公共放送のトップとしてあまりに見識を欠いた発言に驚きを禁じ得ない。
NHKの新会長に選出された籾井勝人(もみいかつと)氏が就任会見で、従軍慰安婦や領土問題をはじめとする外交・政治分野の懸案事項について、政治的中立を疑われかねない持論を次々と展開した。
立場をわきまえない、乱暴な発言であり、到底容認できない。会長を選んだ経営委員からも批判が出ている。当然だ。
新会長は経営委員会で選出された。どういう経緯で籾井氏が選ばれたのか疑問がわく。28日には委員会が開かれる。その場で責任ある対応が求められよう。
会見では、看過できない数々の発言が飛び出したが、慎重であるべき中国、韓国との歴史認識問題に関する発言は、とりわけ重大だ。
籾井氏は従軍慰安婦問題について、「戦争をしているどこの国にもあった」と述べ、日本に戦後補償を要求する韓国の立場を批判した。
NHKでは過去に、慰安婦をテーマに特集番組が作られた際、安倍晋三氏らの意をくむ形で改編され、訴訟に発展した経緯がある。
まるで政権の代弁者であるかのような発言に、強い違和感を覚える。
任期中の最重要課題として挙げたのも、尖閣諸島と竹島の領有権問題だった。籾井氏は「日本の立場を主張するのは当然だ」と強調した。
念頭にあるのは、外国人向けの国際放送の拡充に伴い、その主張を内外に広めることにある。
NHK会長がこうした踏み込んだ発言をするのは異例だ。
報道の自由や知る権利が侵害されるとして、多くの報道機関が危機感を募らせている特定秘密保護法についても「法案が通ったのだから言ってもしょうがない」と述べた。
これが、多様な視聴者の期待に向き合うNHKを率いる会長の、公の発言なのだろうか。
会長を支える経営委員会のメンバーの大多数は、安倍首相と近い関係にある。政治との距離をいかに保つかが、今回の会長就任の最大の焦点だったはずだ。
会見で籾井氏は、「放送法があるが故に、われわれは(政府との)距離を保てる。私は政治家も知らない」と明快に答えた。
放送法は、放送が守るべき原則として「不偏不党」「表現の自由」を掲げ、会長に番組編集権を与えるとともに、「政治的公平」と「多様性の尊重」を求めている。
残念ながら会見からは、それを貫く覚悟の一端も読み取れなかった。
籾井氏の資質を厳しく問い、発言の真意をたださなければ、視聴者は納得しない。
「北海道新聞」社説より転載
僕の友人知人の中でも、NHK受信料拒否の運動を進めている人もいた。僕はそれには組みしなかった。
時々光るようなドキュメンタリーを放送したりしていたからだ。
内部的には頑張っているNHK職員もいることを知っているから、受信料を払い続けてきたが、こんな会長の意のままになるNHKなら、そうした考え方も改めないといけないかもしれないな。