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私的備忘録

書名:クラーク巴里探偵録
作者:三木笙子(みきしょうこ)
出版:幻冬舎文庫
内容:1906年、フランス・パリ。ヨーロッパを巡業中の曲芸師一座の座長・那須九郎に拾われた山中晴彦は、敏腕の番頭・片桐孝介のアパルトマンに居候させてもらっている。まだ那須一座で働いておらず、落ち着かない晴彦は家事一切を引き受けることにする。ある日、孝介の手伝いをすることになった晴彦だが、一座の裕福な贔屓客から持ちこまれた話で「幽霊退治」だという。二人はブルジョワだというデュボア家を訪れ、当主グレンに面会する。ムッシュウ・デュボアは一人息子ジュリアンの部屋に、一ケ月ほど前からポルターガイストが起きると話す。夜、寝室でジュリアンが眠っているとバラバラという音が聞こえ、灯りをつけて見ると辺り一面に石が散らばっているという。寝室には窓が無く、扉には閂がかけられ、大きな暖炉には鍵のかかった鉄格子の扉が嵌めてあり、密室の状況だった。ジュリアンは寝室を移すが、其処でも石が降ったという。外聞をはばかるムッシュウ・デュボアは、孝介たちに内密に幽霊騒動を収めるよう依頼するが……〔幽霊屋敷〕。孝介が贔屓客の持ちこむ厄介事の始末に奔走する裏で、晴彦の抱える秘密とひそかに進められる危険な計画とは……。連作短編ミステリ。

<収録作品>
●幽霊屋敷(メゾンアンテー)
●凱旋門と松と鯉→日本大使館の外交官が、下宿先の若いマダムがストーカーに遭っていると、孝介に捜査を依頼する
●オペラ座の怪人→晴彦が孝介に見せてもらった建物の最上階は、舞台美術家によって部屋の壁画がトロンプ・ルイユ(だまし絵)になっていた。二人が地上階におりて出て行こうとした時、一階で物音と叫び声が上がり、十万フランを盗まれるという事件が起きる
●東方の護符→晴彦が那須一座に雇われるきっかけとなった朝倉商会の時期後継者・高瀬敏之の企みとは?

アパルトマン:貸間
カフェ:珈琲
ギャルソン:給仕
ランプ:洋灯

何度「『ハ』ル」だと教えても「『ア』ル」と呼ばれてしまう

「ポルターガイストというのを知っているか」
「独逸(ドイツ)の言葉だ。騒がしい霊という意味だそうだが」

巴里における階の数え方は日本とは違っていて、日本の二階が巴里では一階になり、一番下の階は地上階と呼ばれていた。
 

書名:パリ黙示録 1768 娼婦ジャンヌ・テスタル殺人事件
作者:真梨幸子(まりゆきこ)
出版:徳間書店
内容:1793年、フランスの革命政府に投獄され処刑を待つばかりの印刷工房主ロベールは、旧体制のころ訴訟趣意書で大儲けしたことを懐かしく思い出し、回想録を記すことにした。1768年4月4日月曜日、ルイ・マレー警部は警察長官に叱責されていた。貴族の醜聞を取りしまる特殊任務についているマレーの監視対象である貴族・サド侯爵が、昨日のイースター(復活祭)で事件を起こしたのだ。広場で拾った女乞食を別荘に連れ込んだサド侯爵が性的虐待を行い、逃げた女が訴えを起こしたという。事件をもみ消すように命令されたマレーは、助手を務める弟トマを連れて捜査に乗り出す。一方その頃、サド侯爵が五年前に起こした醜聞の相手である娼婦ジャンヌ・テスタルの惨殺死体がセーヌ川で見つかる。印刷した訴訟趣意書を民衆に売りさばいて儲けている工房の跡取り息子ロベールは、事件の犯人はサド侯爵に違いないと調べ始めるが……。革命前の爛熟した熱気を帯びたパリで起きた残虐な殺人事件。歴史&警察小説。
※本書は、歴史的事実を背景に、架空の人物・エピソードを盛り込んだフィクションである。
 

書名:自由の鐘
原題:The Bells of Freedom
作者:ドロシー・ギルマン
出版:集英社文庫
内容:9歳で母を亡くしたジェッド・クレインは、リバプールに住むおばの家に向かう途中でさらわれ、植民地に向かう船に乗せられた。20ポンドで奴隷のように売り飛ばされたジェッドは、アメリカ・ボストンの鍛冶屋サイラス・クラーク親方の下で7年の年季奉公をすることになる。それから2年、ジェッドは空腹を抱えて親方に鞭打たれながら働かされていた。1774年11月、毎日ジェッドを「役立たず」だと愚痴っていた親方に、中年の男が彼を買い取ってやろうと申し出る。交渉の末、13ポンドでジェッドは売り渡されてしまう。こうして12歳の少年ジェッドは、2年ぶりに鍛冶屋の外に出た。新しい主人ティサーミング・ボックスは印刷屋だと言う。ボックスに夕食を食べさせてもらった後、ジェッドは仕事の説明をされ、建物を案内される。最後に二階に上がったジェッドは、立ち入り禁止の部屋とボックスの寝室に置いてある鍵を見せられた。翌朝、一時間仕事をするとボックスは出かけた。ジェッドは掃除をしていたが、あばた面の男が入ってきた。そしてボックス親方の情報を話してくれれば銀貨を稼がせてやると言う。ジェッドはほうきを槍のように構えて断った。すると男は「気が変わったらグレイホースの宿屋にホーヴェイを訪ねてくれ」と言って出て行った。ボックスは一日の仕事が終わって寝る前になると、ジェッドに一時間の自由時間を与えてくれた。ジェッドは興奮して外に駆け出した。ジェッドが2年前に連れてこられた頃、ボストンの港にはいろいろな種類のたくさんの船が浮かんでいた。いま、湾内に見えるのは、港を見張るイギリス海軍の船だけだった。鍛冶屋に居た頃に聞いた噂によれば、イギリス本国が植民地ボストンの人々に腹を立てているからということだった。ボストンはぬかるみのでこぼこ道一本で陸につながっている町で、その道もときどき浸水して通れなくなる。いま、海路を断たれて、ボストン港に入ってくる船はない。そのために、食糧はもちろん、さまざまな物がボストンに入ってこなくなっていた。ジェッドが家に戻ろうと横丁に入ったとき、一本の腕が彼の体を引っぱって、暗い通りの奥に引きずり込んだ。その腕はホーヴェイのもので、ジェッドの体を絞めつけた。「部屋の鍵がほしい。ボックスがだれと付き合っているか、知りたい」ジェッドを脅すホーヴェイの向こうずねを蹴り、手首に噛みついた。ホーヴェイは悲鳴を上げて、ジェッドを放した。ジェッドは横道から通りに走り出て、ウォーター・ストリートの店に逃げ戻った。二階からボックスの声がした。「ドアに鍵をかけて、二階に来なさい」言われた通りにジェッドが親方の寝室に行くと、そこには親方とホーヴェイがいた。ボックスの友人「ホーヴェイ・パーカー」を紹介されたジェッドは驚き、「ぼくに旦那様をスパイしろと言った人ですよ!」と糾弾した。だが、それはボックスの指図だったと明かされる。ジェッドが信頼できる人間かテストしたのだという。実はボックスの本業は偽札作りだったのだ。今のボストンはイギリス軍の目が光り、出入りを制限されてしまっている。そのためイギリス軍が疑わない子どもを、使い走りのボーイとして欲しかったのだとボックスは訳を明かす。ボストン郊外にジェッドを使いに出すために、道路標識や地図が読めるようにボックスは字の読み方を教えようという。ジェッドはお腹いっぱい食べさせてくれるうえ、文字の読み方まで教えてくれるという親方に感激する。ボックス親方から学ぶ一方、ジェットは町中を歩いて地理を憶えた。ジェッドは町の通りでポスターをひとつひとつ読んでいった。すると、14、5歳の少年ベン・ウィーラに声をかけられた。ベンに「トーリー(親イギリス派)か?」と尋ねられたジェッドは「どちら側でもない」と答える。ベンは「きみは自由がほしくないのか?」と言い、背を向けて行ってしまった。ジェッドは店に戻り、ボックスに戦争について尋ねると、「わしは勝ったほうにつく」と言われた。このときジェッドは、自分と親方の立場の違いに気付いた。二月、ジェッドは初めてボストンを離れるお使いに出された。夜、夜警の目を避け、ホーヴェイの手引きで桟橋に隠してあったボートに乗ったジェットは、一人でチャールズ川を渡ってケンブリッジに向かう。ところが向こう岸に着いて何歩も進まないうちに、ジェッドは男に肩を掴まれた。二番目の男がランタンでジェッドの顔を照らし、子どもだと気付いて驚く。ジェッドは三人の男にこづかれながら前方の家に連れて行かれた。小さくて低い家は植民初期の古い家のようだった。暖炉の火の前には赤毛の男が立っていた。赤毛の男はジェッドが通行証なしにボストンを出てきた理由を尋ねた。どうやらジェッドはスパイだと疑われているらしい。そこでジェッドは自分は主人の使い走りで、どちら側でもないと答えた。すると、赤毛の男は主人はどっちの側かと尋ねた。ジェッドは「主人は勝った側につくと言いました」と正直に言った。男の顔は暗くなり、ジェッドの考えを尋ねた。ジェッドは「ある少年の話を聞いてから、少し革命軍の側に傾いていると思います」と言った。男は笑って、ジェッドの用事を尋ねた。ジェッドは半分だけ真実を言うことにした。「主人が借金を返すためのお金を運んでいます」親方の名前と住所と職業を答えると、赤毛の男は真偽を確認し、ジェッドが嘘を言ってないことが分かると、ジェッドを解放する代わりに手紙の配達を頼む。ジェッドが応じると、ティムという名の義勇兵とともにケンブリッジの町に行くことになった。ティムに見守られながらボックス親方の仕事を終えたジェッドは、先程の川のそばの家に戻った。15分後、ジェッドは「赤毛のキャプテン(大尉)」という通称を名乗った赤毛の男に見送られながら、ボストンに向かってボート漕ぎだした。受け取った手紙はボストン・クラーク埠頭の彫り物師ポール・レヴィア親方宛だった。ジェッドは桟橋に着くと、ホーヴェイが待っており、偽札の代金を受け取った。翌朝、市場への道すがら、ジェッドは北ボストンへ行き、手紙を届けた。ボックス親方と同業のレヴィア親方は、ボストン大虐殺を彫ったマスター・レヴィアだと知ってジェッドは驚く。ジェッドも見た事のある版画で良いものだと思っていた。偉大な芸術家に会ってわくわくしたジェッドは、その晩、ボックス親方に版画を彫ればいいのにと言った。ボックス親方は「ジェッドは世間知らず」だとおかしそうに言った。「偽札を作ることで、版画よりもよっぽどたくさん金を稼いでいるんだ。それが商売というものだ」四月の中ごろ、ジェッドはベッドフォードへ最後のお使いに行かされた。両軍のスパイがうようよしており、ジェッドが使い走りに出るのも危険な状況だからだ。ベッドフォードで役目を果たしたジェッドは、帰りはコンコードには行くなと忠告される。両軍がコンコードに向かっているというのだ。それを聞いたジェッドはコンコードへ向かい、遠くから戦いの様子を目撃する。銃声が止むと、あちこちから教会の鐘の音が聞こえた。鐘の音に込められたメッセージを悟ったジェッドは感動した。急いでボストンに戻ったジェッドは、マサチューセッツ中の教会が鐘を鳴らしたことを親方に伝えようと思った。ところが、店の中は暗く、ボックスは居なかった。台所いたホーヴェイが、自分がボストンで偽札を使ったせいでボックスは牢屋に入れられたとジェッドに説明した。ジェッドが持っている偽札の代金をホーヴェイが狙っていることに気付いたジェッドは、検問される前に隠したと嘘をついた。代金を取ってくると言って店を出たジェッドは、ホーヴェイが尾行してないことを確認してから店の裏庭に代金を埋めて隠した。翌朝、ボストン中の人々が戦争が始まったことを知った。そして革命軍を支持する人々がボストンを出て行き、逆にトーリーたちがボストンにやって来た。二週間後、ジェッドは隠していた代金の半分を牢番に賄賂として渡し、ボックス親方に面会を許された。残り半分のお金を受け取ったボックス親方は必ず牢屋を出るから、生き延びて待っていろとジェッドに言う。ジェッドは空き家の納屋で寝起きし、食べ物を探して町中をうろついていた。ある夜、ジェッドは革命軍の一員として働く少年ベンと再会し、自分も赤毛のキャプテンのために働いたことを告げた。ベンは半信半疑ながらも、ジェッドと再会を約束する。ジェッドは食べ物を恵んでもらおうと立ち寄った居酒屋シップス・マーメイドの女将マフェット夫人にボーイとして雇われる。寡婦のマフェット夫人は革命軍側だが、店を守るためにボストンに残ることにしたという。店には客としてイギリス兵が出入りし……。自由を求め、成長していく一人の少年の物語。
※原書初版1963年

樺(かば)の木の皮でビールを造っているところだった。鍋に樺の木の根っこと樹皮を入れ、それにメープルシロップを加え、リンゴの皮をいれてぐつぐつ煮込むのだ。
「あたしはこの樺のビールをかき回さなければならないから。」

ドラグーン:竜騎兵連隊
 

書名:メナハウス・ホテルの殺人
原題:Murder at the Mena House
作者:エリカ・ルース・ノイバウアー(アメリカ作家)
出版:創元推理文庫
内容:ジェーン・ヴンダリーは第一次世界大戦が終戦間近の1918年に夫のグラントが戦死し、22歳の若さで寡婦となった。それから8年、30歳になったジェーンは、裕福な叔母ミリセント・スタンリーの誘いに応じて、アメリカのボストンからエジプトに旅行する。1926年9月中旬、首都カイロ近郊のギザにある国際的な高級ホテル・メナハウスに到着すると、叔母はバーラウンジに直行して酒を飲みはじめた。祖国アメリカでは禁酒法のせいで本物の酒は飲めなくなっているのだ。付き添いで一緒に来たジェーンは、テーブルを離れてバーカウンターに向かった。そこで喉を潤していると、ハンサムな男性が英国上流階級のアクセントで声をかけてきた。銀行員だというレドヴァースは、エネルギッシュで行動的なタイプでとてもそうは見えない。ジェーンを再婚させたい叔母に、レドヴァースは自己紹介するよう勧められたという。再婚する気のないジェーンが受け流していると、レドヴァースが中座し、代わって現れた口髭の年配の紳士が挨拶してきた。英国の退役軍人だというジャスティス・ステイントン大佐は、娘のアンナを連れて見聞を広めるための旅をしているそうだ。流行のファッションを身に纏ったアンナは三人の青年に取り巻かれている。大佐はすぐに娘のもとに戻った。すると、レドヴァースが戻ってきてアンナとの会話を再開するが、いきなり横手からアンナが割り込んできた。そのうえアンナはわざとグラスを倒し、ジェーンの胸元をずぶ濡れにした。ジェーンがその場を去ろうとした時、白いリネンスーツを着た浅黒い肌の男が通りすがりにアンナの腕にぶつかった。そのはずみで落ちたアンナのバッグの中身を、ジェーンは拾う手伝いをする。お礼の一言もないアンナとレドヴァースに「おやすみ」を言い、ジェーンは人々の間をすりぬけた。白いスーツの男は姿を消していたが、何故アンナのバッグを故意にはたき落としたのだろうとジェーンは不可解に思った。部屋に戻る前にミリー叔母を探すと、彼女は二人の若い女性とテーブルを囲んでいた。翌日、ダイニングルームでジェーンが朝食を終えると、まだ眠っているだろうと思っていた叔母がやって来る。昨夜一緒に居た二人の女性を連れてきて、ジェーンに紹介する。リリアン・ヒューズとマリー・コリンズは20歳そこそこの英国女性で、叔母をゴルフに誘ったという。叔母がリリアンと腕を組んで去って行くのを、ジェーンは驚きの目で見送った。そこにレドヴァースが現われ、今夜一緒に飲もうと誘われる。夕食前、身支度をしていたジェーンは叔母に贈られたスカラベのブローチを紛失していることに気付く。叔母と一緒にバーラウンジで食前酒を飲みながら、ジェーンは二人の英国女性の話をもちだす。すると、ミリー叔母は夫の仕事の関係で、むかしロンドンで二年ほど暮らしたあいだにリリアンの父親と知り合ったという。その時のよしみで、リリアンの父親に娘の面倒を頼まれたと叔母は語った。そのとき、昨夜アンナにぶつかった男が現われ、彼を見た叔母の態度が変わった。ジェーンが知り合いかと尋ねたが、叔母は答えずにダイニングルームに向かった。給仕の案内を待ちながら二人がぎごちない沈黙を続けていると、レドヴァースがやってきて挨拶した。三人で一緒にテーブルにつくと、話題はレドヴァースと彼の子ども時代のことばかりになった。食事がすむと、余興が観られるというので他の客たちと一緒にテラスに出る。ステージのそばには楽団が待機しており、レドヴァースにエスコートされながらジェーンが眺めていると、ステイントン父娘が現れた。アンナは透けて見えるような薄いゴーズ(紗)の真紅のドレスをまとって注目の的になっている。このとき大佐とレドヴァースが互いに無視し、視線をそらしていることにジェーンは気付いた。ジェーンは奇妙に思い、興味をそそられた。アンナは父親から離れ、騒々しい若者たちが集まっているテーブル近づいていった。ジェーンはぽつんと一人でテーブルについている浅黒い肌の男に気付く。ジェーンは昨夜アンナにぶつかった男を目で示しながら、レドヴァースに誰なのかと訊くと「アモン・サマラ」だと教えてくれた。アンナを見つめながらグラスをかたむけているサマラは、大きなカフリンクを身に着けている。縁にぐるりと青い宝石をちりばめられた、金のカフリンクだ。レドヴァースは若い女性に聞かせられない評判の男だと、サマラについて口をつぐむ。ダンスフロアを眺めながら喋っていると、アンナがピンストライプのスーツを着た青年と抜け出していくのが見えた。しばらくすると眠くなったジェーンは、レドヴァースに部屋まで送ってもらい、一人でベッドに入った。早朝、ジェーンが廊下を歩いていると、後ろからステイントン大佐とホテルの従業員が急ぎ足でやって来る。娘を起こそうとしたが反応がないという。ホテルの従業員を手伝わせて捜し回ったが見つからず、あとは娘の部屋だけだが、まずは女性に入って見てもらいたいという。大佐が外聞をはばかる事態を懸念しているのだろうと考えたジェーンは引き受ける。最初に大佐がドアを叩き、次に従業員がマスターキーで解錠し、それからジェーンが部屋に入った。部屋の中は足の踏み場もないほど衣服が脱ぎ捨てられて散らかっていた。そして、暗いベッドルームで、ジェーンの鼻は鉄の臭いを嗅ぎとった。手探りで鎧戸を開けたジェーンは、朝陽を浴びて横たわるアンナの死体を見つけた。吐き気をもよおしたジェーンは片手で鼻を覆い、ベッドルームに散らばる多量の羽毛をけげんに思った。そしてジェーンは混乱したまま、ライティングデスクのルームキーを大佐に渡すつもりで手に取った。この状況を大佐に伝えなければならないことをジェーンはためらったあと、廊下に出て待っていた大佐に「撃たれて亡くなっています」と伝えた。大佐が部屋に入ると、従業員に警察とホテル・ドクターを呼ぶようにジェーンは指示した。ジェーンはキーをポケットにしまうと、廊下で援軍を待つ。大佐が部屋から出てくると、ジェーンは慰める。そこへドクターが走ってきて部屋に入った。ほどなくして警察が押しかけてきて、ジェーンは入れ替わり立ち替わり現れる警察官に繰り返し事情を説明しなければならなかった。その一方で聞き耳を立てたジェーンは、オーストラリア訛り丸出しのドクターが、カイロ警察の指揮官・ハマディ警部にアンナの死因は射殺だと報告するのを聞いた。ついに空腹で気力がなくなったジェーンは、刑事の許可を取ってダイニングルームに向かった。コーヒーとペストリーで胃袋を満たしたジェーンのところへ、ミリー叔母とレドヴァースがやってきた。ジェーンが経緯を説明すると、叔母は警察を嫌がり、ゴルフに出かけると言い出す。ジェーンが叔母の反応にショックを受けると、リリアンはセミプロになるために練習しているのだと言って叔母はゴルフ場に向かって去った。そこへハマディ警部が現れて座った。ジェーンは警部にレドヴァースを紹介したが、既に二人は知り合いのようだ。レドヴァースが同席したままで、ジェーンが今朝の出来事を供述すると、ハマディ警部はアンナのハンドバッグからジェーンの物が発見されたと言う。警部が取り出したのは、失くしたと思ったスカラベのブローチだ。驚いたジェーンは二日前にアンナがバッグを落とした時に拾う手伝いをして、その時に紛れ込んでしまったのだろうと述べた。レドヴァースも一部始終を見ていたと同意してくれたが、ハマディ警部は聞き流した。そして、ジェーンとアンナがレドヴァースをめぐって確執があったと警部は告発した。そのうえ今、ジェーンの部屋を警察が捜索しているという。パニックに駆られたジェーンが自分は銃の撃ち方も知らないと言っても、警部は取り合わず、ホテルに留まるように言い置いて去った。残されたジェーンとレドヴァースは他の容疑者について話し合う。ジェーンは警察に無実の罪をきせられそうになっていると考え、悲惨な結婚生活を思い出し、もう二度と踏みつけにされて泣き寝入りしないと決意する。用事のあるレドヴァースが出かけると、一人残されたジェーンのもとにサマラがやってきて挨拶する。ジェーンの手の甲にキスした男は「アモン・カナム・サマラ」と自己紹介した。サマラは給仕にアラビア語で言いつけると、自分の姉はエジプト王と結婚したとジェーンに語り出す。さらに自らを革命家と名乗って独演会めいた話を紡ぐ。サマラはガワーファ(グアヴァ)という地元のジュースをジェーンに勧めるとペストリーを食べだした。サマラを眺めていたジェーンは、彼がシャツの袖口にカフリンクをつけていないことに気付いた。サマラの目つきが不快に感じたジェーンは、嘘をついて会話を切り上げて部屋に戻る。自室の鍵を開けようとしたジェーンは、ポケットの中にアンナの部屋のキーが入っていることを思い出す。事件の容疑者であるジェーンがキーを持っていたら怪しまれるだろう。困ったジェーンは、廊下に置かれたシュロの鉢植の土の中にキーを押しこんだ。警察の捜索が終わった部屋を片づけて水着に着替えたジェーンは、ホテルのプールエリアに出かけた。そこでジェーンは新婚カップルと知り合う。ディアナとチャーリーのパークス夫妻はアメリカ人で、ヴォードヴィルの芸人だという。チャーリーは誰かを連想させるが、その誰かをジェーンは思い出せなかった。さらにジェーンは芸人がハニームーンで高級ホテルに滞在できるだけの金銭的余裕があるのだろうかと怪訝に思う。同国人同士楽しく談笑した後、殺人事件についての話になる。二人はアンナを見かけたことはあったが、知り合いではなかったようだ。夜、ベッドに入ったものの眠れなかったジェーンは、鉢植に隠したキーを使ってアンナの部屋を調べようと思い立つ。ジェーンは人目を忍んでアンナの部屋へ行き、レドヴァースと鉢合わせする。レドヴァースが自分と同じ目的でやって来たと気付いたジェーンは、一緒にアンナの部屋に入る。ベッドルームでレドヴァースが化粧台を調べている様子を眺めていたジェーンは、ソーイングキットの針と糸が放り出されているのに目を留める。メイドに言いつけずに裁縫なんてアンナらしくない。ジェーンはワードローブに近づいてドレスの内側を探る。盛りあがった箇所をへたくそな縫い目で綴じてある。縫いつけてある糸を引っぱると、ほどけた場所からイニシアルを彫りこんであるカフリンクが二個落ちてきた。イニシアルはDH。縁にはぐるっとサファイアが埋めこんである。ダンスパーティーの夜にサマラがつけていた物だとジェーンは気付いた。そのことをレドヴァースに説明し、翌朝のサマラがカフリンクをつけていなかったことも付け加える。レドヴァースが差し出したてのひらにカフリンクをのせると、アンナとサマラの関係についてジェーンは推理する。二人はさらに捜索を続けるが、これという発見がないまま夜が明け始めたので部屋を出た。自室のベッドに倒れ込んだジェーンは、レドヴァースがカフリンクを持って行ったことを思い出した。朝食の席でレドヴァースを見つけたジェーンは、カフリンクについて問い詰めた。レドヴァースはハマディ警部に渡したと言い、ジェーンの推測も伝えたという。そしてレドヴァースは「警察と協力して仕事をすることがある」とジェーンに告白した。ここに至って二人はレドヴァースが銀行員ではないことを認め合った。レドヴァースが警察から仕入れた情報によると、サマラには裕福な女性たちから金を巻き上げたとおぼしい嫌疑がかけられている。そしてアンナを射殺した銃の出所は、ホテル・ドクターであるウィリアムが所持していた物が数週間前に失くなっていたらしい。もともとウィリアムはオーストラリア軍の軍医で、その当時支給された銃だったそうだ。先の大戦でメナハウスがオーストラリア軍の病院になった時にウィリアムが働いており、軍が去った後も彼は残ってホテルに雇われたという。ドクターには阿片の習癖があるという噂らしい。レドヴァースは警察に任せるように言うが、ジェーンは信頼できないと答え、疑いを晴らすべく真犯人を見つけようと奔走する。しかし、第二の殺人が起き……。
※原書初版2020年
※作者は父親が警察官という家庭で育ち、陸軍で11年間、警察に2年間勤務したのち、ハイスクールで英語教師として1年間働いたあとで作家となる。
※小説の舞台となっているメナハウスは、ギザにある実在の老舗の高級ホテルで、現在も営業している。もともとは王の離宮だった。
※小説の時代設定は1926年で、当時のエジプトは第一次世界大戦勃発時の1914年に英国の保護国となり、22年に独立したばかりなので、キングス・イングリッシュではなくアメリカ英語でも、アラビア語ができなくても、現地の住人との意思の疎通は可能でした。

ミリー:ミリセントの愛称
レックス:レジナルドの愛称
スージー:スザンナの愛称
 

書名:賊徒(ぞくと)、暁に千里を奔(はし)る
作者:羽生飛鳥(はにゅうあすか)
出版:KADOKAWA
内容:平氏が権力を握り、次いで源氏が幕府を開いた時代、小殿と呼ばれる有名な大盗賊がいた。京では盗賊、西国では海賊、東国では山賊と悪逆の限りを尽くした伝説の盗賊の棟梁だった小殿が、改心して検非違使(けびいし)に自首した。本来は斬首となるところだが、自ら名乗り出たことで「戦で帰降(きこう=降伏)してきた者は成敗しない」決まりが当てはめられて処罰されなかった。その後の小殿は、さるお方の奉公人となった。建保三年(けんぽう:1215年)二月某日、老いて慎ましく暮らす小殿の家に、新年の宴で知り合った貴族・橘成季(たちばなのなりすえ)が訪ねてくる。説話集の編纂が夢だという成季は、仏師の運慶と年若い僧侶を連れてきており、小殿の話が聞きたいという。明王(みょうおう)像の参考に小殿を見に来たという運慶は、老いてなお美男の彼を盗賊に見えないと言い出す。それに対して、小殿はかつて稚児をしていたと答える。僧侶の寵愛を受ける者がいるだけに、稚児には美童が多い。やんごとなき方から成季が預かっており、素性を明かせないために「明けの明星」と呼ぶことになった僧侶は、小殿の生い立ちに興味を示す。武士の子だった小殿は、父亡きあと石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)の稚児となったが、受け継いだ所領を叔父に奪われた。そこで石清水八幡宮へ参拝にきた叔父を殺して出奔し、盗賊になったのだと小殿は語る。それを聞いた運慶は、子どもが人を殺せたか疑わしいと述べる。小殿はまだ少年で盗賊の下っ端だった頃にやり遂げた、最初の大仕事の話を始める。三十五年前、治承四年(じしょう:1180年)の晩春、十五歳の小殿は盗賊たちの酒宴で、貴族が持つ九粒の白珠(しらたま)の噂を聞く。数多の盗賊が盗もうとしては、警固が厳しくて追い払われてしまっているという。功名心に駆られた小殿は「己(おれ)ならば、上等な紙があれば、盗み取ることができます」と宣言した。そして、小殿は盗賊たちと賭けをする。翌日、小殿は経師(きょうじ:経文の表装をする職人)の家から、胡粉(ごふん)が塗られて光沢のある上等な紙を盗んだ。その次は稚児姿になり、白珠を持つ貴族と親しい寺の僧侶の使者のふりをして屋敷を訪ね、盗みの下見をした。そのうえ家司(けいし:貴族の屋敷の家政を担当する者)が世間話の最中に「寝殿の母屋の隣にある塗籠(ぬりごめ:納戸部屋)に大事な宝を置くとよい」と口を滑らせてくれたので、小殿は意気揚々と引き上げた。それから数日後、屋敷で宴が開かれた晩に、小殿は忍び込む。皆が南面の宴に夢中なおかげで、小殿は容易く天井裏によじ登れたのである。茅葺の屋根に小細工をしてから小殿は塗籠の中におり、蒔絵の小箱の中の白珠を見つけた。そのとき、妻戸が開いて屋敷の女房に見咎められてしまう。小殿は先日使いで来た稚児だと名乗り、片想いの女童(めのわらわ)に会いたくて忍び込んだものの間違えて外に出れなくなったと弁解する。この嘘を女房は信じたが、念のためにと身体検査をされる。女房はさらに小箱の蓋を開けて、白珠が盗まれていないか確認する。白珠が九粒そろっているのを見た女房は、塗籠から小殿を出て行かせたが、もう一度小殿が盗品を隠してないか調べてから彼を帰した。後日、五月雨が続く頃、白珠が盗まれたと都中で大評判となった。白珠の入っていた箱の中は、丸められた紙屑ばかりになっていたというが……。客人三人は不可能と思える盗みを成功させた手口の謎解きに挑む。鎌倉時代の重要人物たちが彩る、伝説の大盗賊をめぐる歴史推理小説。巻末で明かされる訳ありの僧侶「明けの明星」の正体とは?謎解きの形を取る五編の連作短編集。
※「小説 野生時代」2023年11月号「盗賊小殿の種明かし」を改題した「真珠盗」ほか全て書下ろし
※2024年初版
※13世紀前半の人・橘成季(たちばなのなりすえ)によって編纂された世俗説話集『古今著聞集(ここんちょもんじゅう:20巻30篇726話)』第12巻偸盗(ちゅうとう)第19・441段 「強盗の棟梁大殿(おおとの)小殿が事」に登場する小殿を主人公にした作品。

<収録作品>
●真珠盗
●顛倒(てんどう)→女童に頼まれて正倉院の薬草を盗むために警固の悪僧(あくそう=武装僧侶)に化けるが、悪僧の一人が殺されたので犯人を明らかにした話
●妖異瀬戸内海→瀬戸内海を航海中に仲間の海賊を次々に殺した犯人を明らかにした話
●汗牛充棟奇譚→関東の武士に売りつけるために、妻の協力で貴族の家から源氏物語全帖(じょう)を盗んだ話
●雪因果→父を殺し所領を横領した叔父を殺した後、捕縛されずに雪山から脱出した話

餅餤(べいだん:鶏肉や卵が挟まった餅)
海虎皮(らんこかわ:ラッコの毛皮)
持っていた紙燭(室内用の照明具の一種。松の木を棒状に削って先端に油をつけて燃えやすくした物)
甘葛煎(あまずらせん:甘味料の一種)
醬(ひしお:味噌と醤油の中間のような調味料)
雉(きじ)の脯(ほじし:干し肉)
 

書名:大宇宙の少年
原題:Have Space Suit - Will Travel
作者:R・A・ハインライン(アメリカ作家)
出版:創元SF文庫
内容:アメリカの田舎町センターヴィルで暮らす男子高校生のクリフォード・ラッセルことキップ。キップは月に行くことを夢見ていた。だが、宇宙ステーションと月基地に向け商業宇宙飛行が開始されたとはいえ、まだ莫大な旅行費が必要なご時世だ。資産家の御曹司ではないキップが宇宙に行くには、ずば抜けた技術か才能か幸運が必要であり、それは望みのない夢に思われた。ところがある日、地元紙に「月世界旅行無料ご招待!」というスカイウェイ石鹸会社主催の懸賞広告が掲載されたのだ。懸賞の応募規定は、石鹸の包み紙にキャッチコピーを添えて応募するというもの。キップはバイト先であるドラッグストアの店主の好意で大量の包み紙を入手し、五千七百八十二通もの標語を送った。コンテストは五月に締め切られ、六月になるとキップは高校を卒業した。そして七月になって結果が発表される。努力の甲斐あって、キップの書いた標語が一等に選ばれた。ところが、選ばれた標語には同文の応募が十一通あり、一等の景品である月旅行は消印の一番早かった女性の手に渡ってしまう。キップが手に入れたのは、中古の宇宙服だった。この宇宙服は宇宙ステーションの建造で実際に使われた本物だが、古くて傷んでいる。そこで夏休み中のキップは、自宅の納屋でおんぼろ宇宙服の整備を始める。宇宙服についてきた説明書と本から得た知識を頼りに、なんとか修理した宇宙服をキップは装着して、小川に飛び込んだり、原っぱを歩き回ったり、空想の母船と通信で会話したり、とさまざまな実験を繰り返す。そうやって夏の終わり頃には、宇宙服は宇宙空間での使用に耐える状態に復旧したが、キップは宇宙服を売却して大学に進もうと考える。処分する前の最後の散歩にキップが出かけると、宇宙服の無線に着陸誘導を求める女の子の声が入ってくる。訳が分からないまま応答すると、キップの頭上に宇宙船が現れ着陸する。更にもう一隻が着陸すると、先に着いた宇宙船から宇宙服を着た二人が飛び出してきた。キップの目の前で一人が倒れたので助けに駆け寄ると、その人物は人間(地球人)ではなかった。驚くキップは背後から殴られて意識を失った。ふと気が付くとキップは宇宙服を脱がされており、そばには十歳ほどの女の子が居て、自分たちは宇宙海賊に拉致され閉じ込められているという。最初は信じられなかったキップも、宇宙船のスキュー・フリップ・ターン・オーバー(瞬間反転航法)を体験したことで、本当に自分たちが宇宙海賊に誘拐されたのだと知る。無線で「ちびすけ」と自称していた女の子の本名は「パトリシア・ワイナント・ライスフェルド」で、彼女は月基地で攫われたあと「ママさん」と呼んでいる宇宙人と共に逃げていたところだったという。キップは宇宙海賊の手下である二人の地球人、瘦せた小男のティムと太ったジョックに担がれてコントロール・ルーム(操縦室)に運ばれた。其処にはワームフェイス(虫けら面)の宇宙人が居り、キップを尋問したあと檻に戻すように指示した。やがて宇宙船は月に到着し、宙賊たちは捕虜を残して出かけた。おちびさんとキップは知恵を出し合って監禁場所から出ると、脱出のために操縦室へ向かう。だが、捕虜が脱走できないように、宇宙船を操縦するための機能が持ち出されていた。仕方なく二人は四十マイル離れた場所に建つ月基地に逃走することに決め、奪われた宇宙服を取り返す。二人で逃避行に役立ちそうなものを物色していると、おちびさんが捕まっていた「ママさん」を見つけた。「ママさん」と呼ばれる宇宙人はキツネザルに似た外見をしており、歌うことで意思疎通し、傍に居る者に幸福感を与える。ママさん呼びに納得したキップだったが、ママさんのヴァキューム・ギア(真空装置)は壊されてしまっていた。ママさんを残して行けないというおちびさんに、キップは自分の宇宙服の中に入れば良いと提案する。中古品の宇宙服の最初の持ち主は太っていたらしく、胴まわりが大きかったのだ。ママさんを背負って宇宙服を着たキップは、次におちびさんの身支度を手伝ったが、彼女の宇宙服が観光客用のものであることに気付く。作業用に造られたキップの宇宙服とは造りが違うことに不安を抱くが、他に選択肢はないため宇宙船の外に出る。月基地から宇宙船まで誘拐された経験があるおちびさんの案内で、キップたちは月基地を目指す。ところが、キップの心配した通り、途中でおちびさんの宇宙服は空気が足りなくなる。そして、月基地を目前にしておちびさんが倒れる。そこで虫けら面たちに傍受される危険をおかして無線を使って助けを呼ぶと返事があった。だが、三人の側に停まったクローラー(月面車)から降りてきたのはティムとジョックで、三人は捕虜に逆戻りとなる。そのうえ虫けら面たちの宇宙船は月を離れ冥王星に移動する。二人と引き離されたキップは独房に入れられるが……。謎の宇宙船に誘拐され大銀河へ冒険の旅をする少年と少女
※原書初版1958年
※巻末の解説によると、原題は、1957年4月から63年まで放送されたTVドラマ『西部の男パラディン』(Have Gun - Will Travel:銃あり、御報参上)に由来する。本文中でも、主人公のバイト先に来た客が「新聞広告を出すんだよ、『宇宙服あり――ご報参上』ってな」とからかう場面がある。なお本書の邦題はこれまで『スターファイター』で刊行されていたが、2008年の復刊を機にタイトルを変更した。
※作者のロバート・A・ハイラインは、1907年にミズリー州で生まれ、1988年に没した。

コントロール・ルーム:操縦室
パイオニア・アウトポスト:開拓者の前線基地
リアル・タイム:実時間
エア・コンディション:空気調節

ティム:ティモシーの愛称
サム:サミュエルの愛称。
 

書名:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… 14
作者:山口悟
出版:一迅社文庫アイリス
内容:日本の女子高生だった「私」は、プレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢カタリナ・クラエスに転生する。友情エンドで破滅を回避したカタリナは、無事に魔法学園を卒業した。だが、就職した魔法省が『FORTUNE・LOVERⅡ』の舞台で、またしてもカタリナが悪役であることに気付く。どうにか破滅を乗り越えようするカタリナは、なぜか『闇の使い魔』のポチや『闇の契約の書』などの悪役アイテムを手に入れてしまう。次々と起こる事件を、カタリナは同僚や友人たちと解決していく。しかし、ヒロイン・マリアの家が襲撃される事件が起きた際、カタリナは闇の魔法を暴走させてしまった。幸いマリアたちは無事で、魔法省に保護された。そんなとき、ソルシエ王国の建国記念パーティーが催される。義弟のキースにエスコートされて出席したカタリナは、自分と同じように料理を沢山食べている女性に親近感を覚える。日本の着物のような衣装を着ている彼女は、どうやら隣国シャルマの人らしい。せっかくだからと挨拶したカタリナに、「辺境伯家のハル・カブラギ」だと自己紹介した彼女は兄と一緒に出席したという。カブラギ兄妹と雑談していたところへ、護衛を兼ねてマリアをエスコートするサイラス・ランチャスターがやってくる。サイラスは魔力・魔法研究室の部署長で、マリアの上司であり、カタリナとは趣味の畑仕事を一緒にする仲間だ。驚いたことに、サイラスとカブラギ兄妹は領地が隣り同士で幼馴染みだという。若い女性が苦手なサイラスは、男だと思っていたハルが女性だと知って動揺する。さらにサイラスが独身だと確認したハルがお嫁さんに立候補したことで、マリアに片想いしている彼は困惑する。翌日、魔法省に出勤したカタリナは、上司のラファエルと魔法の訓練をする。魔法を暴走させたことで闇の魔法を恐れるようになったカタリナに対して、ラファエルは自分の経験と禁書で調べた闇の魔法の歴史を語る。闇の魔法の始まりは人を助けるためのものだと、カタリナは前向きに考えられるようになった。午後、カタリナとマリアのところに事件の報せが届く。カタリナたちが入省後の配属先決めの試験の際、田舎で「動物が田畑を荒らしている」という依頼で遭遇した闇の使い魔ドラゴンの事件と同じような事態がサイラスの故郷で起きているという。光の魔法が使えるマリア、闇の魔法が使えるカタリナとソラ、女性二人の護衛としてサイラスとラファエル、心は女性のローラ先輩が事件解決のために派遣されることに決まった。特別な馬車と馬の特急便で移動していた一行だが、食事休憩で下車したときに、サイラス会いたさにハルが便乗していたことが露見する。今回のことは、ゲーム続編の攻略対象サイラスを巡るイベントではないかとカタリナは推測するが……。悪役令嬢の破滅回避ラブコメディ。
※『小説家になろう』サイトから書籍化したWeb小説。