この空のずっとずっと向こう | kanoneimaのブログ

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私的備忘録

書名:この空のずっとずっと向こう
作者:鳴海風(なるみふう)
出版:ポプラ社
内容:ペリー来航から八年後の文久元年(1861年)、日本国内では尊王攘夷の思想をもつ浪人たちの起こす事件で治安が悪化していた。数え十歳の吉益(よします)そらは、内神田の銀町(しろがねちょう)の一軒家で町医者をしている春庵(しゅんあん)の娘。吉益家は実は幕臣(ばくしん)で、番医(ばんい)といって、代々江戸城に勤務する医者だった。ところが、幕府の財政状態がわるくなってきたので、扶持(ふち:給料)が減らされて現在は無役(むやく)である。そこで、春庵は住んでいた屋敷の一部を他人に貸し、銀町で町医者をしているのだ。冬のある日、そらは父の手伝いで薬を届ける途中、五人の男の子たちにいじめられている侍の子を助けた。侍の子は津山藩の箕作文蔵(みつくりぶんぞう)の次男で、大六(だいろく)という七歳の男の子だった。逃げて行ったいじめっ子たちは「そいつは天狗の言葉をしゃべる」と言っていたが、大六が話した言葉は英語だった。大六は神田小川町の蕃書調所(ばんしょしらべしょ)で英語の勉強をしていると言い、彼の父と祖父もそこで外国語を教えていると語った。蕃書調所は、外国の本を翻訳して外国のことを研究する幕府の役所らしい。外国のことを研究する学者の子だと知って、そらは大六に興味をもつ。この件がきっかけになって二人はときどき会って話すようになり、そらは英語を学びたいと思うようになるが……。1871年(明治4)、アメリカに渡った女子留学生・吉益亮子を主人公のモデルに、幕末から明治へ、激動の時代に外国で学ぶ夢を実現させたひとりの少女の姿を描くフィクション。