めまい(良性発作性頭位めまい症)に使われる漢方薬 | 富山発 現役薬剤師がお届けするやさしい漢方・ハーブだより

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こんにちは。

漢方薬剤師のみゆきです。

私の漢方歴についてはこちら

 

 

今日のテーマは、
めまい(良性発作性頭位めまい症)に使われる漢方薬

についてです。

 

 

良性発作性頭位めまい症について

 

良性発作性頭位めまい症とは、

耳の中にある内耳の障害が原因で生じるめまいのひとつです。

 

内耳にある耳石がはがれて、
三半規管(からだのバランスを保つ器官)に入り込むと

めまいが生じると考えられています。

 

末梢性のめまいで、

耳鳴りや聴力低下、脳神経症状は伴いません。

 

めまいといえば、
メニエール病が思い浮かぶかもしれませんが…

良性発作性頭位めまい症の方が、メニエールよりも多いとされています。

 

 

以下のような特徴があります。

 

・ぐるぐると目がまわる(回転性)

・急に上をむいたり、起き上がったり、

 頭を大きく動かした時にめまいする

(安静にしている時は起きない)

・吐き気を伴うこともある

・ずっと続かずに、めまいは1分以内で治ることが多い

 

一般的な治療薬としては、
対処療法として、抗めまい薬と呼ばれるものが使われます。
 

メリスロン(ベタヒスチン)

セファドール(ジフェニドール)

アデホス(アデノシン三リン酸)など。

 

 

 

めまいに役立つ漢方薬

 


めまいの原因を漢方的に考えると、

ざっくりと以下の3つに分類されると思います。

(加齢現象の場合は、さらに「腎虚」がプラス)


・水分の循環が悪い(水滞)

→胃腸虚弱、暴飲暴食、冷たいものの過剰摂取で

胃に余分な水分が停滞

→からだの水分代謝が乱れ、頭や内耳に水分が滞りめまいが生じる

 

・ストレス、イライラ、のぼせ(気滞)

→自律神経が乱れて、脳や内耳への血流が滞りめまいが生じる

 

・睡眠不足、貧血、冷え(気血の不足)

→脳に十分な栄養が届かずめまいがおきる

(ふらつきなどの浮動性めまいが多い印象)

 

 

この中でも、めまいの最大の原因は、

「余分な水分(水滞)」と考えられています。

 

良性発作性頭位めまい症は、
リンパ液の流れの乱れも関係すると考えられています。

 

なので、ファーストチョイスとしては、

水滞を解消する漢方薬がおすすめです。

 

「水滞」のめまいに役立つ市販の漢方薬からご紹介します。

 

今回ご紹介する3つの漢方薬はともに、

医薬品として「めまい」に効能効果が認められています。

 

■苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

 

ツムラの市販の苓桂朮甘湯は1日2回服用。

医療用の1/2量です。

 

 

●効能・効果
体力中等度以下で、めまい、ふらつきがあり、ときにのぼせや動悸があるものの次の
諸症:立ちくらみ、めまい、頭痛、耳鳴り、動悸、息切れ、神経症、神経過敏

ツムラ苓桂朮甘湯の添付文書より引用

 

苓桂朮甘湯は、

水分の循環をよくするとともに

精神の安定を促す働きもある漢方薬です。

 

立ちくらみにもよく使われます。

 

頭の向きで悪化する頭位性(良性発作性頭位めまい症を含む)、
立ち上がるなどで悪化する・起き上がる起立性のタイプに用いられます。

 

ツムラ、高齢心不全患者の周辺症状 めまい・浮腫に対する漢方薬より引用

 

 

■五苓散(ごれいさん)

 

 

ツムラの市販の苓桂朮甘湯は1日2回服用。

医療用の1/2量です。

 

●効能・効果
体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐
腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:
水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹 注)のものには使用しないこと)、暑気あたり、
頭痛、むくみ、二日酔

注)しぶり腹とは、残便感があり、くり返し腹痛を伴う便意を催すもののことである。
ツムラ五苓散の添付文書より引用

 

水滞といえば五苓散が思い浮かびます。

めまいもするし、むくみもあるという方は、
迷わず一度、五苓散を試してみるとよいと思います。

 

 

 

■半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)

 

松浦薬業株式会社の半夏白朮天麻湯は、1日3回の服用。

ツムラやクラシエといったメーカーからは、販売されていませんでした。

医療用のおおよそ1/2量と考えてよいと思います。

 

 

●効能・効果
体力中等度以下で、胃腸が弱く下肢が冷えるものの次の諸症:
頭痛、頭重、立ちくらみ、めまい、蓄膿症(副鼻腔炎)

 

胃腸が弱くて、冷えもある人のめまいや頭痛によく使われる漢方薬です。

 

構成生薬の「半夏(嘔吐を抑える)・白朮(健脾、利水)・天麻(肝風によるめまい改善)」から名前がつけられています。

 

胃腸のはたらきを回復しながら、水分の循環をよくしてめまいを改善する

というはたらきです。

(気虚も入っている)

 

 

苓桂朮甘湯(4)や五苓散(5)と比べて、

半夏白朮天麻湯は構成生薬が12と多いです。

 

一般的に、構成生薬が少ない方が切れ味がよいとされています。

 

苓桂朮甘湯や五苓散はめまい時にのむ

というような使われ方をすることもあります。

 

そしたら、早く効く方がいいのか?

という話になりますが…

 

もともとのめまいの原因を考えた時、

例えば、胃腸虚弱な方の場合は、

そこのフォローが手厚い半夏白朮天麻湯を続けた方が改善が期待できると思います。

 

ひとりひとりに合った漢方薬を選ぶことが

大切ということにつながりますね。