久々の・・・「翻訳してみよう」!!! | 湖南省で日本語教師

湖南省で日本語教師

湖南省の某所で日本語教師をやってます。専攻は中国語で、まだまだペーペーですが頑張ってます。

(ででんでんででん!!←ターミネーターのテーマ)どうも~~。久々に「翻訳してみよう」のコーナーを復活させようと思います。



先ほどの記事 で紹介した、東野圭吾氏の小説「変身」の中国語版を見ていたら少々(むしろ“かなり”)気になる文を見つけたので、早速この場を借りて検証してみようと思います!!ネタは新鮮な内に。考えたら即行動!!



原文


「俺は異常だ」


 わざと口に出してみた。そうすることで、この事実を客観的に受け止められそうに思えたからだ。だがその直後、なぜ普段使ったことのない「俺」という表現が口をついたのかと、自分でも不思議に感じた。同時に、言いようのない不安感が襲ってきた。



主人公はもともと性格は温厚なのですが、脳移植手術を施されてから(ここら辺のくだりは本編を読んでください)その性格が段々と変化していくワンシーンです。


さってー、訳出のポイントはみなさん多分お気づきの通り、日本語の「俺」を如何に訳すか?というところでしょう!!


まずは訳書を見てみましょう。



不正常。”我故意说出声来,觉得这样可以让自己客观地接受现实。可我马上奇怪地发现,不知为什么,我用了平时从不说的“”字。无法言说的不安向我袭来。



そうなんですよー!!中国語でも“俺”を使ってるんです。まあ僕は全く中国大陸の言語使用状況には詳しくな

いので、この“俺”が日本語と同じように使われているかどうかわかりません。僕は一年ほど台湾にいましたが、“俺”という言葉を使った人を一度も見ませんでした。せいぜいおふざけで“老子(俺様)”とか使っていたくらいです。ちなみにもし使うときは、後ろの“子”は軽声で発音してくださいね。三声で発音すると「老子(ろうし)」になってしまいますから(笑)



ドラマなんかでも“老子”は使われてました・・・



僕が愛してやまない台湾ドラマ「鬥魚」、その最終話より。4:57くらいで“老子”って言ってますー。



http://www.youtube.com/watch?v=a75CbFh2j6Q&feature=related



ところで小学館の辞書で“俺”を引いてみると・・・・


俺an3 :人称代名詞(方言) 一.おれたち、わしら

                  二.おいら、おれ        一、二両方男女ともに使うことができる。



二.にはこんな例文がありました。俺不知道 /おいらは知らねえよ。



調べてみたところ、“俺”は山東方言らしいです。このサイトに書いてありました。



http://bbs.zol.com.cn/542_1672.html



ウィキペディアによれば“俺”というのは山東方言における一人称だそうです。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E4%BA%BA%E7%A7%B0



じゃあ“俺”って訳は間違いじゃないの?ということになりそうですが、なら“老子”と訳せばいいのでしょうか。あくまで僕の中国語経験からですが、傲慢さを匂わせる“老子”を普段使っている人っていないと思います。上のドラマでも“老子”って「俺」っていう割と親しい中でも使われるフラットな感じではなく、むしろ「俺様」とか相手をすごませるような場合に使われている気がします。だからここで“老子”を使うのも間違いだと思います。



じゃあどうすればいいのか?僕は訳者が訳したように“俺”を使って良いと思います。



・・・・え(・Δ・)?



こんだけご託並べておいてそれかよ!!って思われる方もいるかもしれませんが、僕がここで問題にしたいのは、訳者が“俺”という言葉に注釈を付けなかったことなんですよ!!クリリンさん!!



学術書だったら注釈バンバン入れてもさほど問題はありませんが、こういった小説の場合、いちいち注釈ばかり入れると、原文が持つ勢いというか流れを損なうことになりかねません。ですが、こういったどうしても必要に迫られた場合、例えばこの“俺”に見られるような、お互いの言語文化に触れ、尚且つシフト不可能(一つの翻訳の限界)な場合、注釈はキッチリ入れておいておかなくてはいけないと僕は思うんですよ。



だから、そっとここでは注釈を優しく添えておくといいですね。


日本語で、「俺」は一人称を指す。と始めます。


それから、


男女どちらが? → 現代では普通は男


この「俺」にはどんあ印象があるか? → 私や僕といった一人称に比べて傲慢な感じ



ではこんな注釈でどうでしょうか?



日本男性的第一人称代词,会给人比较骄傲的感觉。



これなら、今まで性格が穏やかで、「俺」という人称代名詞を使ったことのない主人公が初めて「俺」という言葉を使った重みが読者に伝わりそうですね。



今回は、人称代名詞と注釈についてのお話でした。



では、またね~~ ノシ