#548 【マニアな一基】優しさの緑色 加須線3,4号 | 関東土木保安協会

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今年は7月くらいまでぐずぐずだったせいか、酷い猛暑の期間が少なかったように思えます。
もうすっかり朝夕は秋の空気ですね。

こちら、埼玉県は加須市の加須変電所近くにあります、加須線4号です。
鋼管の四角鉄塔ながら珍しく緑色の環境系の装いなので、面白くなって立ち寄ってしまいました。


高さもそれほど無く、66kV級2回線の長閑な送電鉄塔ですが、鋼管製でガッチリしていますね。
1,2号はごく普通のアングル材の鉄塔ですが、3,4号だけは市街地の中にあるためか、鋼管組みで緑色の組み合わせとなっています。
学校、住宅地に囲まれているため、周辺環境への配慮で緑にしたと思いますが、どうなのでしょうか。


1983年12月の鉄塔です。
この頃の鉄塔に環境調和型が多くあるように思えますが、トレンドだったのでしょうか。
高さ30mです。


斜材が減るので多少は軽く見えるのでしょうかね?
主材が太くなるため、視界的圧迫はあまり変わらないように見え、薄い緑の塗装がせめてもの柔らかさです。
場所的に、この高さでアングル材で組もうとすると、もう少し広い敷地を要すためにこの解なのでしょうか。でもそれなら、コストはかかりますが、もっとコンパクトな単柱でいいはずです。
なんとも解せない、優しさの加須線です。


足元です。
緑色のフェンスに囲まれており、周囲は駐車場になっています。
これくらいの近さでみると、銀色よりかは緑色の方が日常的にはフレンドリーな感覚で接することができるかもしれませんね。


さて、こちらの隣には、さいたま新都心のコクーンシティを運営している、片倉工業の「加須カタクラパーク」があります。
1991年に完成した、メインテナントにイトーヨーカドーを擁すショッピングセンターです。
横長のスタイル、配色、今や貴重な80年代から90年代にかけて各地で見られた、スタンダードな面持ちのイトーヨーカドーです。
折角なので立ち寄ってみましょう。


屋上駐車場に車を停めると、加須線4号がよく見えました。
左にある5号鉄塔が最終鉄塔ですが、加須変電所への引き込みのために段違いとなっており、回線毎で高さが違っています。


加須線は鴻巣線から分岐します。
分岐点から4号まで駆けてくる様子も見えました。
この鉄塔が立ち並んでいるルートを上の方から見るのも、可愛らしいですね。


手前にある3号鉄塔にも行ってみました。
こちらは、埼玉県立不動岡高校の敷地内にあります。


元々は見慣れていなかったのですが、最近はこの埼玉仕様のプレートにも慣れました。


4号と左右逆にした、同じようなスタイルの鉄塔です。
こちらは学校内の木々に囲まれており、緑色配色の効果も上乗せされている印象です。
木々に負けじと緑を振りまいています。
個人的に、次の塗装の際は、もう少し濃い緑でもいいかな、と思いました。


さて、カタクラパークの屋上駐車場です。
一昔前はデパートの屋上は遊園地であり、また屋上駐車場でありました。
ここは、古きよき屋上駐車場のスタイルで残ってくれています。
毎度、遠かろうが地上が空いてようが、敢えて屋上などの日陰な駐車場が覗きたくて、そっちへ停めてしまいます。


片倉工業は製糸業をルーツとし、官営であった富岡製糸場を合併するなど、日本の近代産業発展の一翼を担ってきましたが、戦後は工場跡地などにショッピングセンターを開業し、新たな事業として発展してきました。
拡大を続けるさいたま新都心の「コクーン」のルーツもそこにあります。繭ですからね。
この見慣れたイトーヨーカドーの看板も、一時期ホールディングス化による共通CIの誕生で姿を消しましたが、また部分的に復活させたのは、やはり大衆にいつも映っていた、馴染みがあったマークを求める声があったからでしょう。


時代と共に消え行く物、新たに生まれるもの、そして消えたものの、名残惜しさにまた生まれてくるもの。
鉄塔を見てお散歩していると、求められて建設された土木施設と、比較的社会の流れで変動しやすい工業、商業施設の対比が見てとれて、面白いものです。


〈参考〉
・片倉工業株式会社 : 加須カタクラパーク