倒れていくT | Tへ

Tへ

ブラックタイガーに濯ぐ .◦☆* 。*◦*~♪

まだ購入して2年ほどしか経過していないTのスマホの

バッテリー切れで修理に出しに行った。

簡単に済ませたくてもやり取りに1時間以上掛かる。

その間、椅子に座って待つ間にTの調子が悪くなっていった。

本人は何も言わずに我慢するから気付かずにいたけれど

店を出て駐車場へ向うときに

彼の様子がおかしい事に気付いた。

前のめりに足早になって身体が倒れていきそう。

慌てて彼の腕を引いて他者の車にぶつからないように引き留めた。

ゆっくりと前屈みになって意識を失っていく彼の腕を引く。

顔面から路上に顔を打ち付けていく様子が

スローモーションになって私の目に入る。

私の力ではTを支えられず少しでも衝撃がないように

地べたに倒れ込む彼の腕を支えるだけで精一杯だった。

周囲には誰も居ない。


「救急車、呼ぼうか?」


問いかける私に無反応だった。

担当していた女性の店員さんが出てきて


「大丈夫ですか?」


笑顔で覗き込んできたけれど

大丈夫と伝えた。

本当は大丈夫ではないけれど

若い彼女には解らないと思うし迷惑をかけたくなかった。

地面に頬をつけたまま目が据わっているTの様子は

放置できない状況だった。


もう


泣きそう。


しばらく、その場でじっとさせて

意識が落ち着いてきたら車の方へ連れて行った。

すこし車内で休んでから帰ろうと伝えたけど

意識を取り戻した本人はすぐに帰りたがった。

彼の顔や腕や足に傷が耐えることはない。

貧血だけでなく酸素不足もあるのかな。

家の中でも頻繁に倒れてばかり居る。

その爆音を耳にする度にゾッとするし

本当に貧血なのかと疑ってしまうこともある。

かと言って彼を入院させるのは忍びないし

毎日毎晩、心が落ち着かない。

もっと栄養が必要だと思うけど

本人が食べたくないのに無理強いも出来ず悩んでいる。

側にいながら救ってあげられない。

病気の影響で心も体もアンバランスになって行くTを横目に

私の心も壊れてしまいそうな思いだった。

他人だったらと思ってしまう薄情な自分に蓋をする。

帰宅して何を飲んで何を食べても笑えない気持が苦しい。

せめて無事でいてくれたことに救われる。