ごたごたな1日 | Tへ

Tへ

ブラックタイガーに濯ぐ .◦☆* 。*◦*~♪

昨日はTのフォロー診の日だった。

出かけるギリギリの時間まで

起きてこないので声をかけた。

あまり調子は良くなさそうだから

運転出来るか確認したら手を上げている。

最近よく転んだり倒れたりするから

手も足も生傷が絶えない。

頭や顔もぶつけているので

おでこはコブダイのように腫れて

右目には青痰が出来ている。

何だか喧嘩して殴られた人みたい。

病院で誤解されそう。

病院までは、いくらか距離があるので

早めに家を出た。

立体駐車場はどの階も混んでいて

3階まで行ってやっと駐車できる場所を見つけた。

バックでゆっくり下がるようにTが運転していたら

左横から帰ろうとする車が近くまで寄ってきて止まった。

一度

車のハンドルを切り返したいところだけど

その車にぶつかる危険を避けて

Tはそのまま左後方へ

ゆっくりとバックしていった。

何だか嫌な予感がすると思った瞬間

ガンっ!と音がして車が揺れた。

車体の左後方が鉄柱に触れてしまった。

思わず停止している左の車を見てしまった。

その車が近づきすぎるから

ハンドルが切れずにぶつかってしまったのだと思う。


「止まって先に行ってもらおう。」


私はTにそう言った。

ずっと左前で止まっていられたら

こちらはハンドルを切り返して

前に出ることも出来ない。

様子を察して止まっていた車は

ゆっくりと通り過ぎて行った。

何とか駐車できて外に出た。

車の傷が心配で見に行くと

小さな傷で表面が抉れている。

これだけのことでも落ち込んでしまう。

Tを車椅子に乗せて

階下に降りる。

駐車場のエレベーターは狭いので

車椅子が一台入ったら

あと入れるのは2~3人だった。

この窮屈な状態でエレベーターが故障したらと思うと

ゾッとする。

降りるときも周囲に

ペコペコと挨拶しながらTの車椅子を引っ張る。

一度

外に出て外来棟の裏口から中へ入る。

車椅子の位置だと低すぎて

固定式非接触温度計のカメラにTの頭しか映らず

体温が測れない。

だからTの車椅子を通る位置が毎回上手く行かずに手こずる。

受付は機械に診察券を入れると

その日の診察内容がペーパーで出て来る。

診察室へはコンピューターで来診が伝わるようになっていて

便利だった。

ところが


「財布が無い」


Tがジェスチャーしてきた。

パンパンに膨らんだTの鞄の中を確認する。

財布の中に診察券を入れているので

それが無いと受付ができない。

車の中に落としたかもしれないと来た道を戻る。

駐車場へ行きTの運転席の周囲や椅子の下を覗き込んだが

何も見当たらない。

取りあえず引き返して家に戻ることにした。

遠い道だけに既に怒りがこみ上げてくる。

一番肝心な物なのに

運転中も無造作に鞄を開けたり中をあさったりするから

いつも気が気では無い。

帰宅して家の中を

あちこち探しても見つからない。

寧ろ物が溢れすぎていて探しようのない状態だった。

散々怒りながら

階段を行ったりきたりして走り回った。

それでも見つからない。

怒りたくないのに

こんな事ばかりが重なり参ってしまう。

お財布の中には診察券以外に

免許証や他にも大事なカードが入っている。

何が入っているかも把握できていない。

全てを再発行するには大変な事になる。

Tが財布に触れたのは昨日の買物で支払うときが最後だった。

支払いは機械で行っている。

私が持っているレシートを見て

スーパーの電話番号を見つけ電話した。

状況を説明して調べてもらったが

落とし物としては届いていない様子だった。

もし家以外の所で落として

拾われて取られてしまったらとか

悪い事ばかりが頭を巡る。

警察にも電話をして詳細を話したが

今のところ、そういう落とし物は来ていないと言われた。

とりあえず遺失届を出しておいた。

そうこうしている間に病院の予約時間が過ぎていく。

電話して曜日を変えてもらうか悩む。

もう一度

冷静になって考えようと過去を回想する。

念のためにTに車の鍵を借りて

車内を確認することにした。

こんな所には無いだろうという思い込みはやめて

後部座席を見たら

運転席の真後ろに歪んだ財布が落ちていた。

何故

駐車場でそこを確認しなかったのかと後悔する。

でも見つかってホッとした瞬間

足元から崩れそうになる。

部屋に戻りTと再び病院へ向う。

結局

予約時間よりも1時間以上遅れたので

診察は最後になってしまった。

何処のフロアーにも待合室にも

診察を待つ人の姿は無く

帰る頃には閑散としていた。

何だか疲れてしまい

いつもよりも車椅子が重く感じる。

帰りに買物をすることにした。

車内にTを待たせて

車椅子を持ってきた。

車から降りてTが後ろを向いて

車椅子に座ろうとした瞬間

彼の身体が斜めに傾いて

車椅子の横に崩れ落ちていく。

慌てて背後から支えようとしたものの

荷物もあって上手く支えられずひっくり返ってしまった。

それでも後頭部だけはガードしたけど

こんな事が続いて心が折れまくる。

病院まで2往復して

待合室でも相当待ったから

本人も体力が限界だったと思う。

最近、ほとんど歩くことも運動をすることも無く

栄養も摂れていないから

筋肉が落ちてひっくり返ったりする回数も増えた。

買物を終えて

ようやく夕方に帰宅したら玄関でもふらついていた。

すぐに休憩できるように飲み物を渡した。


これから猛暑で更に食欲も落ちると思う。

意識してでも栄養を摂るようにしていきたい。

明日は かなり遠い病院の診察がある。

万が一を考えて高くても

タクシーを使った方が安全かもしれない。

出来れば今の状態のTの身体に負担をかけたくない。

お金の負担はかかるけれど。