事情を加味すると、宅地通過とロングスパンという条件などをクリアするため少し高い鉄塔になったのでしょう。

▲30年以上前に同時期に建て替えられたようだ

畑の中で近付きにくい鉄塔が多い中で、最後の方のNo.2,3は近付き易い立地でした。
黄色帽子もなくシルバー1色です。

▲水野線No.3(1992/8,53m)

記念に結界から拝ませて頂きました。
部材が太くてスッキリとした中に圧迫感がヤバいです。

▲記念の結界写真

こういうシンプルで部材が太い、なんて鉄塔は個人的にはモノクロが似合います。
美化鉄塔として建ってるので建築物みたいでこれはこれで綺麗です。
こういう画にすると廊下にでも飾りたくなります笑。

▲多回線併架の迫力とラーメン構造の美しさが際立つ

最後は変電所に隣接するNo.2まで来ました。
この子はゴルフ練習場の隣にあり、見慣れた人も多い鉄塔なのかもしれません。
下にはヒマワリが元気に咲いていました。
夏も終わり、秋が始まりましたね。

▲水野線No.2(1992/8,55m)

矩形鉄塔から多回線を引き降ろすなんて、どんな造りだろうとワクワクするところですが、そこは東電さんの設計。
堅実に4基の四角鉄塔により引き込まれています。
しかもほぼクローンの鉄塔です。
これはこれで収まりがいいですね。

▲水野線他6回線が横並びに揃い南狭山変電所に接続する

南狭山変電所は、周囲より低い場所に設けられているため、外周路からも容易に中を見ることができます。
見学者には嬉しい変電所ですね。
超高圧ながら水野線ら66kVも有すため、設備のバリエーションや数も多く、観察には適した変電所だと思います。

▲変電所は珍しく切土されたような立地だった

この水野線という送電線は、他にもドナウ型区間があり、鉄塔カードのサイト(文末リンク参照)でも何基か紹介されている、ファンには知られた送電線です。
ドナウ型も巡ったので、次回にでも載せたいと思います。


元気一杯のヒマワリと、負けじと元気一杯の水野線矩形鉄塔。
これからも名物鉄塔はこの地で咲き続けることでしょう。



〈参考〉