「新聞報国」の再現こそ「国難」 権力との一体化の危険性 情報保全諮問会議座長に「渡辺恒雄氏」 | 函南発「原発なくそう ミツバチの会」 ノブクンのつぶやき

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特定秘密保護法が成立した後の今年1月14日、安倍政権は「情報保全諮問会議」(7人)の座長に読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆の渡辺恒雄氏を選んだ。渡辺氏の個性や安倍氏との距離の近さもあって、このニュースに驚いたジャーナリストも多いと思う。

 
 それに加え、筆者は別の「怖さ」も感じた。読売新聞は現在、日本新聞協会の会長社でもある。渡辺氏は個人としての参画であろうが、権力側の選別を交えながら新聞界全体が名実とも権力と一体化していくエポックに思えてならないからだ。


 今の日本の状況下で、仮に「国難」が喧伝されたらどうなるか。

 
 山中恒氏の労作「新聞は戦争を美化せよ!」は、戦前の新聞界がいかにして時の権力、すなわち軍部に協力していったかを豊富な資料を基に詳述している。それによると、太平洋戦争の開戦前、大阪朝日新聞の取締役業務局長は「新聞報国の秋」と題し、社内向けにこう檄を飛ばした。

 
 「こういう未曽有の大事変下においては(略)一億一心に民心を団結強化するためには真に国策を支持し、国民の向かうべき道を明示する良き新聞を普及することが、適切有効であることは今更論じるまでもありません」

 
 東京朝日の記者もこう書いている。
 「決戦下の新聞の行き方は、国家の意思、政策、要請など、平たく言えば国の考えていること、行わんとしていること、欲していること等を紙面に反映させ、打てば響くように国民の戦争生活の指針とすることが第一(略)各大臣の演説、偉い武官、文官の談話、法律や規則の報道、解説記事がその一端です」と。 

 
 「未曽有の大事変」を前に権力側に擦り寄った挙げ句、一体化してしまった報道の罪。「未曽有の大事変」の後に、「破滅と破壊」が控えていることを探知できず、国民をそこへ連れて行った重い歴史。その過程では、権力に疑義を唱えた・唱えようとした名も無き記者があちこちの社内でパージされていったはずである。あるいは、パージされる前に自ら進んで迎合し、その時の自らの地位や待遇を守っただけか。

 
 一体、「未曽有の大事変」とは何か。その萌芽は当時、記者に見えなかったのか。戦争は自然現象ではない。隕石の地球衝突のような「不可避」はあり得ない。

 
 権力は嘘をつく。自らの地位や栄華を守るため、責任回避のためなら、何度でも、どこまでも、だ。

 
 筆者の狭い経験でも「北海道警察の裏金」「北海道庁の裏金」などの取材過程で、権力側は虚偽を重ねた。嘘の歴史は枚挙に暇が無い。かつての大本営発表も沖縄返還密約も意図的な嘘だった。

 
 秘密保護法成立後のいま、ジャーナリストに問われるのは、権力側の嘘を許さないことだ。それには取材しかない。権力者の言動に対する評価や論評は、評論家に任せておけばいい。言動の背後に隠れている事実、旺盛な意欲と鍛え抜かれた取材力によってのみ明るみにできる事実。秘密保護法があろうとなかろうと、それらを次々に世に送り出す。それがジャーナリストの仕事であり、あなたにしかできない仕事だ。



JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2014年1月より転載



ホントに頼みますよ、ジャーナリストのみなさん。
特にNHKの記者諸君には、ジャーナリスト魂を見せて欲しいものだ。
秘密保護法を実行させない国民世論を作り上げないと駄目だ。