失われた声への希望 | Tへ

Tへ

ブラックタイガーに濯ぐ .◦☆* 。*◦*~♪

Tと同じ掛かりつけの病院へ行く日だった。

電車で行くには気が遠くなる場所にあるので

Tの運転で向う。

診察は午後からだったけど

早朝に起きてハッピーの世話をして

疲れてしまった。

ゴミを出しに行ったら間違えてしまったし

ドンクサイ自分にがっかりする。

もっと横になりたいけど

ハッピーがはしゃぐから布団は畳んだままにする。

Tが起きてくるのを待ってパソコンの部屋で

椅子にもたれていた。

起きてきたTが部屋のドアを開けると

手を振って挨拶する。

彼はいつも野菜ジュースやトマトジュース

時には果汁のジュースをコップいっぱいに手にしている。

1~2杯は飲んでいて

それが彼の朝食代わりでもある。

朝から冷えた飲み物を平然と飲めるのが凄いなと思う。

私は無理。

冷たい麦茶さえお腹が痛くなり

前日に飲んだアルコールと融合して

お腹を壊してしまう。

だから朝は白湯を軽く飲む。

ハッピーにも白湯を飲ませている。

病院で先生と長時間話した。

とても良い先生でTのことも心配してくれる。

でも

先生が疲れている様子を感じた。

多くの患者さんを抱えて

1人1人を大切に対応してくださる先生だから

先生自身が参ってしまうのではないかと気がかりだった。

先生が倒れてしまったらどうしようとか

余計な不安が過ぎる。

眠れずに色々と考えすぎるものだから

不安なことが果てしなくて時折

気が触れそうになる。

こわれすぎている自分の感情をコントロール出来ない事は多い。

それでTに負担をかけたくはない。

彼は充分クタクタな状態だから。

今の私は化粧も、お洒落もしない。

外見なんて他者に不快を与えない程度で良いと思っている。

それよりも大切なのは内面の性格と健康だと思う。

顔に化粧を施すなら

身体に良い栄養を与えることを考えたい。

ケラケラと笑っていられた時代から

愛想笑いすら出来ない今の自分。

私の態度に対して相当辛かったであろう病気だった無き父を思い

私はTと父を重ね合わせて心が抉られる。

Tの表情を見ると毎日毎日切ない。

何故病気に罹患した彼と生きる道を選んだのか。

ある意味それは無き父が私に与えた試練と幸せなのかな。


昨夜はインゲンのゴマ和えとねぎトロ巻と

地元の農家で作られたほうれん草をお浸しにした。

調子が良い様子でTは完食してくれた。

でも今日は病院から帰宅して

疲れたのか酎ハイを飲んで食欲は無さそう。

昨夜と同じほうれん草の残りと

牡蠣フライを食べて

他のおかずは無視して眠ってしまった。

長距離の運転で疲れたのかもしれない。

甘い物が嫌いな私だけど

しょっぱい物が好きだから

塩分過多かもしれない。

それで調べたら小松菜と納豆を摂取すると

体内の塩分を排出してくれるらしい。

さっそく帰りにそれらを購入した。

油揚げも買ったから炒めたら良いのかな。

レシピを調べて明日作ってみようと思う。



YouTubeのように動画配信出来るサイトが多々ある。

ただ自分の声でアフレコを入れるのが嫌な方もいる。

そんな時代だから

声に対するボイスチェンジャーのアプリがある。

また口にマウスピースを装着して

口パクだけで繋げたコードの先のスマホが

自分の声や他者の声で喋ってくれるという画期的なシステムが

どんどんでてきている。

電気式喉頭も食道発声も

あまり好きではないTにとって

これは期待できる情報でもある。

マウスピースを上顎に装着してコードをスマホに繋げる。

口の動きだけで言葉を感知して

スマホがそのまま喋ってくれる。

機械が自分の声とほぼ同じ声で抑揚ある声で話してくれる。

もちろん他者の声に変換も出来る。

こんな商品が開発されてくると

声優やアナウンサーの仕事は不要になって行く。

きっと、そんな時代にさしかかっているのかな。

声を職業にしている方にとっては

不安な話だと思う。

でもTにとっては声を取り戻せるし

新しい技術に期待できるのではと私は考える。

彼の声が聴きたいよ。

本人はシャントの手術を希望しているけれど

日々のメンテナンスや器具の交換だけでなく費用も掛かる。

それならば声に関して企業が注目している今

新しい方法を試みるのも良いのではと私は伝えた。

シャントはピアスのようなものだから

やって損はないと思うけど更なる希望の未来は近いと思う。

何故こんなに声に関してあらゆる企業が力を入れ始めているのか。

たぶんネット配信で地声ではないアフレコをより簡易に編集で入れたい。

そういう人たちが増えてきているからだと思う。

顧客が求めている事に真っ先に企業は目を向ける。

事情は違ってもTにとっては好都合で期待できる情報だと思う。

Tに話してもあまり期待していないみたいだけれど

私は絶対に諦めない。

人の身体を楽器に例える。

声帯がないから話せない。

ならなぜ食道発声が出来るのか。

声帯だけが声を発する機能ではないと思う。

楽器のように空気が通れば音は出る構造の概念から外れて

空気が通らなくても口の骨の動きだけで声に変換できたり

口の動きをスマホの画面が読み取って

声に変えてくれたりと技術はどんどん進化している。

タピアの笛で彼は少し話せるけれど

それは彼の声ではないのかな。

 

タピアの笛は気管孔から管を通して口へ空気を送るから片手が塞がり

その間、呼吸が出来ない。

酸素ボンベがあればと思い医師に言ったら

医療器具なので買えないと言われた。

 

調べてみたら売られているので言葉だけで鵜呑みにしないようにしよう。

 

ただタピアの笛は口の中の唾液が管の中を逆流して気管孔へ戻る事もあるし

管がカビやすく交換が必要なので難点でもある。

もっと多くの企業が声に対して注目して欲しい。

話せない以上に辛い現状を多くの人に知って欲しいし

良い方法で救って欲しい。

いつか再び彼は話せると思う。

絶対にTが話せる日が来ると信じている。