チェシャーチーズ亭のネコ | kanoneimaのブログ

kanoneimaのブログ

私的備忘録

書名:チェシャーチーズ亭のネコ
原題:The Cheshire Cheese Cat  A Dickens of a Tale
作者:カーメン・アグラ・ディーディ&ランダル・ライト(アメリカ作家)
出版:東京創元社
内容:1859年1月、ヴィクトリア朝の英国ロンドン。野良ネコのスキリーはチーズが好きでネズミが嫌いなことを隠していた。ある日、フリートストリートのボス猫であるピンチから、イ・オールド・チェシャーチーズ亭でネズミを獲るネコを探していると聞かされる。そこは英国一チーズがうまいと評判のパブだと知ったスキリーは、飼い猫の座を狙って牽制するピンチを出し抜き、まんまと店に入り込む。そして、ネズミ嫌いの給仕女・アデルの目の前でネズミを咥えるパフォーマンスを行い、スキリーはまんまと店で飼われることになった。だけど、捕まえたネズミは食べないで、後でこっそりと吐き出す。食べられなかったネズミのピップは驚きつつも、スキリーが「チーズ喰いネコ」であることに気づく。そこでピップは取引を持ち掛ける。ネズミたちはチーズを提供し、スキリーは捕まえたネズミを陰で逃がしてやるというものだ。この協力関係は上手くいき、次第に友情が育まれる。ところがネズミの多さに業を煮やしたアデルが、もう一匹新しいネコを連れて来る。それはネズミを食べるのが好きなネコ・ピンチだったから大変だ。そのうえ、実はネズミたちはロンドン塔の傷ついたレイヴンを匿っているという秘密を抱えてもいた。しかも人間たちはレイヴンは誘拐されたと考え、新聞に事件が報じられていた。その記事に気づいたのは、素晴らしく賢いネズミのピップ。というのも、パブの亭主ヘンリーの娘ネルに赤ちゃんの頃に助けられて育てられたことで、ピップは人間の文字を読み書き出来るようになったのだ。この危地を乗り越えるべくピップは知恵を絞るが……。ネコとネズミの友情の危機に、レイヴンの伝説がヴィクトリア朝ロンドンを揺るがす大騒動に?個性豊かな動物たちと文豪ディケンズたちが登場するにぎやかな物語。

※原書初版2011年
※本書の原題には『物語のなかのディケンズ』というサブタイトルがついている。
※本作を書いた二人の作者、カーメン・アグラ・ディーディはキューバ出身で、現在はアメリカ在住の児童文学作家。ランダル・ライトはヤングアダルト作品が中心の作家で、熱心なディケンズ研究家でもある。
※「訳者あとがき」によると、物語の舞台となるのは、ロンドン・フリートストリートの真ん中辺を、少し北に入った横町にある古いパブ、イ・オールド・チェシャーチーズ亭(Ye Olde Cheshire Cheese)。Ye Oldeというのは、The Oldeの古い英語表記で、「由緒ある」とか「歴史のある」とかいう意味です。その名のとおり、このパブは十六世紀前半に創設されたといわれている。二十一世紀の現在も営業しており、看板どおりチェシャーチーズが有名だそうだ。このパブは歴史が長く場所がロンドン中心部だけに、常連客もさまざまな分野で活躍する著名人が多かったようである。本書のサブタイトルにもなったチャールズ・ディケンズも常連客の一人で、他にも同時代に活躍した著名人が物語に顔を出している。
※本書に登場するロンドン塔のレイヴン(raven)について、「訳者あとがき」によると、レイヴンというのはカラス科の鳥だが、同じカラスでも、クロウ(crow)とは異なる。日本で見られるのは、クロウのほうである。古くから、ロンドン塔のレイヴンは英国の守り主で、彼らの姿が消えたとき、英国は滅亡するという伝説がある。現在もロンドン塔にはレイヴンの姿が見られる。レイヴンたちの世話や管理をしているのは、レイヴンマスター(これは人間の役職名)。ちなみに、王家の領地の池や堀にいるスワン(白鳥)の管理・世話をするスワンマスターもいる。

カード:凝乳
ホエイ:乳清
ナイトシャツ:寝間着
ガーター:靴下止め
チェンバーポット:おまる
スローチハット:中折れ帽
ピューター(しろめ)の器

「カラスはカラスでも、わたしはクロウではない。ルーク(ミヤマガラス)でもなければ、マグパイ(カササギ)でもなく、コクマルガラスでも、ムクドリモドキでも、ブラックバードでもない!」
「ロンドン塔のレイヴン」

『ロンドン塔のヨーマン・ウォーダー(国王衛士隊)ならびにレイヴンマスター殿』

「見てのとおり、あたしは、その……ころんじまった女(フォールン・ウーマン)で」
どしんと尻もちをついたアデルは無邪気にフォールン・ウーマン(ころんじまった女)といったが、じつは、それは堕落した女、売春婦をさす俗語だったために、部屋じゅうがしんと静まりかえった。

仔ネコにスキリー(肉汁)という名前をつけ、薄いポリッジ(粥)を分けあって食べた。