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私的備忘録

書名:サリー・ロックハートの冒険1 マハラジャのルビー
原題:The Ruby in the Smoke
著者:フィリップ・プルマン(イギリス作家)
出版:東京創元社
内容:サリー・ロックハートは16歳。15年前のインド大反乱で母親を亡くし、退役軍人の父親に育てられた。サリーは同時代の深窓の令嬢と違って射撃の訓練を受けたり、乗馬が得意な活発な娘だ。サリーの父親は極東にある会社の代理人からの報告書に矛盾があるのを見つけ、シンガポールへ調査に出かけたのだが、乗っていた船が南シナ海に沈み死亡した。それから数カ月後の1872年10月、遠縁のミセス・リーズの家で寄宿しているサリーは謎めいた警告の手紙を受け取った。サリーはロンドン金融街にある父が生前経営していた海運会社に出かけ、父の共同経営者だったセルビー氏に面会しようとするが留守だったため、代わりに取締役のヒッグス氏に会った。ところが、サリーが手紙に書かれていた『七つの祝福』という言葉を口にした途端、ヒッグス氏は倒れて死んでしまった。話を盗み聞きしていた給仕の少年ジム・テイラーは、サリーに助言し協力を申し出る。ヒッグス氏の検屍審問に出席したサリーは、新聞記事を読んだというマーチバンクス少佐からの手紙を受け取る。父の友人だという少佐の姓は謎の手紙に書かれていた名前と一致する。サリーがケント州スウォルネスに住む少佐を訪ねると、彼はサリーの敵だというミセス・ホランドを警戒しながら手記を手渡す。帰り道、サリーは老女に跡を付けられていることに気付き、海岸で写真を撮っていた青年フレデリック・ガーランドに助けてもらう。汽車のコンパートメントで手記を開いたサリーは、亡父と少佐の赴任先であるインド北部アウドのアグラプールのマハラジャが所有していたルビーについての記述を読み始める。だが、コンパートメントに男の乗客が入ってきたせいで読み終えることが出来ずに中断され、サリーはいつのまにか眠ってしまう。そして、サリーが目を覚ますと手記は男に盗まれてしまっていた。サリーの手元に残されたのは、座席の下に落ちていた数枚の紙だけ。さらにサリーを嫌うミセス・リーズのメイドが手引きした事で、わずかな手がかりとして残された紙すらもミセス・ホランドの手先に盗まれてしまう。もう此処にはいられないと家を出たサリーは、老女から匿ってくれた芸術写真家フレデリックの店を訪ねた。店ではフレデリックと妹ローザが店の帳簿の事でケンカしており、サリーは手伝いを申し出る。そして、サリーの事情を知った兄妹は余っている部屋に下宿するように勧め……。ヴィクトリア朝ロンドンを舞台に、貧民街の悪党ども、阿片、マハラジャのルビー、南シナ海の海賊がからむ事件に巻き込まれたサリーの波乱万丈の冒険物語。
※1985年初版

ヒグシー:ヒッグスの略称
ミセス・リーズはサリーというのは召使い階級の名前だといって、その名前を使うのを拒否した

ハングマンズ・ウォーフほど陰惨な場所はない。そこがウォーフ(埠頭)としてにぎわっていた時代は過ぎてしまったが、名前だけは残っている。ハングマンズ・ウォーフ(首吊りの埠頭)

「あのひと、ほんとうにトレンブラーって名前なの?」
「彼の前の仲間が彼のことを〝びびり屋(トレンブラー)″と呼んでいたんだって」

フレッド:フレデリックの愛称
ニッキー:ニコラスの愛称
 

書名:まぼろしの薬売り
著者:楠章子(くすのきあきこ)
出版:あかね書房
内容:明治の初め、天野時雨(あまのしぐれ)という美しい薬売りがいた。時雨は弟子である小雨(こさめ)という少年を連れ、都会から遠く離れた土地を旅して薬を売り歩いていた。二人が旅の中で出会った人々と不思議な病……。大和国の小さな村にある椿屋敷の娘コウは狐憑きのような症状で皆が心配していたが……『椿屋敷の娘』。時雨と小雨の生い立ちと二人の出会いの話『なみだ病の生き残り』。訪れた村でバカの妹といじめられている女の子ハナを助けた小雨。二人はハナの家に泊めてもらうが……『バカ吉の薬』。山あいの小さな村で出会った盲目の少女リン。村の伝承では土もこという獣の目玉を食べれば目が治ると言うが……『土もこの目玉』。連作短編集。
 

書名:葉っぱの地図
原題:The Map of Leaves
著者:ヤロー・タウンゼンド(イギリス作家)
出版:小学館
内容:十二歳の少女オーラ・カーソンは植物と話せる。オーラの住む小屋は野いばら村のはずれにあり、オーラは治療師だった母親が死んだ後はずっと一人暮らしだ。九月最初の日、愛馬キャップの蹄の炎症を治す薬を作るためにオーラが庭の薬草を摘んでいると、葉っぱに黒い点々があることに気付く。オーラが草木の病気に不安になっていると、イドリス・ロメロが訪ねてきた。イドリスは水運の仕事を職業とする「ブルーコート」の父親をもつ少年だ。イドリスは兄のキャスターが病気の原因を知っていると言い、自分たちの住む川辺の小屋にオーラを連れて行く。だが、キャスターは熱病でうなされており「黒い川」と繰り返すだけだった。イドリスは兄の治療をオーラに頼むが、治療薬の作り方を知らないからと断って帰宅する。翌朝、村の広場に出かけたオーラは、ハインド屋敷の当主で村の監督官イニショウエン・アトラスが病気の流行を理由に市場の閉鎖を宣言するところを目撃する。アトラスが病気は植物から生まれたと言い出し、ブルーコートたちに草木を刈り取り焼き払わせる。そのうえ、オーラの小屋までやってきて庭を荒らし、馬を連れ去ってしまう。庭を守り愛馬を取り返すためにも病の治療法を探そうと母親の手帳を見返していたオーラは、地図に書き込まれた印に気付く。印の場所であるビードロの町へ向かうために、ブルーコートの川船にオーラは密航する。しかし、乗り込んだ船には既に先客の密航者であるイドリスがいた。イドリスは兄を救うために病の原因を探ろうと、キャスターが仕事をしていたという川の上流へ行こうとしていたのだ。ブルーコートたちが野営地で休憩する際に、二人は船を奪った。ところが、アトラスの姪アリアナ・クロウも一緒に付いてきてしまい……。
※2022年初版

「この病気をなんとよんでるか知ってるだろう。マパフォグリア。『葉っぱの地図』って意味だ」

セージ:葉を湯にひたし、蒸気でのどの痛みをやわらげる。
ニガヨモギ:動物についた寄生虫を駆除する。とくに細長い種類の虫によく効く。汁をインクに混ぜておくと、ネズミが手紙や手帳を食べてしまうのをふせぐ。
オーク:樹皮は皮なめしや糸の染料に。樹液はインクに。
デビルズ・ロープ:悪魔のロープという意味。麻酔薬として使われることもあるが、矢の先にぬる毒として使われることが多い。猛毒。血管に入ると死の危険がある。
ガマ:根はくだいて小麦粉のかわりに。また、しっぷにしてやけどや傷の手当てに。繊維は織物に。穂はまくらのわたや、ろうそくの芯に。
ペニーロイヤルミント:葉をお茶にすると百日ぜきに効く。布で包んでベッドに置くと、ダニやノミがいなくなる。
トモシリソウ:むかし、葉は壊血病の治療に使われていた。船旅には欠かせない植物。
イラクサ:葉はお茶に、繊維はがんじょうで、楽器の弦や、ロープや、魚とりの網になる。

書名:目で見ることばで話をさせて
原題:Show Me a Sign
著者:アン・クレア・レゾット(アメリカ作家)
出版:岩波書店
内容:感性豊かな11歳の少女メアリー・ランバートは、物語を作るの好きだ。春に馬車の事故で兄を亡くして以来、メアリーと母親の関係はぎくしゃくしている。メアリーの生まれ育ったチルマークは、ボストンの南にあるマーサズ・ヴィンヤード島の町で、白人の入植者と先住民族ワンパノアグ族と自由黒人が暮らし、誰もが手話で会話することが出来る。1804年11月、アンドリュー・ノーブルという科学者が島を訪れ、島の人間がろう者になった原因をつきとめたいと語った。アンドリューは耳が聞こえず話ができない『ろうあ者』は能力が低いと考え、価値がない人間だと言う。そして、ろう者であるメアリーや父親に対して失礼な態度をとる。メアリーはアンドリューを警戒して見張っていたが、ある早朝に彼に無理矢理さらわれてしまう。メアリーは船室に閉じ込められると、アンドリューの生きた標本としてボストンに連れて行かれ……。
※2020年初版
※著者はアメリカ手話と口話でコミュニケーションする、ろう者。
※1640年~1800年代後半まで、マーサズ・ヴィンヤード島にあるチルマークでは遺伝性難聴が一般的でした。一時はチルマークに住む二十五人のうち一人に、生まれつきの難聴障害があったといわれている。アメリカ国内全体では六千人に一人の割合に対し、島のスクィブノケットという地区では、四人のうち一人に聴覚障害があった。孤立した地域での遺伝性難聴は珍しいことではない。このようなコミュニティでは、独自の手話が作られる。これは「村落手話」(village sign language)と呼ばれる。ランバート家やスキフ家、ティルトン家などの名が通った一族が、イギリスのケント州、特にウィールドと呼ばれる地域から手話をもたらした。持ちこまれた手話は、古ケント手話(OKSL)と考えられている。マーサズ・ヴィンヤード手話(MVSL)は、最後の使い手であったケイティ・ウエストが1952年に亡くなっている。
※本書は主人公メアリー・エリザベス・ランバートによる自伝という形式をとっているが、物語自体はフィクションである。しかし、メアリーの祖先(という設定)であるジョナサン・ランバートという人物は実在している。ジョナサンはイギリスからアメリカにやってきて、1692年に島へ入植したろう者である。

「イギリスのケント州に、ウィールドという場所」
「ウィールドというのは『森林』という意味だ」

「ロウソクを作ったことある?」
「羊の脂を使うのよね。脂を温めてとかしてから型に流しこむの」
「うちはスパーム・オイルを使ってる。すごくいいロウソクができるんだ」
ロウソクを作る最新の方法だけれど、マッコウクジラの頭からとれるスパーム・オイルはふつうの家庭はもちろん捕鯨船の乗組員でも、たやすく手に入るものじゃない。

岩に含まれる緑色の蛇紋石(じゃもんせき)を彫ったものだ。蛇紋石というのは蛇のような模様に見えることからついた名前。
詩が刻印された金のポージー・リング:【Posy Ring】 詩の指輪の意味で、 短い詩や愛の言葉やメッセージをリングの表面や内側に刻んだ指輪。1200~1500年頃から流行し贈り物として人気。
 

書名:サクソンの司教冠(ミトラ)
原題:Shroud for The Archbishop
著者:ピーター・トレメイン(イギリス作家)
出版:創元推理文庫
内容:664年の夏も盛りを過ぎた頃、アイルランドの修道女フィデルマは教皇のお膝元ローマにいた。彼女の所属するキルデアの修道院の『宗規』に、教皇の認可と祝福をいただくためだ。幸い、ウィトビアの殺人事件を共に解決したサクソン人修道士エイダルフが随行員として加わっている、カンタベリー大司教指名者ウィガードの一行と同行することができた。ところが、教皇の賓客としてラテラーノ宮殿に滞在していたウィガードが絞殺され、教皇への献上品も盗まれてしまった。宮殿衛兵が殺人犯として逮捕した修道士はアイルランド人らしい。場合によってはアイルランドとサクソンの争いが再燃しかねないこの事態を懸念した教皇の伝奏官ゲラシウス司教は、フィデルマとエイダルフを事件捜査の担当に指名する。衛兵隊の小隊長リキニウスをしたがえて調査を始めたフィデルマたちのもとへ、アイルランド人修道士が逃亡したという知らせが届き……。
※1995年初版
※本書は『修道女フィデルマ・シリーズ』の長編第2作になる。
※著者の本名は「ピーター・ベレスフォード・エリス」。有名なケルト学者。
※ウィトビアの殺人事件:前作『死をもちて赦されん』で起きた。664年ウィトビアの教会会議が開かれた修道院においてキルデアの修道院長エイターンが殺害され、フィデルマとエイダルフが力を合わせて解決した。会議が終わって帰国しようとしていたフィデルマに、大司教オルトーンからの指示が届いたことで今作に続く。

矩形(くけい:それぞれの角が直角である四辺形。ふつうは正方形を除く。 長方形。 短冊形。 さしがた。)
憫笑(びんしょう:あわれんで笑うこと。また、その笑い。)
黙(もだ)したまま
黙(もだ)す:1口をつぐむ。だまる。2そのままにしてかまわないでおく。無視する。
我関(われかん)せず焉(えん)とばかりに
我関せず焉:「焉」は漢文で断定の意を表す助辞。自分には関係がない。超然としているようすをいう。その物事にはまったく関心がない。
叱声(しっせい)を浴びせた
嫉視(しっし:ねたみ憎む気持ちで見ること。)
 

書名:ぼくはこうして生き残った7 ナチスとの戦い
原題:I Survived #9: The Nazi invasion, 1944
著者:ローレン・ターシス(アメリカ作家)
出版:メディアファクトリー:株式会社KADОKAWA
内容:第二次世界大戦が始まってから、ドイツ・ナチス軍はどんどん勢力を伸ばしていった。同時に、ユダヤ人の迫害が進んでいた。ポーランド東部の町エスティースにもナチスが進軍してきたため、ユダヤ人の店は破壊され、住居を追われてゲットーに強制移住させられた。1944年8月、11歳のユダヤ人少年マックスと9歳の妹ジーナは飢え死にしそうになっていた。すでに母親を亡くしていたうえに、二人の父親は逮捕されてしまい、食べ物と交換できる品物も尽きていた。二人はゲットーを囲む鉄条網の向こうにラズベリーのしげみを見つけ、マックスは実を採るために禁止されている外に出た。だが、すぐにナチスの兵士に見つかりマックスは連行されてしまう。連行される兄の後を追ったジーナも兵士に見つかる。妹が射殺されそうになったところを体当たりで阻止したマックスは、互いに手を取り合い兄妹で逃げ出した。小麦畑に隠れたところで力尽きて眠ってしまった兄妹は、日が暮れた後におじいさんに起こされた。農場主であるおじいさんが二人を納屋に匿ってくれたところへ、大勢のナチスの兵士がやってくる。軍事物資を積んだ列車を爆破したパルチザンを探しているらしい。おじいさんが上手く誘導してくれたおかげで兵士たちは去ってゆき、隠れ場所から出てきたマックスとジーナは、納屋の別の場所に潜んでいた三人のパルチザンに出会う。パルチザンたちの一人は兄妹の父親の妹であるハンナおばさんだった。ハンナおばさんとの再会を喜んだ二人はパルチザンと一緒に彼らの基地であるロダの森の隠れ家へ向かうが、上空にナチスの爆撃機が現われて森が焼かれ……。
※2014年初版
※パルチザン:一般民衆に組織された非正規軍。
※ゲットー:強制隔離居住区
 

書名:世界収集家
原題:Der Weltensammler
著者:イリヤ・トロヤノフ
出版:早川書房
内容:大英帝国の軍人リチャード・フランシス・バートン(1821~1890年)。本書は士官、領事、探検家、翻訳家など、数え切れない顔を持っていたバートンの、インド駐在、メッカ巡礼、アフリカ内陸への旅、という三つの冒険が、さまざまな視点で事実と虚構を織り交ぜて描かれ、複数の人物による多彩な語りによって万華鏡のような物語になっている。第一部「英国領インド」では、東インド会社の士官として二十一歳でインドに赴任したバートンの七年間のインド生活が、バートン本人の視点と、召使ナウカラムの回想とで描き出される。バートンがインドを去った後、ナウカラムは新しい就職先を求めて、推薦書を書いてもらうために代筆屋を訪れた。そしてラヒヤ(公認書記)に促されるままに、バートンに仕えた生活を振り返る。ナウカラムの語る数々のエピソードに興味をそそられたラヒヤは話の続きを催促し、徐々に独自の物語を創作し始める。第二部「アラビア」では、三十二歳のバートンがインド人イスラム教徒に変装して、メッカ巡礼をやり遂げるまでが描かれる。帰国後、バートンがイギリスで出版した巡礼記が聖地メッカのシャリフ、イスラム法官カーディー、メッカの支配者であるオスマントルコ総督の目に触れる。三人は会談して、バートンの著書に登場する人物たちに尋問しながら、バートンのメッカ巡礼の真の目的を明らかにしようとする。バートン視点でのリアルタイムの巡礼の様子と、尋問の状況が交互に描き出されている。第三部「東アフリカ」では、三十六歳のバートンがイギリス人探検家ジョン・ハニング・スピークとともに「大きな湖」とナイル川の源を探す旅に出る。ザンジバル島からバガモヨを経てタンガニーカ湖まで、キャラバンを組んでの過酷な道のり。道案内を務めたのは東アフリカ出身の解放奴隷シディ・ムバラク・ボンベイ。バートン視点でのリアルタイムの探検の様子と、年老いて妻とともに幸せに暮らすボンベイが友人たちに披露する思い出ば話とが交互に語られる。
※2006年刊行
※著者は1965年ブルガリアのソフィアに生まれ、1971年に政治亡命した両親とともにドイツに移住。翌年、父の仕事の都合でケニアに移った。さらに学校教育の途中でドイツに戻って寄宿学校に入った。ミュンヘン大学を卒業後、1989年にアフリカ文学専門の出版社を興す。

ディック:リチャードの愛称
 

書名:ぼくはこうして生き残った5 火山の大噴火
原題:I Survived #10: The Destruction of Pompeii, AD 79
著者:ローレン・ターシス(アメリカ作家)
出版:メディアファクトリー:株式会社KADОKAWA
内容:西暦79年8月23日午後、ローマ帝国・ポンペイの町の大通りを、11歳の少年奴隷マーカスは主人フェストゥスの汚れた洗濯物が詰まっている大きな袋を抱えて歩いていた。そのとき地面が揺れ、大理石像は倒れて壊れ、店の商品も地面を転がった。こうした地面の揺れは何週間も前から時々起こっていたが、人々は「怪物の機嫌が悪いだけ」と気にしていない。ふと通りに座り込んでいるみすぼらしい老婆に気が付いたマーカスは、先ほどの地震のどさくさに紛れて拾ったリンゴを渡す。すると老婆は「まもなく、この世界は、焼きつくされるであろう!」と予言をささやいて消えた。驚いたマーカスは、自然科学の知識に詳しかった父親ターターのことを思い出す。マーカスの父親はゲルマニア生まれの奴隷で、首都ローマでリヌス・セリウスという科学者に仕えていた。しかし、リヌスが亡くなると奴隷の親子を相続した甥のフェストゥスは、ターターをどこかへ売り飛ばし、マーカスはこの町ポンペイへ連れてこられたのだ。過去を振り返っていたマーカスの耳に、剣闘士のパレードの騒ぎが聞こえた。我に返ったマーカスが目にしたのは、パレードの最後尾の剣闘士として歩いている父親の姿だった。マーカスは父親を助けようと知恵を絞り、変装して盗んだ蛇のコブラを興行師に投げつける。さらに運良くまたしても地震による騒ぎが起こったため、親子は馬に乗って町を駆け去りベスビオ山に入る。夜明け頃、息苦しさにうなされていたマーカスは父親に起こされた。地中から放出された二酸化硫黄の所為で親子は死ぬところだったのだ。24日の朝、マーカスは父親に連れられてベスビオ山の頂上へ登り、噴火の兆候を目の当たりにする。二人はポンペイの人々に危険を知らせるために町へ引き返すのだが……。
※2014年初版
 

書名:幽霊の恋人たち サマーズ・エンド
原題:Summer's End --- Stories of Ghostly Lovers
著者:アン・ローレンス(イギリス作家)
出版:偕成社
内容:夏の終わりの九月、宿屋オーク荘の娘ベッキー・ボンドは村にやってきた流れ者の男レイノルズに声をかけられた。レイノルズはベッキーの家で働くことになり、離れの二階の小部屋に住むことになる。長女ベッキー・次女リジー・三女ジェニーの三姉妹は離れを雨の日の遊び場にしており、それを知ったレイノルズは家賃としてお話を語ることにした。リンゴの収穫の合間に語られたのは、自立心の強い少女プリスが大奥様の幽霊が出るお屋敷に奉公するお話(『こわいもの知らずの少女』)。ハロウィンの夜に炉端で語られたのは、妖精女王に仕える若者に恋したスコットランド貴族の娘のお話(『タム・リン』)。クリスマス・イブにお茶を飲みながら聞いたのは、不思議なお屋敷で一年間奉公した少女のお話(『チェリー』)。クリスマス・ツリーを眺めながら語られたのは、死んだ婚約者の幽霊に会うため墓地に通い続ける娘のお話(『ウィリアムの幽霊』)。春の兆しを感じる二月に語られたのは、悪い噂のある森に住む猟場の番人と結婚した娘のお話(『野うさぎと森の番人』『泉をまもるもの』)。三月の風の強い日に語られたのは、失恋した青年が白い服の娘に一週間だけ毎晩会ってほしいと頼まれるお話(『ジェムと白い服の娘』)。春を迎え仕事を終えたレイノルズさんが出て行く前にベッキーに語ったのは、三姉妹の長女が出会いを求めて家を出たお話(『最後のお話』)。
※1987年初版

ハロウィンの楽しみは、結婚相手をあてる占いだった。
とちゅうで切れないようにむいたリンゴの皮を肩ごしに投げると、床におちた皮ははっきりした形にはならないが、それでもОやCの形になり、ときたまGにもなった。
みんなは暖炉のまえにハシバミの実をならべた。一つ一つに、恋人にしたい男の子の名前をつけて、おまじないをとなえる。
「わたしを好きなら、はじけてとんで。わたしがいやなら、燃えてなくなれ」

「もともと十月三十一日のハロウィンというのは『たき火の夜祭り』だったんだ。むかしの暦は十一月一日からはじまっていた。だから、むかしでいえば大晦日だったわけだ。その日はまた、『死者たちの祭り』でもあった。人びとはまえの年に死んだ人たちのためにごちそうをつくって、死者たちが家族をおとずれるのを歓迎していることをあらわしたんだ」
「一年のうちでも、季節の変わり目や、はじまりや終わりのときというのは、おかしなことがおこるものなんだ。いってみれば、時の流れにできる裂け目のようなものかな。ありとあらゆる奇妙なものが、その裂け目をすりぬけてやってくるんだ。ハロウィンの夜も、『良き隣人』たちが馬に乗ってあらわれる」
ベッキーが「妖精」といいかけたのを、
「あの人たちは、その名前でよばれるのが好きじゃないらしいんだ」
「その夜はまた、ヒツジの縁組もする。たき火のおきのなかにヒツジを追いたてるんだ。たくさん子どもを産むようにというおまじないさ。きみたちがやっていた結婚占いは、そのしきたりのなごりだろうな……」

マイルズ・クロスの「クロス」というのは十字という意味だが、街道と農道とが十字に交差しているからという人もいるし、上の部分のかけた十字型の石柱(せきちゅう)が経っているからという人もいる。