書名:心心(Shin-Shin) 東京の星、上海の月
著者:石田衣良(いしだいら)
出版:角川書店
内容:高校を卒業して専門学校のエンターテインメント総合学園・声優科に進学した石森陽児(いしもりようじ)。陽児は小説・シナリオ科に進むつもりだったが、幼馴染みの手塚浩平に「演者の気持ちを学ぶのも役に立つ」と誘われて進路を変更したのだ。入学式で学園長が式辞を述べている時、遅刻した女子が入ってきて陽児の隣りに座った。人の心に直接届く不思議な声の持ち主の彼女は、中国上海からの留学生だという陽心心(ヤンシンシン)。彼女と浩平の他にも肩を壊した苦学生の元高校球児・藤子健太郎(ふじこけんたろう)、子役あがりの妹キャラの美女・大島遥(おおしまはるか)、ナレーターを目指す元キオスク女子・萩尾真琴(はぎおまこと)が同じクラスで、陽児と一緒の班のメンバーとして課題をこなすことになった。班のミーティングの帰り道、お調子者の浩平に付き合って心心を尾行した陽児は、彼女の住むアパートを見張り写真を撮る黒い車に気付く。後日、夜道を帰宅する心心をアパートに送り届けた浩平と陽児は、またしても黒い車を見つけた。今度は警告のために不審車に近づいてスマホで写真を撮った陽児たちだったが、車から降りた黒スーツの男は話がしたいと告げる。黒スーツの男に連れて行かれた先は高級マンションの最上階で、この部屋の持ち主は心心だという。心心の父親の秘書室長だと名のる男性・王徳希(ワンドウアシー)によると、彼女は世界第二位のスマートフォン製造会社『陽月電子(ヤンユエデイエンヅウ)』の創業者陽峰(ヤンファン)の一人娘だという。亡き母親の遺産を相続した心心自身も資産家だが、そのことがトラブルの種になっているらしい。王室長から心心の護衛を頼まれた陽児たちは引き受ける。そんなことがあったとは知らない心心は陽児と浩平と同じ書店でアルバイトをしていたが、ある日客として彼女の叔父夫婦がやって来た。そのことを陽児が王室長に報告すると、心心の叔父・陽岳(ヤンユエ)は会社の副社長で社長の陽峰とは会社の経営方針をめぐって派閥が対立しているという。陽岳はあの手この手で会社の株主でもある心心を懐柔しようとし、陽児たち班のメンバーにも彼が上海に設立するアニメスタジオと契約しないかと持ちかける。そのせいでメンバーの関係がぎくしゃくするようになる。そんなとき、九月の株主総会に出席するために上海に里帰りする心心に一緒に来てほしいと頼まれた陽児は……。
※本作は「小説 野生時代」2019年6月号~2021年5月号連載を加筆修正の上、単行本化したもの。2022年初版
「陽心心(ヤンシンシン)といいます。陽気の陽でヤン。心がふたつでシンシン。こちらは中国語だとシィンシィンとちいさなイがはいります。中国上海からやってきました」
上海中心(ジョンシン)、日本では上海タワーという
佳月(ジイアユエ)
奥さんの麗香(リイシャン)さん
乳母の葉玉雪(イエユーシュエ)
「八は日本では末広がりで縁起がいいというけれど、中国ではもっとすごいんだ。八は『発』に通じ、ものごとが始まり発展する、豊かになる、財産をつくるという意味になる。自動車のナンバーなんかでも8並びは何十万元もするんだよ」
「謝々(シェイシェイ)、ありがとうございます」
「お金をもってない農村出身の『素質(スーチー)』が悪い人だけじゃないかな」
スーチーという言葉は、その人の品性とか教養とか民度といったものを、すべて含んでいるらしい。中国人同士がお互いを評価するときの重要なキーワードであるようだ。
中国は面子と義理の国でもある。
「没問題(メイウェンテイ)!」
書名:英国古典推理小説集
編訳:佐々木徹
出版:岩波文庫
内容:本書の言う「古典」とは、十九世紀を中心に、黎明期から黄金期に至るまでの間を漠然と指している。英国最初の長篇推理小説と言える『ノッティング・ヒルの謎』を含む、古典的傑作八篇を収録(半数が本邦初訳)。読み進むにつれて推理小説という形式の洗練されていく過程が分かる。
<収録作品>
●『バーナビー・ラッジ』第一章より 1841年出版 チャールズ・ディケンズ著
原題:Barnaby Rudge
付録:エドガー・アラン・ポーによる書評
●有罪か無罪か 1849年初出 ウォーターズ著
原題:Guilty or Not Guilty
本作は1856年に出版された『Recollections of a Detective Police-Officer(ある警察官の回想)』に収録されている。
●七番の謎 1877年初出 ヘンリー・ウッド夫人著
原題:The Mystery at Number Seven
本作は『ジョニー・ラドロー』シリーズの中の一篇
●誰がゼビディーを殺したか 1880年初出 ウィルキー・コリンズ著
原題:Who Killed Zebedee?
本作は単行本『Little Novels(小小説集)』(1887年出版)に収録された際に『警察官と料理人』と改題されている。
●引き抜かれた短剣 1893年初出 キャサリン・ルイーザ・バーキス著
原題:Drawn Daggers
本作は、女性探偵ラヴデイ・ブルックを主人公にした短編集『The Experiences of Loveday Brooke, Lady Detective』(1894年出版)に収録されている。
「この描かれた短剣は――引き抜かれた短剣という意味も込めて(英語では「描かれた」と「引き抜かれた」の二つの意味がdrawnの一語で表現できる)――ネックレスの紛失とは切り離して、独立した問題として考えられるべきだ」
●イズリアル・ガウの名誉 1911年初出 G・K・チェスタトン著
原題:The Honour of Israel Gow
本作はブラウン神父シリーズ最初の短編集『The Innocence of Father Brown(ブラウン神父の童心)』(1911年出版)に収録された。初出時の題名は『奇妙な正義』。
●オターモゥル氏の手 1929年発表 トマス・バーク著
原題:The Hands of Mr. Ottermole
中国人の老人クォン・リーを語り手にしたシリーズの一篇。本作は「切り裂きジャック」による連続殺人事件を下敷きにしている。ただし、時代設定は二十世紀初頭。
●ノッティング・ヒルの謎 チャールズ・フィーリクス著
原題:The Notting Hill Mystery
付録:ボウルトン家関係系図/主要人物略年表
本作は1862年11月~1863年1月、週刊誌に8回にわたって連載された。
スクワイヤ:郷士
「ソルトウォーター!ありゃ品のない場所だよ!」
ソルトウォーターは、活気があって、健康にいい場所ではあった。
シーボード・テラスは、海沿いで、七軒の家が並んで一棟になっていた。
テラス:棟続きの集合住宅
スイングドア:ばね付きの自在扉。前後に開き,手を離すと自然に閉まる。ヒンジ(蝶番)を軸にドアパネルが前後両方向に回動開閉するドアのことを称する。
「どうぞご海容の上、不憫に思って下さい」
海容: 海のように広い寛容な心で、相手の過ちや 無礼 などを許すこと。主に 手紙文 で用いる。「ご」は名詞の前について、相手への敬意を表す接頭語です。
諺に言う、干し草の山の中で針を見つける
スレート屋根:厚さが5mm程度の薄い板状に加工された屋根材。 スレート屋根にはいくつかの種類があり、一般的な戸建て住宅で採用されているスレート屋根はセメントを主成分に加工されている。
ワタリガラス:西洋ではしばしば悪魔と連想づけられた
象牙の塔にこもる:現実から逃れて自らの理想を追い求めること
コクニー:イースト・エンドの住人
ガーティ:ガートルードの愛称
ケイティー:キャサリンの愛称
ウィリー:ウィリアムの愛称
ネリー:エレンの愛称
1854年8月13日
ほかの人たちがみなロンドンを去る時期
※当時の社交シーズンは初春に始まり、八月初旬には終わった
だれかがわたしのお墓の上を歩いているだけ:不意に身震いをした時に使う表現
召使は通常地下か屋根裏で寝る。
手早く済ませるために、許可証による結婚がしたいと言いましたが、私はお金がもったいないだけだと反対しました。彼は帰って来てから最初の日曜に結婚予告を出しました。
※式を挙げる前に教会で日曜ごとに三回予告が出て、異議の有無を尋ねることになっていた。然るべき役所で許可証をもらえば即日で片がつくが、手数料がかかった。
メスメリスム:十八世紀のドイツの医師フランツ・アントン・メスメルは生物の体内に存在する「動物磁気」あるいは「磁気流体」を操作して病気を治療することが可能である、という学説を発表した。動物磁気説とも言う。これがやがて患者の磁気を操作して睡眠状態に導く術に結びついていく。催眠療法の祖。
書名:無限の書
原題:Alif the Unseen
著者:G・ウィロー・ウィルソン(アメリカ作家)
出版:東京創元社
内容:砂漠に囲まれペルシャ湾に面した中東の専制国家『シティ』。油田開発によって貧富の差がひらき、不満をくすぶらせた若者たちはインターネットを利用し、政府は検閲を厳しくしている。23歳のハッカー青年・ハンドルネーム『アリフ』は、アラブ人の資産家とインド人の第二夫人との間に生まれた混血児。純粋なアラブ人でないため将来の展望が見えず鬱屈していたアリフは、9月のある日とつぜん恋人インティサルに別れを告げられた。インターネットで知り合い人目を忍んで密会していた貴族令嬢インティサルは、父親の決めた相手と婚約したことを告げ、アリフの名前を二度と見たくないと言い残して別れる。そこでアリフはインターネット上で彼女が自分に接触できないようにプログラムを組む。それから数日たった大砂嵐の吹き荒れた日、アリフは政府の検閲官『ハンド』にハッキングされてインティサルのために組んだプログラムを捕捉されてしまう。さらに『ハンド』の正体がインティサルの婚約者であることを知ったアリフは、自分の命の危機であり追われる身となったことを悟る。そのうえ、何故かインティサルは『アルフ・イェオム・ワ・イェオム(千一日物語)』の古書をアリフの幼馴染みの娘ダイナに託して、彼に届けさせてきた。心ならずも巻き込んでしまったダイナとともにアリフは保安局員から身を隠しつつ、古書の謎を解き明かさなければならない。アリフは友人に勧められてスーク(市場)の密売人『吸血鬼ヴィクラム』を頼ることにするが、なんと彼は本物のジン(幽精)だったのだ!ヴィクラム曰く存在するはずのないその古写本アルフ・イェオムには、解き明かすことさえできれば莫大なパワーが手にはいる究極の知識が秘められているらしい。ヴィクラムに案内されてアリフたちは異界に足を踏み入れ、本の秘密に近づいてゆく。サイバーパンクとアラビアンナイトが融合したSFファンタジー小説。
※2012年初版
※作者は、1982年ニュージャージー州生まれ、シアトル在住。ボストン大学卒業後、エジプト・カイロにわたってジャーナリストとして活躍。イスラム教に改宗し、現地で知り合ったエジプト人と結婚した。
※本書の原題はAlif the Unseen「見えざるものアリフ」である。このタイトルは、彼がコンピューターとハンドルネームの背後に身を隠し、「見えざるもの」として活動しつづけてきたことをあらわしている。
※千一日物語(アルフ・イエオム・ワ・イエオム):1704年、フランスでアントワーヌ・ガランが『千一夜物語』を紹介してまもなく、フランソワ・ペティ・ド・ラ・クロワという東洋学者が類似の物語集『千一日物語』を発表した。『千一夜物語』には原本とされる古いアラビア語写本が残っているが、『千一日物語』の原本はいまのところ発見されていない。現在では元原稿の存在そのものが疑問視され、ド・ラ・クロワがアラビア文学ブームに便乗して、自分で集めてきた民話や伝説をまとめたのではないかと考えられている。
※イスラム教もキリスト教と同じく旧約・新約の聖書を啓典としている。聖書よりもクルアーン(日本ではコーランと表記するが、本書ではアラビア語発音に近いクルアーンの表記を使用した)が第一の聖典とされるが、クルアーンにも聖書の記述が数多く採択されている。たとえば、イスラム教においても最初の人間はアダムである。神ははじめに光から天使をつくり、つぎに煙のない火(燃えさかる火という解釈もある)からジンをつくり、最後に土から人間をつくった。本書でジンたちが人間を、「アダムの子」「三番めに生まれたもの」などと呼ぶのは、そのためである。その一方で、ジンは「見えざるもの」「隠れたもの」などと呼ばれている。本書の原題で使われている単語unseenは、本来ならばジンに対して使われるべき形容詞である。
アリフ自身はアラビア・アルファベット最初の一文字であらわされるハンドルネームの背後に隠れて暮らしているため、いまでは壁のような一本の直線である〝アリフ″以外の自分というものが考えられなくなっている。
「アリフねえ。上から下までまっすぐに走らせた一本の線。最初の文字」
ジン(幽精)
シャヤティーン(悪霊)
イフリート(魔人)
マリード(魔神)
シーラ(女妖)
書名:家守神(いえもりがみ)3 金色の爪と七不思議
著者:おおぎやなぎちか
出版:フレーベル館
内容:語り手の「ぼく」こと拓(たく)は小学五年生。母親の再婚で引っ越した下町の古い家「佐伯家」には、家を百年守りつづける不思議なつくも神『家守神』が存在した。夏休みがあけて二学期が始まったある日、クラスメイトの前田こと美の机にフォークで引っかいたような傷ができていた。教室に最後まで残っていたという理由で妖怪オタクの雨宮風花(あまみやふうか)に疑いがかけられる。風花に片思いしている平井新之介(ひらいしんのすけ)が「学校の妖怪のしわざではないか?」と言い出し、クラスで学校の七不思議が話題になる。そして、拓たち三人は家守神の力を借りて七不思議の調査をすることに……。
ミニョンはフランス語でかわいいという意味。「フォルト」。強いという意味です。
書名:わたしがいどんだ戦い1940年
原題:The War I Finally Won
著者:キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー(アメリカ作家)
出版:評論社
内容:第二次世界大戦中、英国ケント州の海辺の村に学童疎開し、一人暮らしの女性スーザンと暮らしていた11歳の少女エイダと7歳の弟ジェイミーは、一年ぶりに再会した母親にロンドンへ連れ戻される。子供が欲しくなかったという母親が姉弟を迎えに来たのはお金のためだと聞かされたエイダは母親と決別する。その直後にドイツ軍の爆撃が始まり、エイダとジェイミーは怪我を負いながらも何とか防空壕に避難した。翌朝、爆撃で瓦礫の山となったアパートメントの前でスーザンと再会した二人は、ケント州の海辺の村に帰る。1940年9月中旬、エイダは生まれつきの障害である右足の内反足(ないはんそく)を治す外科手術を受けた。術後、エイダは軍需工場で働いていた母親が爆撃で死亡したことを知る。孤児院に行くことになると思い込んだエイダだが、スーザンが姉弟の後見人となり今までどおり一緒に暮らせると分かる。歩けるようになったエイダは退院し、爆撃されて全壊したスーザンの家の替わりにソールトン家の所有する猟場(りょうば)番人の家で三人の新しい生活が始まった。ソールトン家の厩舎係フレッドの仕事を手伝いながら乗馬を再開したエイダは、知り合いの訃報に心を痛めたりしながらも、戦時下の不自由な生活のなかで精いっぱい自分の出来ることを頑張る。戦時下の暮らしはだんだんと厳しくなり、ソールトンのお屋敷が政府に徴用されると、エイダ達はソールトン夫人と同居することになった。その翌日、ソールトン卿はスーザンが数学を教える生徒としてドイツから避難してきたユダヤ人少女ルースを連れてきて……。
※2017年出版
※1939年9月、第二次世界大戦中の大都市ロンドンからケント州に学童疎開が行われた。安全だと思われていたこの地域は、開戦翌年の夏から空中戦の舞台となり、状況は一転した。疎開してきた子供も地元の子供も、多くが別の地方に避難した。本書はこの事実に基づいて、物語が展開する。
※エイダたちが暮らす村は、ケント州の海辺の地域を想定した架空の村。
ジョン――ジョナサンをそう呼んでいました
書名:わたしがいどんだ戦い1939年
原題:The War That Saved My Life
著者:キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー(アメリカ作家)
出版:評論社
内容:10歳の少女エイダ・スミスは生まれつき足に障害があるせいで母親に疎まれ、ずっとロンドンのアパートメントの部屋に閉じ込められて育った。1939年夏、6歳の弟ジェイミーがもうすぐ小学校に入学し自分ひとりが取り残されると知ったエイダは、母親に内緒で歩く練習を始める。ところが戦争が始まり、9月になるとドイツ軍の爆撃から避難するための学童疎開が行われることを弟から教えられる。早朝、エイダは母親に無断で弟と一緒に家を抜け出し、疎開列車に乗り込む。列車はイギリス南東部ケント州の海辺の村に着き、姉弟はスーザン・スミスという独身女性の家で暮らすことになる。親友の死から立ち直れていないスーザン、ホームシックのジェイミー、学校にも通えず閉じ込められて育ったせいで無知なエイダ、三人のぎくしゃくとした共同生活が始まった。スーザンの所有するポニーを可愛がるようになったエイダは、徐々に新しい人間関係を築いていく。そして、エイダの足の障害に気付いたスーザンが医者の診察を受けさせて手術すれば治ると言われるが、それには母親の許可が必要で……。
※2015年出版
※1939年9月、第二次世界大戦中の大都市ロンドンからケント州に学童疎開が行われた。安全だと思われたいたこの地域は、開戦翌年の夏から空中戦の舞台となり、状況は一転した。疎開してきた子供も地元の子供も、多くが別の地方に避難した。本書はこの事実に基づいて、物語が展開する。
マーガレットという人がいて、みんなにマギーと呼ばれていた。
ジェイムズ、愛称はジェイミー
「お金持ちは、子どもを寄宿学校に送るものなのよ」
フィニッシングスクール:裕福な家庭の女子が社交界に出る準備のために通う学校
装蹄師(そうていし:馬の蹄の手入れをする人)
「ポニーの蹄は、人間の爪みたいなもんだ」短くなった蹄をこすってなめらかにした「のびたら切るもんなのさ」
書名:Gold Rush!(ゴールドラッシュ!) ぼくと相棒のすてきな冒険
原題:By The Great Horn Spoon!
著者:シド・フライシュマン(アメリカ作家)
出版:ポプラ社
内容:1849年1月27日、ボストン港から外輪式蒸気船レディ・ウィルマ号がゴールドラッシュにわくサンフランシスコをめざして出港した。船に積まれたじゃがいもの樽の中には、12歳の少年ジャック・フラッグと執事のプレイズワージィが隠れていた。旅費を盗まれて仕方なく密航者となった二人は、スウェイン船長に名乗り出て事情を話し、水夫として働くことになる。プレイズワージィが一計を案じて泥棒から金を取り戻し、二人は水夫から船客になる。船はウミガラス号とホーン岬まわりの競走をしながら南アメリカ大陸をぐるっと回る長い船旅をして、五か月後に金鉱ほりたちが集まる西部の町サンフランシスコに到着した。ジャックは両親の死後、自分と妹たちを育ててくれたアラベラおばさまのために一年以内にお金を手に入れる必要があり、ボストンへ帰る日数を計算すると二か月以内に金鉱を掘り当てなければならない。果たしてジャックと相棒プレイズワージィはひと山当てることが出来るのか?
※1963年初版
※ゴールドラッシュは、1848年にカリフォルニアで砂金が見つかった事から始まった。当時は大陸を横断する鉄道もなかった時代である。ほろ馬車で道なき山や宿屋も町もない砂漠をこえるか、船で南アメリカ大陸をぐるっとまわるくらいしか、カリフォルニアへ行く方法はなかった。
執事というのは、大きなやしきで、たくさんの召使いたちの仕事をまとめる監督のような人だ。
大きな屋敷や、身分の高い人の家で、家政や事務を一手に引きうける。使用人がたくさんいるときには、その指揮、指導をする。いってみれば、使用人頭、といった感じで、ご主人様のために心をつくすというのが基本。
水夫がランプに鯨油(げいゆ)を足している。鯨油ランプ
プレイズワージィ:「すばらしい」という意味
「砂金」というと、まるで砂のような金だと思う人が多い。しかしそうではなくて、どちらかというと「粒金:つぶきん」といったほうがいい。米粒くらいの大きさのものから、小石くらいの大きさのものまで、いろいろだ。
ノミ取りのわなのしかけかた。暗くなったら洗面器にせっけん水を入れ、テントのなかの地面にろうそくを立ててそのそばにおいておくのだ。
「ろうそくの火はノミをおびきよせるんだ」
書名:帰命寺横丁(きみょうじよこちょう)の夏
著者:柏葉幸子
出版:講談社
内容:小学五年生のカズこと佐田和弘(さだかずひろ)は怖がりだ。なのに、怖いもの見たさでテレビのホラー特集を見てしまった。そして夜明け前にトイレに行きたくて目が覚め、仏間から出てくる女の子の幽霊を目撃する。しかし、家族はテレビを見たせいだろうと言って信じてくれない。幽霊騒動があった日の学校の授業で古い町名(ちょうめい)調べをしていると、自分の家の建つ辺りが「帰命寺横丁」と呼ばれていたことが分かり、昔は墓地だったのではないか?とカズは不安になる。そのうえ家で見た女の子の幽霊がクラスメイトになっている事を発見する。しかし、周囲の皆はその女の子を「信夫(しのぶ)あかり」と呼び、昔から知ってる幼馴染みだと言うのだ。不審に思ったカズは下校時にあかりを尾行すると、帰宅したあかりを出迎えた母親は透明人間だった。しかも、透明に見えるのはカズだけで、近所の人々には普通の姿に見えるようだ。納得できないまま夏休みを迎えたカズは、母親に自由研究は旧町名調べをするように勧められる。そして昔のご近所さんだという水上(みなかみ)のおばあさんを訪問するが、何故か町名の由来ではなく「死人が生き返る」話ばかり語る。さらに、隆盛寺(りゅうせいじ)の和尚さん、町会長さんなどと続けて話を聞くことになるが、やはり帰命寺の由来については教えてくれない。だが、年寄りたちの奇妙な言動から、カズは自分の家こそ帰命寺なのではないか?と気付く。本家筋の順一おじさんにメールで問い合わせると、『まわり本尊を信仰していた人々が住んでいたから帰命寺横丁と呼ばれていたこと。帰命寺様に祈れば生き返ると言われていたこと。帰命寺のご本尊は今は佐田家にあること』を教えてくれた。ところが、そのご本尊が盗まれてしまった。生き返ったあかりはどうなるのか?
※作中作『月は左にある』→あらすじ:主人公の『私』ことアディは九歳の女の子。アディは売られるために、父親と兄妹達とともに都へ向かう。アディの家は旧王朝の墓守だったが、今では墓泥棒をして暮らし、その財宝も尽きたために三兄妹は売られることになったのだ。アディは都で「石の鳥」と名乗る魔女に買われ、湖の中に建つ屋敷で暮らすことになった。そして、魔女に命じられ、毎日湖に潜って真珠を探す。大晦日、魔女が外出して一人残されたアディは、普段は彼女が出入りできない南側の屋敷を探検する。屋敷の南側の地下には牢獄があり、閉じ込められている男女が……。
書名:犬のバルボッシュ パスカレ少年の物語
原題:Le Chien Barboche
著者:アンリ・ボスコ(フランス作家)
出版:福音館文庫
内容:夏休みが残り二週間になったある朝、十歳の少年パスカレはマルチーヌ伯母さんに連れられて旅に出た。夢を解き明かす『夢の鍵』という本を持ち、二人は伯母さんの故郷ピエルーレ村へと向かう。乗合馬車にゆられて汽車の駅で降りたものの、路線が廃止されていたため街道を歩くことになり、二人は野宿をしながら、親戚の住む山村ピエルーレを目指す。その二人のあとを追って、ゆく先々で姿を現す愛犬バルボッシュ。
※この作品は、最初1957年に『Barboche(バルボッシュ)』という題名で出版され、1966年に挿絵入り新版が出されたときから、題名が『犬のバルボッシュ』に変更された。少年パスカレを主人公とした少年小説五篇のうち、これは『少年と川』(1945年)、『島の狐』(1956年)に続く三冊目にあたるが、これらの少年小説はそれぞれに独立して読める。
※作者は1888年に南フランスのアヴィニョンで生まれた。グルノーブルとフィレンツェの大学で学んだ後、フランス国内、アルジェリア、セルビア、イタリア、モロッコと、主として外国の高等中学校で33年間の教員生活を送り、晩年に南仏に戻った。
カラク:ヨーロッパを主に各地に散財し、移動生活を送る少数民族。
小さな焜炉(こんろ)に火をつけて、粉をひとつまみ投げ入れた。すると、青っぽい煙が、うずまきになってたちのぼり、
「サンダラカ樹脂(やに)だよ」
「空気がとてもいいにおいになるんだよ」
「サンダラカの煙がたっているあいだは、何の心配もなしに眠っていられるってね。この香りが、魂をまもってくれるのさ」