本日ご紹介するのは普通の様で変な鉄塔です。
何が変かといいますと腕金であります。
まあ見てください。
▲京北線115号
変です。何かが変です。
そう、一番上の腕金が何やら出っ張っているのです。
こいつは見たことがないですね。
京北線は、東川越変電所から草加駅東側にある京北変電所を結ぶ送電線です。
都市化に合わせて建て替えが進む典型的な郊外送電線です。
外環を走ってたりすると、南浦和付近で北側に見えます。辺りでは、スリムな鋼管製の四角鉄塔を中心に構成されているのがわかります。
そんななか、あれー変な形だと思って擦り寄っていったのがこの114号、115号です。
この鉄塔はこいつのすぐそばにあります。
気になるので、ガンガン拡大してみましょう。
▲正面より。最上部の腕金が変な形をしている
腕金は最上部の電線のみ異なり、下2段は通常通りの正面から見ると三角形のものです。
何の目的があるのでしょう。
横からも見てみます。相変わらず変です。
どうやら線路方向に向かって腕金が出っ張ったような形をしているようです。
腕金は線路方向に2本出っ張ったような形になり、双方の腕の間にはしっかりと梁が張ってあります。
これによりジャンパ線は必然的に長くなり、長幹碍子もそれぞれの腕の下に1本ずつ、計2本も存在しています。
▲構造がよくわかる側面からのカット
碍子は倍の数が付き、腕金も複雑、まるでメリットがありません。
これは土木設備の原理に反しますよ、ええ。
それでも建てられたのですから、何かメリットがある筈です。何でしょう。
碍子の装連個数は変わりなし、またダンパーも変わりなし・・・
114号も見てみます。
基本的には障害標識がない以外は同じ造りです。
▲114号鉄塔。外観はほぼ同じだ
この鉄塔たちは平成6年に竣工したと書いてあります。
とにかくスタイル抜群なのですが、細すぎるためか下半身に補強が入っています。
この2基のみ目立っていたように見えます。
▲鉄塔下部に見られる水平方向の補強
この2基の腕金、一体何なのでしょうか。足りない頭で考えてみます。
・線間離隔を保つために一番上の線路のみ特殊な腕金を設置した
⇒それほど効果はなさそうですが、他の方法でも代替案がありそうです。
・鉄塔は限られた敷地に建設したため、細く高い鉄塔になってしまった。
このため上部の腕金を変更し、重心のバランスをとっている
⇒逆に重くなっていると思いますので、これはないですよね。
普通は重心が高くなるため、鉄塔ではしませんよね。
しかし、こんな例外もあるので、なくはないかもしれません。
・新型腕金の試験用にこの区間のみ別の形で竣工した
⇒なくはない話かと思います。ただ、どんなメリットがあるかは不明です。
・以前は特殊な形状の鉄塔だったが、その用途を解かれ現在に至る
⇒こちらもなくはないですが、当時の航空写真を見るとそんなことはなさそうです。
・周辺環境が影響し、この形状になっている
⇒風が強い、とかでしょうか。線間スペーサも入っていないですし、そんなことではなさそうです。
▲114号と115号
この鉄塔たちは新しい方で、同線の他の鉄塔は、V型懸垂碍子を用いた昭和後期の典型的な154kVA線路の鉄塔です。
それからすると、この鉄塔たちは高さの割には結構スマートなのです。
それが影響してこの形状、いやそうなのか・・・
あり得るのはやはり線路間離隔対策の例なのかな、と思います。
で、高すぎると狭い基礎からしてバランスがとれないので、鉄塔高を一定の高さで制限して、一番上の線路だけ離隔がとれないので、腕金を変形させて対応させている、ということなのではと予想します。
(わからないだけでは面白くないので、間違ってても自分の答えを出しておきましょう(笑))
それにしても謎です。知っている方がいれば教えて欲しいですね。
わからない気持ち悪さと想像の楽しみ、そして新たな出会いと知識の習得。
「鉄塔、鉄塔、・・・」と叫んだ幼少期。この鉄塔の追っかけというのは、本当に死ぬまで付き合える趣味だと感じます。
(2013/5/21追加)
下記コメントにもありますが、類似した腕金を持つ鉄塔を載せてみます。
これを見る限り上部2回線用の引き下ろし構造準備工事と見ることができます。
真相はいかに。
▲東京電力久我山線10号 浅間町変電所内
最上部の張り出た腕金がそっくりです。
下部の引き込み用の架台も、強化された部分というのに合致します。
▲両脇に1回線ずつ引き下ろす
すっきりとした外観です。
思い返すと結構よくある形状かもしれません。
こちらは中部電力ですが、同じく最上部の腕金はオフセットがついた大きなものです。