「お前ら地獄見たことねーだろ!!」~有吉弘行~
どうも、人を傷つける毒舌家、Kです☆
皆様天気のいい週末、いかがお過ごしでございましょうか。
僕はyoutubeを1日中みながらごろごろし、外出するのはご飯だけという
完全なるヒキオタ生活を満喫しております。
表題の有吉弘行ですが、ここ数年毒舌とあだ名付けキャラで再ブレイクしております。
僕も大好きでして、「有吉おもしれーwww」と思いつつ、UP動画をみてました。
なぜ彼は面白いのか。やはり相手にギリギリ不快感を与えない範囲内で
的を得た毒舌を吐くセンスがあるのだと思います。
彼にあだ名をつけられた芸能人嬉しそうですもん。
「お前らが世間で思われてるイメージをそのまま教えてやってるだけだよ!」
と自ら言っているように、完全に確信犯なのでしょう。
つまり彼は卓越したコミュニケーション能力(人を傷つけないという意味での)
とユーモアのセンスで「
体制内反体制」としての存在を許された数少ない、本当に希少な立場を気づくことに成功したといえます。
そもそも「芸人」というものの原点は
「道化師=ピエロ」です。
中世以前、ピエロというのは王様の持ち物、ペット的扱いでした。
王様を笑わせ、気分をよくするためだけに存在する、それがピエロという
職業でした。
王様の機嫌を少しでも損ねたら即打ち首、そのかわり、王様をイジったり、
バカにすることを唯一許された存在。
部下や国民に直接バカにされたら王様としての権威が保てない。
でも誰も物がいえない空気になるとその組織は危ないし、文字通り
「裸の王様」になりかねない。
だから隣にどうしようもないアホを飼って、
「アホがいうなら仕方ない」
という状況を作っていたわけです。
そういう意味でいえば有吉はまさしく現代のピエロであるといえるでしょう。
ただそうなると疑問がでてきます。
そういった「ピエロ」としての役割は元々「お笑い芸人」が全員持っている役割
のはず。
なぜ有吉だけが面白いのか?
これは非常に資本主義社会の成熟の仕方として興味深い現象です。
芸人に限らず、芸能人というものはミュージシャンも役者も、飯の種は
「おひねり」
です。見ている客を気持ちよくすることによって見物料をもらう。
ここでは当然芸能人の社会的階級は底辺、最下層です。
だがしばらくしますと、おひねりを多くもらえる人気物と、全くもらえない
ダメなヤツがでてきます。
人気者はひっぱりダコなので、金銭的には余裕がでてきますが、今度は多忙で
事務作業やスケジュール管理が一人ではできなくなります。
そこで、
おひねりを少し分けてやるorおひねりをもらいやすい舞台に自分の前座で
出してやることで、人気のないやつを自分のアシスタントとして使い出します。
これが何年も続くと「自分はおひねりをもらう芸に向いてないから、アシスタント
に徹しておひねりの分け前をもらう仕事で一生食ってこう」という人間や「自分もおひねりを多く
もらえる人間になりたいから弟子入りして芸を盗もう」という
弟子入り志願者が増え、人気者を頂点に、階級構造がでてきます。最下層階級の中で、更に階級がわかれ
ていくわけです。
そうなると「おひねりもらい業」自体が組織化され、売り上げ、収益規模もデカクなってきます。
でもどんなに儲けてもしょせんは河原乞食、社会的階級は最下層のままです。
ところが、近代になるにつれ先進国では身分制度が廃止され、基本階級による貴賤はなくなりました。
そのかわり「資本主義」というわかりやすい名の下、「お金を稼げるヤツが一番エライ」という
「新しい階級制度」が誕生します。
ここまできて、今までバカにされてきたおひねりもらい業でも、お金を稼げば社会から認められる
という社会システムが誕生したのです。
そして決定的な社会的変化が訪れます。マスメディアの発達です。
それまではいくら人気者は儲かるといっても、おひねりの最大収益に限界は存在していました。
舞台の収容人数×1年365日×1人あたりのおひねり収入 という計算式以上の収益は、理論上不可能だったのです。
となるとどんな人気者でも年収の上限はそんなに高くなく、「資本主義の論理」においても
おひねりもらい業の社会的地位には劇的な向上はありませんでした。
ところが、メディアが発達し、TV・ラジオ・CDなどで舞台に直接こない人間にも
芸をみせ、おひねりをもらうことが可能になりました。
上記の計算式でいうと「舞台の収容人数」の値が1~∞まで調節でき、
本当の人気者であれば、際限なくお金を稼ぐことが可能になったのです。
今の日本の芸能界の大物といわれる人間たちは、皆マスメディアで自らの芸を披露する
ことによって、多額のおひねりを稼ぎ出し、今の地位を築きました。
ここまできて、今まで資本主義の論理上も社会的階級最下層であったおひねりもらい業
が遂に、最下層から抜け出すことが可能になったのです!
長くなりましたが、こういった経緯を踏まえつつ、有吉に話を戻します。
つまり、「ピエロ」の立場であり、本来であれば他の社会的階級に向かって最下層
の立場から毒を発する役目を負った「芸人」が、稼げるお金の上限撤廃による
自らの社会的地位の向上により、成功者に限っては他の社会的階級の人間より階級が上、
つまり「権威化」してしまったのが今の芸能界なわけです。
まあハッキリ言って今のお笑いに爆発力がないのはそのせいなのですが。
島田紳輔や和田アキ子が典型ですが、「最下層」だからこそ許された毒舌や人を傷つける物言いを、
社会的地位が向上した後も同じように行うと、それはただの弱い者イジメです。
そして有吉の価値というのはそこにあります。
「元々は反権威的なポジションにありながら、自らが権威化してしまったがゆえに
誰もものを言えなくなった」
タイプの人間に毒を吐くセンスが彼は抜群にあるんです。
表題「pierrot of pierrot」とはつまりそういうこと。
道化師専門の道化師。彼の地位はしばらく安泰でしょう。
「王様は裸だ!」と叫んでいたはずが、いつの間にか自分が裸になっていた
ことに気づかない老いぼれピエロがメディアに登場している限り。