特例措置が廃止されればどうなるかといえば、これまで最大9割軽減されてきた75歳以上の高齢者の医療保険料が3倍にハネ上がる。例えば年金80万円の独り暮らしの高齢者は、月額370円が1120円に。夫婦で計160万円の世帯なら、740円が2240円になる。
厚労省は早ければ16年度から特例措置を段階的に廃止する方針で、15日の社会保障審議会の医療保険部会で大筋了承された。
「ちなみに入院給食費の自己負担額も、1食当たり260円が460円に引き上げられます。1日3食で計600円、月に1万8000円の負担増ですから、消費増税でカツカツの高齢者にとってみれば、まさに“死活問題”でしょう」(厚労省事情通)
■マクロ経済スライドでさらに締め付け
これに追い打ちをかけるのが年金減額の前倒しで、厚労省の「マクロ経済スライド」を強化する案が、これまた15日の社保審年金部会で大筋了承されている。
物価が上昇すれば、年金の給付額も原則上がるが、そこから財政悪化分(14年度の厚労省試算で1.1%)を差し引くのがマクロ経済スライド。物価が2%上がっても、給付額は0・9%増というものだ。物価上昇率が0~1.1%の場合、現行では給付額は据え置きとなっている。が、今回の厚労省の“強化案”では、物価上昇率が何パーセントだとしても財政悪化分の1・1%を減額する。
0・1%の物価上昇なら、給付額はこれまでの据え置きが、1%減になるのだ。
「要するに、高齢者に財政悪化分をすべてかぶらせ、給付額をカットしようというわけです」(前出の厚労省事情通)
加えて、来年10月からの消費税10%も予定されているから、まさに高齢者に「死ね」と言わんばかりだ。
経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。
「搾れるところから二重取り、三重取りの負担増という、いかにも場当たり的なやり方では、中高年の生活不安は増すばかりです。金融資産の6割を持っている高齢者の消費マインドも、ますます冷え込んでいく。年金受給者の暮らしはもちろんですが、日本経済全体にとっても大きなマイナスでしょう」
大企業優遇の安倍政権は、国民生活の足を引っ張ることしか能がない。
「日刊ゲンダイ」より転載
高齢者いじめも極まれりだが、現役世代も恵まれない。
実質賃金の低下
14カ月連続の重み受け止めよ
これはもう、「危険水域」というしかありません。厚生労働省が17日発表した毎月勤労統計調査(毎勤統計、8月分確報)で、勤労者の賃金が物価上昇分を差し引いた実質で、14カ月連続のマイナスとなったことが確定したのです。1年以上にわたって実質賃金が減り続けているというのは異常このうえなく、勤労者の暮らしはじりじりと悪化しています。企業がもうけを増やせば賃金も上がると、安倍晋三首相が唱える経済の「好循環」はまったくウソです。賃金を引き上げ、実質賃金を改善するとともに、消費税の再増税は直ちに中止すべきです。
「アベノミクス」の破綻
8月分の確報によれば、実質賃金は1年前にくらべ、3・1%の減少です。マイナス幅は、9月末に発表された速報での2・6%減よりさらに悪化しました。
実質賃金は、勤労者の現金給与総額(名目)から消費者物価の上昇を差し引いたものですが、昨年6月に0・3%の増加になったのを最後に、14カ月連続のマイナスです。しかも昨年から今年4月までは1%台からせいぜい2%の減少でしたが、消費税増税があった今年4月に3%を超すマイナスに落ち込み、春闘などがあった以降も減少が続いています。
実質賃金の落ち込みは4月の消費税増税前から始まっており、「アベノミクス」を自称する、安倍政権の経済政策の影響は明らかです。「アベノミクス」は、インフレ政策で物価を上昇させることを目標にした金融政策と、公共投資など財政支出の拡大、さらに「世界でもっとも企業が活躍しやすい国」を掲げた規制の緩和・撤廃などが柱です。その結果が大企業のもうけと内部留保を増やしただけで、国民の暮らしはよくならず、食料品やガソリンなど消費者物価を上昇させているのです。安倍政権が発足してからほとんどの期間に実質賃金の低下が続いているのは、「アベノミクス」が「好循環」を生むどころか、百害あって一利もないことを証明しています。
それに加えて4月からの消費税増税が、暮らしに打撃を与えています。消費税率の5%から8%への引き上げは、消費者物価を一気に上昇させ、実質賃金を大幅に低下させました。毎月3%もの実質賃金の目減りが続けば、国民の暮らしは目に見えて悪化します。消費が落ち込み、商店などの売り上げが減り、工場などの生産も落ち込んでいくのは明らかです。経済が「好循環」するどころか、賃金の伸び悩みと実質賃金の低下、消費の低迷、生産など経済全体の落ち込みという、まさに「悪循環」に突入しています。
悪循環を断ち切ってこそ
こうした悪循環を断ち切ってこそ、国民の暮らしもよくなり、経済も再建できます。大企業のもうけと内部留保を活用して賃金を引き上げ、雇用を拡大すること、大企業と大金持ちに応分な負担を求めて財源を確保し、社会保障の切り捨てから充実へ抜本転換することが不可欠です。
何より重要なのは、来年10月からの消費税率の10%への引き上げを中止することです。消費税増税の強行は、暮らしも経済も破綻させます。大企業のもうけ一辺倒でなく、国民の所得を増やす経済政策へ転換することが、日本経済を立て直すために求められます。
「しんぶん赤旗」より転載
こんな惨憺たる状況を受けて、ナント!フジサンケイグループの「夕刊フジ」もこんな記事を掲載した。
安倍晋三応援団からも、こんな批判的な記事が出てくるようでは、嘘で固めたアベノミクスの終焉も近いな。
小渕優子の辞任問題を契機に安倍晋三にも退陣して貰いたいものだ。
実質賃金急下降が示す消費増税災禍
それでも再増税迫る官僚、政治家、学者…
【お金は知っている】来年10月からの消費税率再引き上げ論議が国会で始まったが、その前に、総括すべきは、今年4月の増税による惨憺(さんたん)たる結果である。中でも、憂慮すべきは下降に加速がかかった実質賃金動向である。
アベノミクスがめざす「脱デフレ」とは、単に物価を2%まで引き上げるという日銀の「インフレ目標」達成にあるわけではない。物価の上昇率を上回る幅で名目賃金を継続的に引き上げて、消費需要を増やして景気の好循環を作り出すことだ。何しろ、「15年デフレ」は、物価の下落を上回る速度で賃金が下がり続けてきた。そのトレンドを逆転させようと、安倍晋三首相は産業界に賃上げを働き掛けてきた。
グラフは円の対ドル相場と、物価の変動分を加味した実質賃金の指数を、リーマン・ショックが起きた2008年9月を100として追っている。アベノミクスが始まる12年12月までの特徴は、円安局面ではわずかながらでも実質賃金が上向くが、円高局面では実質賃金が大きく落ち込む点だ。全体としては1997年4月の消費税率引き上げ(3%から5%へ)以降、実質賃金が下落トレンドにあり、今年4月の税率8%へのアップ以降、下落速度に加速がかかった。
もう一つ、アベノミクス「第1の矢」である日銀の異次元金融緩和で円安局面に反転したのだが、円安にもかかわらず実質賃金が下落しており、円安=賃金アップという定理が消えてしまった。円安効果で輸入コストが上がって消費者物価上昇率が1%以上上がったのだが、名目賃金は上がらないので、実質賃金はむしろ押し下げられた。4月には春闘で1%程度のベアは実現したのだが、消費税増税分の価格転嫁で消費者物価は2%程度、円安効果と合わせて3%台半ばまで上がった。実質賃金の急降下はこうして始まった。
消費税増税でこうなることは、97年度増税や昨年の実質賃金の下落気味のトレンドからみても明らかに予想されたはずなのに、政府も民間エコノミストの多くも楽観視してきた。その根拠は、円安に伴う企業収益アップや株高などアベノミクス効果に対する過信としか言いようがないのだが、円安は物価だけを上げさせ、賃上げには結びつかない。株高が家計消費を押し上げる効果は乏しいうえに、外国人投資家は上がれば、機を見て売り逃げるので、上昇基調は突如打ち切られ、瞬く間に下落局面に転じる。
円安は即座に物価を押し上げるが、景気を拡大させるまでにはかなり時間がかかるのだ。安倍首相は、アベノミクスが消費需要、賃金・雇用の拡大サイクルを生み出すまで8%への消費税率アップを延期すべきだった、というのが、とりあえずの教訓のはずだ。
1年前、安倍首相に予定通りの増税を進言して、アベノミクスを壊してしまったのに、さらに増税せよと迫る官僚、政治家、御用学者が跋扈(ばっこ)するこの国はいったいどうなってるのか。 (産経新聞特別記者・田村秀男)