凍る草原に鐘は鳴る | kanoneimaのブログ

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私的備忘録

書名:凍る草原に鐘は鳴る
著者:天城光琴(あまぎみこと)
出版:文藝春秋
内容:遊牧民アゴールに属するダーソカ部族の若い娘マーラ。マーラは『生き絵』の演出を手掛ける『生き絵師』だ。『生き絵』とは草原に額縁を立て、その中で演手(えんじて)と呼ばれる俳優たちが鮮やかな物語を繰り広げる伝統芸能である。マーラは師匠の跡を継いで『生き絵司』に任じられ、部族長たちの前で生き絵を披露する。初めての大舞台を成功させたマーラは未来に胸をふくらませる。ところが、 “動くものが見えなくなる” という天災と呼ぶべき奇怪な現象が起こり、遊牧が困難になったアゴールの民。演手の動きが見えなくなったことで、マーラは「生き絵は死んだ」と嘆く。一方、アゴールの放牧地を自国の領地と認定している稲城国(いなきのくに)の国民も同じ状況になっているが、国主である禾王(かおう)はこの機会に遊牧民たちを定住させ自国民にしようと目論む。禾王に仕える芸道衆の一人である奇術師の苟曙(こうしょ)は、極めた芸が目に映らなくなったことで解雇されてしまう。城を追われた苟曙は市場で芸を見せるようになり、山羊を売りに来たマーラは彼の奇術に驚いたせいで馬ごと荷物を奪われてしまう。そのことを知った苟曙はマーラに手を差し伸べるが……。
※旧題『凍る大地に、絵は溶ける』。第二十九回松本清張賞を受賞。