#587 【マニアな一基】 2回線片寄せアームの単柱 東電PG埼玉医大線1号 | 関東土木保安協会

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前回辿った芳野台線から分岐するのが、埼玉医大線になります。
分岐点の13号に戻って追いかけてみましょう。


こちらが埼玉医大線です。
現在の鉄塔数は2基の送電線です。
見ての通り、この1号鉄塔も道路の上を通すような設計がされており、分岐時の垂直2段配列を維持したたま、長いアームで支持する特徴あるスタイルになっています。


道路は歩道があるものの、先ほどの芳野台線がなぞった道路とは異なり緑地帯もなく余裕はありませんので、道路脇に単柱を建てて偏心アームでクリアとしています。
この形も、なかなかいいシルエットではないですか。


二段積みなので背は高く51mもあります。
建設が1987年3月となっているところに注目です。
芳野台線14号以降が1990年となっていました。
当初の運開ルートは、同じ建設年月の13号から分岐したこちらだと推察できます。
そのため、芳野台線という名前でもなく、ひょっとしたら現分岐線路名の埼玉医大線だったのでしょう。


気になるのは、この白いモノポールも元々は青だったのか、という点です。
これも推測になってしまいますが、文末に貼ったリンクで、2011年時点での埼玉医大線の様子をブログに載せていらっしゃる方がいます。
その様子を見ると、白色になっているようなので、恐らくは当時の埼玉医大線14号以降は白色で完成していたものと思われます。


この鉄塔、私は聖地巡礼などと称して見させてもらいました。
というのも、2020年夏の「博士ちゃん」といつテレビ番組で、史上最年少で電気工事士を取得した少年が、テレビで紹介していたからです。
上写真と全く同じ光景であることがわかるかと思います。


そういえば、その博士ちゃんの彼は「大きい病院なので大電力を消費する」などと話していました。小学生なのによく理解されています。その通りですね。
テレビの補足では「高圧電線を多く引き込むためアームを増やしてFの形に」などと説明していました。こちらは少し違いますよね。
別に同じように特高需要家に送電線しようとすれば、ここに普通の鉄塔を建てても良いわけです。
電線の本数も、国内の高圧送配電が三相3線式が主流ですし、常用系と予備系を引こうとすれば2回線6本になるのは必然です。
これら2つの理由はFの形とも結び付きません。
形状の理由は、線下保証の兼ね合いと考えられ、この埼玉医大線(現芳野台線含む)が建設当時から民地を極力通過しないようにルートをトレースしているのがその表れです。
道路脇に鉄塔を建てて電線が道路上を通過するようにさせたことでここではF型としたものとみられます。
折角全国放送するなら、こういった事情も触れて欲しかったのですが、触れるはおろか間違ってまとめるとは、テレビの補足が少し雑ではないでしょうか。。

それはさておき、博士ちゃんは電柱も大好きとのことで、是非マニア活動も頑張って欲しいですね!


話が脱線しましたが、こちらが同2号鉄塔になります。
2013年4月に完成した新しい鉄塔です。
こちらも上下二段、かつ回線別段違いの引き下ろしと少しマニアックですね。
手前の1号の垂直配列の二段をこの位置に持って来た場合、一般的な垂直配列の2回線平行配置では、回線間がクロス寄りになってしまい、離隔が足らなそうに思えます。
かといって1号に揃えて引き下ろしまで縦積みで片寄すると偏心アームとなり、これはこれで塔体の強度を要しそうです。
というわけで段違いのこの鉄塔になったのではないでしょうか?


鉄塔下に並ぶキュービクル。
これも2013年の鉄塔建設時に同時に完成したのでしょう。
こちらの病院は開院が1985年ですが、鉄塔からは特高受電には1987年に火が入ったと読み取れます。
恐らく新規引き込みの協議等で暫定で高圧受電で営業開始されたのではないでしょうか。
新受電が2013年竣工となると、約26年での設備更新となります。
さすが病院だけあって、比較的更新サイクルに乗っている方ではないでしょうか。
旧2号は直角度鉄塔で、ここで写真右方向へ電線を渡し、今の「カルガモの家」の辺りで3号へ渡し、落としていたようです。
カルガモの家も2013年に完成したので、ちょうど更新に際して受電を移設し、その跡地に施設を新設したのですね。
なるほど。


この2号は建て替え前はどうだったのか?という点が気になりますよね。
こちらも同じ芳野台スタイルのシングルワーレンに、2回線垂直偏心アームというとんでもない姿の鉄塔でした。
これも残存していれば相当珍しい鉄塔になっていたと思います。
文末リンクのブログにその写真が残っていますので、気になる方は覗いてみて下さい。

何度も口にしてしまいますが、「いま」を記録するのは、大切ですね。


〈参考〉
・埼玉医大大学総合医療センター : 病院の概要 


・シャツのほころび涙のかけら : 鋼管トラス・F型?・・・鉄塔 


 ・関東電気保安協会 : 電気設備更新の目安