毎年旧盆のこの季節になると亡き両親の思い出に浸ります。その多くは二人の運命を大きく翻弄した先の大戦に纏わるエピソードです。

鱶とながーい褌 これは私の幼い頃の母の寝物語です。南の青い海に棲む鱶は獰猛で人を襲って食べてしまうのです。しかし鱶は自分より大きいものは襲いません。そこでここに行く兵士たちは鱶に襲われないように自分の背丈の何倍もあるながーい褌を締めて船に乗るのです。私は聞きながら夢うつつの中で兵士になって青い海の中を泳いでいます。背丈の何倍もある白い褌は長々と伸びてひらめいています。鱶たちは遠巻きにして私を眺めるだけで襲ってはきません。

 母の最初の夫は太平洋戦争の最中、南方の海で戦死しました。その公報を受け取ってから母は後悔したのかも知れません。戦地に赴く夫に千人針は持たせましたがながーい褌は持たせなかったのです。南方の海を泳ぐ獰猛な鱶の話は東北地方の片田舎では兵士の妻たちの間でまことしやかに語られていたようです。被弾した船から海に飛び込んだ兵士の多くがこの鱶の餌食になるのだと・・・。もしも飛び込む際に軍服を脱ぎ捨て、ながーい褌の仕付糸を抜けば、褌はながーく後ろに伸びて背丈の何倍にもなり、鱶が襲うのを躊躇ううちに、僚船に引き上げられるのだと・・・。

 母のもとに届いた夫の骨壺には小石だけが入っていたそうです。骨はまだ南方の島の土に埋もれているか、海の底に沈んだままかも知れません。母は終戦後数年して父と再婚し、私が生まれました。70年代前半にグアム島から横井さん、フィリピン・ルバング島から小野田さんが帰還すると私は心配になったのです。もしも母の前夫が帰還したら我が家はどうなるのかと・・・。この心配は母が亡くなる97年まで続きました。我が家の心の中の戦争はその日まで続いていたのでした。

父の思い出軍艦愛宕と褌はこの続編予定とします。

 

 

 Gotoトラベルキャンペーンが今月22日にも始まろうとしています。旅行代金の一部を税金で補助して観光産業を助けようとするものです。しかし現下は全国的にコロナ禍が勢いを取り戻し、第二波の様相を呈しています。18日は4月11日の第一波のピーク値743人に迫る659人に達しました。今は国民に旅行を促す時ではありません。むしろ緊急事態宣言を再度発して国民に「ステイホーム」を求めるべき時です。決して東京都のみをキャンペーンから除外して済む話ではありません。このままキャンペーンを実施すれば、感染者はますます増加して1000人或いは2000人に達することでしょう。
 感染者の中でも7割を占めると言われる10代~30代の若者は無症状ないし、比較的軽症で済む様です。しかし彼らも近くの人にウィルスをうつすのです。しかも最もうつしやすいのは症状が出始める前後の各数日間と言われています。つまり数日間は自覚症状のないまま近くの人にうつす危険性があるのです。うつされた人が高齢者又は高血圧や糖尿病などの基礎疾患を持つ人だった場合、その人は重症になる確率が高く、最悪は死に至ります。
 つまり今の時点でこのキャンペーンを実施することは多くの高齢者や基礎疾患患者を見殺しにするという事に他なりません。果たしてそれは国民が望むことでしょうか。現在の台湾の様に日々の感染者数を数か月間に亘って一桁に抑え込んだ後で初めて人々の移動を促すべきです。一方で危機に瀕する観光産業を助ける必要は認めます。しかしそれはGotoトラベルキャンペーンでなく、事業継続助成金を拡充して助けるべきでしょう。
 
 
  

 
 中国の全国人民代表大会(全人代)は5月28日、香港に対して国家安全維持法を導入する方針を決定しました。中国政府は今月内にも全人代常務委員会で同法を制定し、7月1日の香港返還記念日に施行する構えでいるようです。その要点は①国家反逆、国家分裂、動乱煽動、中央政府転覆、国家機密窃取の行為を禁止し、②外国の政治組織や団体が香港で政治活動をすることを禁止し、③香港の政治組織・機関が外国の政治組織や団体と関係をもつことを禁止すると言うものです。更に香港の裁判所を香港政府の下に置き、中国政府の実力組織を香港内に置くとも言われています。これらが可決・施行されれば昨年香港政府に逃亡犯条例の成立を断念させた民主派による街頭デモなどは要点①の適用で禁止され、改めて香港政府が再提出するであろう逃亡犯条例は可決成立してしまうことでしょう。それは一国二制度によって香港に与えられた言論と集会の自由が事実上失われることを意味します。
 現在の中国憲法はその第33条から47条で言論・出版・結社・信教等の自由を認める傍ら、第1条で「いかなる組織ないし個人も社会主義体制を破壊することを禁止する」として事実上これらの自由を制限しています。このため現体制を批判する中国本土の民主派の人々の多くは国外に逃れ、国内に留まる人は監視・投獄を受け、命の危険にもさらされています。7月以降の香港は国家安全維持法に依って中国本土とほぼ同じ人権無視の状態になることが危惧されます。
 「人はパンのみにて生くるものに非ず」とは聖書の中の言葉です。もちろん衣食住に代表される「物」は人が生きる上で必須のものですが、人は「物」が足りれば幸福になるのではありません。然るに共産党独裁の中国政府がその成立以降人々に与えてきたのは「物」のみです。曰く「13億の民を養うにはこの政治体制しか無いと」のことですが、ほぼ同じ13億の民を持つインドは民主政治を保っているのでこの理屈は通りません。もはや中国政府が守りたいのは共産党の独裁体制だけなのではないでしょうか。香港を含む中国人民の物心両面の幸福では決してないのです。
 香港にこのまま言論と集会の自由を認めていると遠からずそれが中国全体の人民に波及して一党独裁体制が崩壊すると中国政府は恐れています。しかし人民にとってそれこそが望ましい姿なのではないでしょうか。民主化された中国に於いて、現在「職業訓練所」なる洗脳機関に多くの人が強制隔離されているウィグル自治区を始めチベット、台湾などが独立して民族毎の自前の国を作る事は彼らの真の幸福につながることでしょう。もちろん民主主義国家も決してバラ色ではありません。差別も格差も貧困も残っている国が多いのですが、国民が自由に政府を批判でき、更にはそれぞれが持つ一票の力で政府を変えられる点が他の何物にも勝る貴重な価値なのです。
 香港国家安全維持法導入に対して民主主義国の多くは反対しています。中国政府はこれを「内政干渉」として退けようとしていますが、21世紀の現在のしかも基本的人権の蹂躙や人々の生命の危険に関わる問題において「内政干渉」なる概念を通用させてはなりません。多くの皆さんの声を集めて中国政府に届けようではありませんか。「香港の国家安全維持法を撤回せよ!」と・・・。
 黒川前検事長はコロナ禍の緊急事態宣言下にも関わらず、賭けマージャンをした廉で訓告を受け、先日退職済です。にもかかわらず何故今更1月末の定年延長閣議決定を撤回させる必要があるのかと疑問に思う方もいるかも知れません。しかしこれは今後我が国の司法の、政権からの独立を取り戻す為にとても大事なことなのです。
 安倍政権は去る1月31日の閣議で2月7日に63歳の定年を迎える東京高検の黒川検事長の任期を半年間延長するという決定をしました。本来検事長の定年は検察庁法第22条で63歳と定められています。一方国家公務員法第81条の3では「任命権者は、定年に達した職員が前条第1項の規定により退職すべきこととなる場合において(一部略)同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。」とされています。
 この「前条第1項」というのは、同法81条の2第1項の「職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の3月31日(一部略)に退職する。」という規定であり、この規定で「法律に別段の定めのある場合を除き」とされている「別段の定め」が検察官の場合の検察庁法22条です。検察官の場合、定年退官は、国家公務員法の規定ではなく、検察庁法の規定によるものであり、81条の2の「第1項」の規定によるものではありません。つまり国家公務員法81条の3による「勤務延長」の対象外であり、今回黒川検事長の定年退官後の「勤務延長」を閣議決定したのは検察庁法に明確に違反する違法行為です。
 この度は当の黒川氏が退職しましたが、この違法な閣議決定は消えていません。これを放置するとそのまま実績となり、同じことが繰り返される恐れがあります。それは時には総理大臣をも罪に問うべき司法が、時の政権に左右され独立性が失われる事で、民主主義の土台を揺るがす由々しき事態です。何としても先の閣議決定を撤回させねばなりません。
 ところで安倍政権は今国会での成立を目指していた検察庁法の改悪をしぶしぶ断念しました。現下はCOVID-19禍で国会議事堂前などでのデモがしづらい状況ですが、政権がそれをも計算に入れていた可能性もあり、「火事場泥棒」と揶揄されていました。一方でこの法案に反対するネット上の投稿「#検察庁法改正案に抗議します」は俳優やタレントなどの著名人を含め一千万通近くにも達しました。加えて元検察トップ有志や特捜部OB有志も反対を表明するに及んで断念せざるを得なくなった模様です。ただし政権はこの法案を継続審議として秋の臨時国会以降での成立を目指す姿勢です。安倍総理は「(法案成立後)恣意的な人事はしない」と答弁していますが、1月末に同法案の予行演習とも言える違法な人事を閣議決定した当人の弁で有り、全く信用できません。安倍政権がこの法案を再提出した際は再び轟々たる「反対」世論を巻き起こしてこれを阻止せねばなりません。何故ならこれは1月の違法な閣議決定を後付けで正当化する為の法案だからです。
 むしろ秋の臨時国会以降では国家公務員法の定年延長法案の中に、「但し検察官の定年については検察庁法第22条によるものとする」という但し書きを追加して政権による「法律解釈変更」の余地を無くすべきではないでしょうか。奇しくもコロナ禍の元で多大な成果を発揮したネット世論を更に駆使し、より多くの国民の皆さんの賛同を得て是非とも実現したいものです。

 
 
 私の母は1997年に病院で酷く苦しみながら亡くなりました。多発性脳梗塞でその3年後から始まる介護保険制度で言えば要介護5のレベルでした。しばらく点滴による栄養補給が続いた後、再び病院スタッフの介助のもと経口食に切り替えた直後に食べ物が気管に入り、誤嚥性肺炎になりました。やがて全葉性肺炎となり、苦しい息使いのまま一週間後に旅立ちました。母の主治医が書いた死亡診断書には「死因:全葉性肺炎、その原因:不明」と書かれていました。原因を正しく誤嚥性肺炎と書かず、不明としたのは、「医療事故扱い」となることを恐れたのでしょう。医師としての保身の為の記述不正だと感じました。
 ところで本稿の主題は3月11日世界保健機構(WHO)がパンデミック(世界規模での蔓延)宣言をした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の件です。相前後してWHOは「積極的にPCR検査をして蔓延を抑えるべし」と声明を出しています。しかし安倍政権はこのPCR検査を故意に抑えて来た節があります。2月末頃の韓国での1日のPCR検査数約4万件、中国でも数万件に対し、我が国は1000件前後、最大でも3800件と一桁以上少ないのです。我が国のこの異常な少なさについて3月1日付けのビジネスジャーナル誌は次の様に伝えています。つまり政府のCOVID-19対策専門家会議のメンバー構成に利権絡みの偏りがあり、PCR検査の実施機関を国立感染症研究所と各大学病院に限っているとのことです。その為検査能力は1日最大6200件に留まりますが、これを民間の検査機関にまで広げれば約100社の900拠点で1日最大10万件の能力に達するというのです。
 安倍政権にはPCR検査数を抑えたいもう一つの理由があります。それは東京オリンピック・パラリンピックです。PCR検査数を増やせば感染者数も増えますが、それは開催延期または中止に繋がるので何としても避けたいのでしょう。確かにその事態は選手を始めとするあらゆる関係者・組織にとって莫大な損失となります。しかしそれらはPCR検査をしない為に落とす一つの命よりも重いとは言えません。COVID-19に対して今我が国と世界がすべきは徹底したPCR検査と徹底した隔離しか無いのではないでしょうか。見かけの感染者数を減らしても決して世界の称賛を得る平和の祭典の開催にはならず、返って(美しい筈の)日本の品格を落とすだけです。
 先日WHOは更に「検査、検査、検査をすべし」と呼び掛けました。名指しはしていませんが、その視線は主に日本に向いています。このほど米国大手メディアのブルームバーグはCOVID-19の世界統計から日本を外しました。理由はPCR検査が異常に少なく、実態を隠していると判断した為です。日本医師会は3月16日までの20日間で医師がPCR検査を保健所に要請しても断られた件数が290件あると発表しました。その理由は「人手不足や肺炎症状の更なる経過観測要求」だそうです。肺炎症状のある人は経過観測するうちに死んでしまう危険性があります。去る16日にはネット上に複数の葬祭業者からの告発文がありました。東京都からの通達を踏まえた葬儀社の対応として曰く「死亡後24時間未満でも火葬可。医療機関は遺体を納体袋に収めた後表面を消毒して納棺後搬送業者に引き渡す。葬儀社では安全の為防護服を着用して遺体を扱う。PCR未検査が多い為、死亡診断書上の死因が肺炎だけの場合もCOVID-19患者として扱う」
 ところで昨日の格闘技イベントKーI開催には肝が冷えました。安倍政権がPCR検査を抑制したままでは感染数が見かけ上少ないままとなり、この様に国民の警戒心に緩みが生じます。「今の内なら大丈夫かも…」と思って外出する人も居るでしょう。結果として高齢者、基礎疾患を持つ人が「肺炎」で亡くなるケースが異常に増える危険性があります。医師がPCR検査を要望しても保健所に断られた後に死亡した患者の場合、死亡診断書の死因は「肺炎又は全葉性肺炎」と書かれます。次に「その原因」の欄には「不明」と書かれることでしょう。未検査なのでCOVID-19とは書けないからです。23年前に母を見送った私がそうである様に、こうした患者の遺族は死亡診断書の死因欄の記載内容に不信感を抱いたまま毎年の命日を迎えることになるのです。
 米国民の皆さん、別けても共和党員や共和党支持者の皆さん、こんにちは。私は日本の世界連邦主義者です。皆さんにお願いがあります。この度上院で行われるトランプ氏の弾劾裁判に於いて、皆さんが支持する上院議員に賛成投票するよう働きかけて頂きたいのです。
 私は本ブログの2018年10月23日に掲載した「米国民の皆さんへ(その3)」の中で「世界をたった1mmでも戦争に近づけることは政治家としてあるまじき行為」だと書きました。その愚を今まさにトランプ氏は犯したのです。
 それは米国とイランとの間の「戦争ごっこ」です。ことの発端はイラン核合意を一方的に破棄したトランプ氏が経済制裁を推し進めてイラン経済を窮地に追い込んだことです。トランプ氏の真の狙いはイラン核合意という民主党オバマ政権の遺産を台無しにして共和党内右派の支持を得ること、つまり今年11月の大統領選挙対策です。しかし今月3日の米軍によるイラン革命防衛隊司令官暗殺は行き過ぎでした。8日にはイラン軍がウクライナの旅客機を撃墜するというミスを誘ったのです。米軍もイラン軍も共に相手がエスカレートしない程度に抑えた攻撃に徹してはいます。本格的な戦争は避けたいものの共に国内向けには弱腰を見せられないからです。しかし武力による報復合戦は決して計算通りには行きません。もしあのウクライナ機に米国人が乗っていたらどうなったでしょうか。イランの正規軍でさえミスを犯しました。親イランの武装組織にはレバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ、イラクの人民動員隊、シリア政府軍などがありますが、彼らはイラン軍以上にミスを犯す危険性が高いのではないでしょうか。ミスに限らず狂信的な兵士や市民による故意の爆撃もあり得ます。
 歴史は教訓に満ちています。第一次世界大戦の発端はサラエボ事件でした。この事件の直後、事件の当事者を含めてこれがやがて戦闘員と非戦闘員を含めて1600万人を超える死者を出す悲惨な大戦争に繋がると誰が予想したことでしょう。第二次世界大戦の中で日中戦争・太平洋戦争は日本が当事者ですが、その発端は盧溝橋事件でした。小さな軍事衝突でしたが日本軍はこれを好機と見て日中戦争に突入し、その帰結として米国の参戦を受け、勝ち目の無い太平洋戦争の泥沼に嵌ったのです。そしてその結果はこの二つの戦争だけで国内外3000万人にも及ぶ尊い人命でした。
 この度のトランプ氏の所業はまさに経済制裁と武力を使った「火遊び」であり、他の国々を巻き込んでの戦争を誘発する危険を孕む許しがたい行為です。その芽を摘むためにも是非この弾劾裁判で彼を罷免するよう働きかけをお願いいたします。米国大統領という絶大な権力と世界への影響力を持つ役職をこれ以上彼に委ねることはやめていただきたいのです。どうぞよろしくお願いいたします。  

 私は仕事で香港を二度訪れています。最初は1990年の初冬でした。夕会食の後でビクトリアピークに登りました。名画「慕情」の名シーンに出て来る丘です。見下ろす街のネオンは色とりどりで華やかでしたが、他と違ってまったく瞬きません。それはすぐ傍に空港があって、ネオンの点滅が飛行の安全に災いするからだそうです。それでも名にしおう100万ドルの夜景は素晴らしく瞼の奥に残っています。
 今その香港は大きく揺れ動いています。かつて私が歩いた大通りは若者を中心とする市民デモに埋め尽くされ、それを阻止せんとする警察との衝突が起きました。発端は今年2月に香港行政府が立法会に提出した「逃亡犯条例改定案」です。現在犯罪人引渡協定が結ばれていない中国に対してこれを結ぼうとする条例です。多分これは中国政府の要求によるものでしょう。これが成立すれば中国により犯罪人に仕立て上げられた香港人、香港を訪れた外国人が中国に引き渡される恐れが出てきます。それは2047年まで保証された「一国二制度」の事実上の崩壊を意味します。28年後の香港を、その中核として生きる若者達が危機感を抱いて街頭に繰り出し、それを市民も支持しているのがこのデモの原動力なのです。
 香港行政府の後ろには中国政府が居ます。現在香港行政府行政長官への立候補は事実上中国当局の同意が必要で、しかも投票権は親中団体のみに与えられる構造になっています。しかし本来は2017年以降普通選挙が実施される筈だったのです。14年春の全国人民代表大会でこれを変えたのは中国政府でした。そしてその秋の「雨傘革命」はこれに対する若者を中心とした抗議行動でした。雨傘革命は79日で潰えましたが、今回のデモは3月末から既に8か月を超えて続いています。前者は「新たに普通選挙を獲得せんとするもの」だったのに対して後者は「今ある自由を奪われるもの」であり、香港市民にとって危機感がひとしおだったのです。それは先月末の区議会議員選挙で親中派が大敗し民主派が4分の3以上の議席を獲得したことでも分かります。
 一方現在中国の新疆ウィグル自治区では数十万人ものイスラム教徒のウィグル人を職業訓練センターと称する強制収容所に入れ、洗脳して従順化しています。人としての尊厳と人権を踏みにじる恐ろしい所業です。目的はウィグル人を「中国化」して分離独立の芽を摘むことです。
 これらに対して米国は先月末に「香港人権・民主主義法案」を発効し、今月に入って「ウィグル人権法案」も制定すべく準備しています。世界的枠組みを次々とぶち壊し、一国主義に邁進するトランプ政権に反して、議会に代表される「自由と民主主義」の旗手としての米国市民の力は健在のようです。
 そして今私たちも香港市民を応援しなければなりません。さもなくば2047年を待たずして香港の「中国化」を見ることになるでしょう。ウィグル人民の自由と人権も守らねばなりません。それは将来台湾の「中国化」を防ぐことにもつながるのです。
 今世紀に入って唯一の経済・軍事超大国だった米国が中国に追い付かれようとしています。やがて並ばれ、抜かれるかも知れません。このところパナマやドミニカ共和国など、台湾と国交を結んでいた国々が次々と断交して中国と国交を結んでいます。彼ら対して中国が提示する経済援助が台湾のそれよりも遥かに大きくなって来たことが原因です。かくして中国が米国に代わって経済・軍事分野で世界をリードするようになるかも知れません。果たしてそれはどんな世界なのでしょうか。
 「民主主義」は欠点だらけではありますが、今のところ人々の幸福にとってこれ以上のものはありません。その欠点の最たるものは「方針決定に時間がかかる」ことです。例えば英国のEU離脱問題です。16年6月の国民投票から4年目に入っていますが未だに決まりません。これは離脱派と残留派が拮抗している為です。しかし英国は民主主義の先進国であり、本日の選挙結果を踏まえ、来月には国民にとって最良の結論を出すことでしょう。私自身はEU残留を強く望んでいるのですが…。
 これに対して今の中国は共産党独裁体制で人民の自由と人権を制限しています。政府を批判すれば即捕まり、命の保証も無い恐怖社会です。政治の使命の第一は国民を飢えさせないことですが、その点中国は1978年からの改革開放経済政策でかなりの好成績を収めたようです。第二は戦争しないことですが、中国の南シナ海などでの振る舞いを見るにつけ、いざという時は戦争も辞さない構えのように見えます。この二つは俳優菅原文太さんが亡くなる直前の沖縄知事選応援演説での要点でもあります。第三は人民の自由と人権を保障することですが、これに付いては中国政府は全くの零点です。
 将来中国が米国を押しのけて世界をリードする時、共産党独裁政治が続き、人民の自由と人権の抑圧が続いていたら一大事です。中国の支援を受ける途上国の多くが同じ政治体制になる可能性があります。それはそこに生きる人々の大きな不幸です。
 今私たちは中国を取り巻く香港、台湾、ウィグル自治区の人々が自由と民主主義を獲得出来るよう応援しましょう。中国政府はメディアやインターネットに障壁を立てて自国民に目隠しと耳栓をさせていますが、目隠しにも耳栓にも隙間があります。やがては89年にベルリンの壁が崩壊したように、91年にソ連邦が解体されたように中国の国民によって人権抑圧・独裁政治が倒されることでしょう。世界中の人々が自由と民主主義を享受できる日の到来を一日も早く実現するために、今私たちは大きな声を上げなければならないのです。

 あいちトリエンナーレ2019が75日の会期を終えて14日に閉幕しました。その中の企画展「表現の不自由展・その後」は開幕3日目で中止となり、やっとの思いで漕ぎつけた再開は閉幕6日前のことでした。中止の原因は展示内容に対する抗議です。なかでも従軍慰安婦を思わせる「平和の少女像」と昭和天皇と思われる肖像が焼かれる「焼かれるべき絵」に抗議が集中しました。多数の抗議の中には「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」とした脅迫FAXもありました。このFAXの送り主は威力業務妨害で逮捕されています。そしてこのテロ予告が本企画展を中断させる主因となりました。
 一方河村たかし名古屋市長の発言「日本人の、国民の心を踏みにじるものだ」など政治家による攻撃もありました。更に菅義偉官房長官の発言「補助金交付の決定に当たっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」が続きます。そして9月末に文化庁は交付採択済だった補助金7800万円全額の中止を決定したのです。これに対して主催者代表の大村秀章愛知県知事は法的手段を講じるとしています。
 この事件については表現の自由を保障した憲法21条への抵触問題、文化を保護・育成する任務を負った文化庁の背任問題などが既に論じられています。しかし私はここで全く異なる視点からこの問題を考えてみたいと思います。
 今放送中のNHK大河ドラマ「いだてん」は記録的な低視聴率に喘いでいますが、10月13日の放送で私はNHKを見直しました。敗戦直後の満州で多くの日本女性が進駐してきたロシア兵の餌食となります。しかし一人の日本人が呟くのです。「これまで日本兵がやって来たことだ」と。NHKは戦争被害のみならず加害の事実にも触れたのです。
 一方先程の河村たかし氏や文化庁の言動はその加害の事実にかかわる物事を今の日本人の目から隠そうとしています。更に自分たちの感覚が日本人全体を代表すると思い込んでいる驕りすらあります。しかし私を含め日本人の中にも事実を直視した上で隣国民と和解し合うべきと考える国民が居るのです。
 「平和の少女像」の作者は韓国人です。現在の朝鮮半島人の心の奥底にこの像が常に在ると全ての日本人が知るためにこの企画展の存在意義があったのではないでしょうか。一方「焼かれるべき絵」の作者は日本人ですが、朝鮮半島の人々や中国人の心の奥底にあるものを表現していると受け取れます。今韓国との関係が最悪の状態になっていますが、真に隣人として和解するためにはお互いの心の内を理解し合わなければなりません。その為には見たくないものを隠したり否定するのではなく、直視した上で和解し合わなければなりません。そして我が国の首相や国会議長などが現地で被害者やその遺族に直接謝罪する必要があります。また改めて個別補償に応じる必要もあるでしょう。
 1965年の日韓請求権協定は朴正煕韓国大統領の働きかけで締結されましたが、個人賠償の為に日本が支払った3億円は経済発展用途に流用されました。この政権は軍事独裁政権であり、言論の自由も無く、当時その事実は韓国民には知らされませんでした。一方今の韓国は民主国家であって言論の自由が保障され、現文在寅政権はその中で選ばれ、韓国民の多数意見を代表しています。ある意味で革命が起きたに等しい不連続性があるのです。「65年の協定を守れ」の一辺倒では済まないと思うのです。
 今中国は共産党の独裁政治が続き、北朝鮮も軍事独裁政権が続いています。もし仮にこの2国が民主化され、言論の自由が保障されたとすれば、民主中国も民主北朝鮮も今の韓国と同様それぞれの国民の多数意見に押されて戦時被害の個人賠償請求問題が起きて来る可能性もあるのではないでしょうか。
 
 先月NHKが公表した田島道治元宮内庁長官の「昭和天皇拝謁記-戦争への悔恨-」を読みました。1948年から5年近くもの長い間、昭和天皇の側近を務めた人物が書き残した記録であり、その正確さ、克明さにおいてこれに勝る資料は無いものと思われます。
 この拝謁記の中には、昭和天皇が再三に亘って国民に伝えようとされたお言葉が記されています。それは「戦争への深い悔恨と、二度と繰り返さないための反省」でした。しかしこれは時の吉田政権に阻止され、国内にも海外にも伝わることはありませんでした。時はすでに現憲法下の1952年、サンフランシスコ講和条約発効記念式典における「おことば」の内容であり、天皇は国民を代表する政権の意向を尊重せざるを得なかったのです。
 しかし私達日本国民はこの時に千載一遇の好機を逸したのではないでしょうか。「戦争への深い悔恨と、二度と繰り返さないための反省」・・・僅か7年前まで戦争の当事者であられた昭和天皇のこのお言葉がこの時に国内と海外に報道され、広まっていたならば、今日に至る我が国の先の大戦への反省の深さと、それを受けての世界の我が国を見る目がかなり違っていたと思えてならないのです。
 先ずは国内への影響です。我が国民の先の大戦に対する悔恨と反省はより深まったことでしょう。天皇が「市ケ谷裁判で公になつた事を見れば実にひどい」と嘆かれた南京事件を含めた幾多の我が国の所業を、被害地の協力を得つつ国を挙げて調べ上げ、公表していたのではないでしょうか。その結果は公文書として残し、教科書にも記載して全ての生徒・学生に学ばせます。これにより、現在「南京事件は無かった」などと嘯く歴史修正主義者は居なかったと思われるのです。
 また当時既に釈放されていたA級戦犯容疑者・岸信介氏をはじめとする戦前・戦中指導者層、公職追放解除となって復帰していた赤尾敏氏などの右翼層などに対する国民の目はより厳しいものになったと思われます。その結果として1957年の岸氏首相就任は無かったのではないでしょうか。更に岸氏を源流とし憲法改定を目指す右派政治勢力の流れも、その支持母体としての日本会議の様な右派団体の流れもかなり細々としたものになったことでしょう。巡り巡って現在の憲法9条改定を悲願とする安倍政権も無かったものと思われます。また靖国神社へのA級戦犯の合祀も無かったことでしょう。そして首相をはじめとする閣僚は政教分離の原則に従い、拡充成った千鳥ヶ淵戦没者墓苑に公式参拝しているものと思われるのです。
 次に海外への影響です。昭和天皇の戦後の海外ご訪問先は欧米諸国のみでした。その中でもイギリスとオランダでは退役軍人等の反発行動がありました。もしも「戦争への深い悔恨と、二度と繰り返さないための反省」のお言葉が広く報道されていたら、この反発行動もかなり小さくなっていたのではないでしょうか。また中国と韓国をはじめとするアジア諸国へのご訪問もあり得たかも知れません。現地でこのお言葉を直接述べられたならアジアの戦争被害者・遺族の心の傷もかなり癒されたものと思われます。その上で歴代の首相が朝鮮半島、中国などの戦争被害者・遺族などに直接会って謝罪を重ねていたならば、現在泥沼状態に陥っている日韓関係の様な事態は無かったことでしょう。
 勿論歴史に「・・・たら・・・れば」はありません。上記は全て私の夢想に過ぎないのですが、それでもつくづく正夢であって欲しかったと思うのです。ところで現実の2019年に戻って、私たちはこのままで居て良いのでしょうか。勿論良くありません。私たちは今からでもやり直さなければならないと思うのです。
 先ずは20世紀前半の我が国・我が軍の所業を国を挙げて調べ上げるのです。そのためには朝鮮半島や中国をはじめとする被害国の協力を得なければなりません。その結果は国内外に公表し、公文書として残し、教科書にも記載して全ての生徒・学生に学ばせます。その上で首相が朝鮮半島、中国などの戦争被害者・遺族に直接会って謝罪を重ねるのです。そうすれば我が国と戦争被害国との間に長い間刺のように突き刺さっている歴史認識問題が抜け落ちて行くことでしょう。
 ただしこれは安倍政権は勿論、自民党中心の政権では出来ません。出来るだけ早く非自民党のリベラル政権を立ち上げて上記を実行してもらうしか無いのです。そのためには来月の参院埼玉補欠選挙を皮切りに今後のあらゆる国政選挙と地方選挙で立憲民主党を中心とするリベラル勢力を勝たせなければなりません。皆さんのご賛同とご協力を切にお願いする次第です。
 
 昨今の日韓関係は混迷を極めています。発端は元徴用工問題でした。昨年10月韓国大法院は現日本製鉄に対して元徴用工に損害賠償金を支払うよう命じました。現在原告側は韓国内の日本製鉄の資産を現金化しようとしています。これに対して安倍政権はこれが1965年の日韓請求権協定に反する判決であり、支払い義務はないとの立場です。同協定に盛り込まれた双方の政府による「協議」、第三国を交えた「仲裁」更には国際司法裁判所への「提訴」は何れも韓国政府が同意しない為実現しません。そこで安倍政権は奇策に出ました。その第一弾として7月1日韓国の基幹産業である半導体製造に欠かせない「フォトレジスト」などの化学素材3種に輸出規制をかけたのです。更に第二弾として8月2日輸出貿易管理令における優遇措置「ホワイト国」から韓国を外しました。これらは共に徴用工問題とは無関係と言っていますが、誰の目から見ても「江戸の敵を長崎でとる」式の経済報復であることは否めません。皮肉なことに7月1日は安倍政権が議長国として取りまとめたG20大阪サミットが閉幕して僅か2日後です。その首脳宣言の冒頭付近にはこんな文言があります。「自由、公正、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易及び投資環境を実現し、開かれた市場を維持する」何とその2日後に安倍政権は真逆の経済制裁を実施したのです。

 安倍政権の韓国に対するこれらの経済制裁について、世論調査の結果日本国民は概ね支持の様です。朝日新聞も立憲民主党も「安倍政権よりも韓国政府に非がある」という論調です。しかしそれは本当に正しいのでしょうか。本件に関して韓国国会議長や大統領が「盗人猛々しい」と何回も発言しているのがとても気になります。それは1910年から45年まで続いた日韓併合時代に日本から受けた彼らいわゆる「七奪」、従軍慰安婦、徴用工などの問題をいまだに忘れず、許せず根に持っているということです。それは何故なのでしょうか。

 65年の日韓請求権協定には個人を含む賠償責任放棄の代償として3億ドルの無償援助がありました。当初日本政府がこれを運用して従軍慰安婦、徴用工その他の個人被害者に償う提案をしましたが、韓国の朴正煕政権はこれを韓国政府が一括管理して個人賠償することとしたのです。しかしこの3億ドルは個人賠償に使われることはありませんでした。朴政権はこれを他の有償援助と合わせ、ダム、鉄道、道路、鉄橋、製鉄所、発電所など専ら経済発展の為に使ってしまい、いわゆる「漢江の奇跡」を達成したのでした。そしてこのことは当時の韓国民には知らされませんでした。朴政権は強権政治を行い、言論統制、反政府勢力粛清を行っていたのです。

 ここまで見て来た限りでは今回の安倍政権の措置は正しく、韓国文在寅政権側に非があるという日本の世論も頷けます。しかし本当にそれで良いのでしょうか。日韓併合時代、少なからぬ日本人は朝鮮人を差別しバカにしていました。皆さんは「バカチョン」という言葉を知っていますか。例えばカメラで、シャッターを押すだけでピント、明るさ、色合がソコソコ綺麗に撮れる優れものが登場した時に「バカチョンカメラ」と呼んだのです。何気なく使う言葉でしたが、その意味は「バカでもチョンでも綺麗に撮れる」の短縮形です。そしてこの「チョン」こそは朝鮮人の蔑称でした。

 朝鮮人を蔑む日本人の疑心暗鬼が招いた大きな悲劇が1923年の関東大震災朝鮮人虐殺事件です。この未曾有の自然災害の最中、「朝鮮人が火をつけた、井戸に毒を入れた」という言説が流れ飛び、官憲や自警団などにより虐殺された朝鮮人は推定千人~数千人に上りました。毎年9月1日の慰霊祭には歴代の東京都知事が朝鮮人被害者追悼文を寄せてきましたが、現小池知事になってからの3年間は途絶えています。大震災全体の死亡・行方不明者約10万人と同列に扱うとのことですが、こちらは官憲などによる虐殺被害であり、同列に扱うことは大きな間違いです。この事件は私の母が7歳で目撃しており、その顛末は本ブログの下記の記事「伝言その1」に記載していますので是非ご参照ください。

 日本の総理大臣は韓国の元従軍慰安婦とその遺族、元徴用工とその遺族、関東大震災朝鮮人虐殺事件被害者の遺族などに直接会って謝罪していません。本来はその姿を何回も韓国民に見せることが大事なのです。韓国国会にも出席して謝罪する姿を何回も見せるべきなのです。それをせず、ただ金で解決しようとする姿を見せているので、韓国民は納得していないのです。あまつさえ安倍政権は「いつまで詫びれば良いのか」とか「次の世代には詫びさせない」とか言っていますが、韓国国民からすれば心底詫びられた記憶がないので言語道断の発言でしょう。ほぼ同様の論点で本ブログに下記の記事「慰安婦像問題の底流」を記載していますのでこちらも是非ご参照願います。

 もしも65年の日韓請求権協定以降我が国の総理大臣が直接韓国の被害者やその遺族に会って謝罪を重ねていたら、韓国民の日本に対する認識は現在と大きく異なり、従軍慰安婦問題や徴用工問題はもとより発生しなかったのではないでしょうか。そして今からでも決して遅くありません。日本の総理大臣は韓国へ行って直接被害者やその遺族に会って謝罪を重ねるべきです。しかしこれは安倍政権では出来ないでしょう。もし仮に出来たとしても相手がまともに受け取らないでしょう。そのためには一刻も早く政権を変え、しかも安倍政権とは真逆のリベラルな政権にそれを委ねる必要があると思うのです。

https://blog.goo.ne.jp/kanohta/m/200712(伝言その1)
https://blog.goo.ne.jp/kanohta/m/201712(慰安婦像問題の底流)