原発の真下に活断層があったら、周辺住民はたまったものではない。断層が動けば、マグニチュード(M)9だった東日本大震災よりずっと小規模でも、直下型の強烈な揺れに見舞われる。
当然、活断層の上に原子炉は設置できない。ところが、北陸電力の志賀原発(石川県志賀町)の真下を活断層が走っている可能性があるという。
志賀原発には2基の原子炉があり、1号機は1993年に、2号機は2006年にそれぞれ運転を始めた。この期に及んで経済産業省の原子力安全・保安院は、ないとしてきた活断層が「あるかもしれない」と言い出し、北陸電力に再調査を求めた。
活断層は、約13万年前から現在までの間にずれて地震を引き起こした断層を指す。北陸電力の資料を見た専門家からは「典型的な活断層」という声が上がっており、その可能性は相当濃厚なのではないか。
保安院はまた、関西電力大飯原発(福井県おおい町)にも再調査を求めた。敷地内を通る「破砕帯」という軟弱な断層が、活断層に当たらないかどうか再確認するためだ。
おかしな進め方だ。再稼働を決める前に確認するのが当たり前であって、順序が逆だろう。破砕帯は日本原子力発電の敦賀原発(福井県敦賀市)でも確認され、ずれることもあり得ることから廃炉の可能性が浮上している。
いずれにせよ再調査で活断層と分かれば、国の責任で真剣に廃炉が検討されなければならない。仮に断定には至らなくても、活断層の可能性がどうしても否定できないなら、やはり廃炉を視野に入れるべきだろう。そこまで実行して初めて、安全性が追求されたことになる。
審査を担当した保安院のずさんさが明らかになった以上、全国の原発で白紙から厳格な再審査を実施すべきだ。
これまでの国の審査は全く信用できない。こんな耐震審査がまかり通っていたことには空恐ろしささえ覚える。
今回問題となっている断層は志賀原発の敷地内を走り、1号機の原子炉建屋をかすめている。2号機の建屋も1号機と隣接しており、活断層であれば原子炉を移転でもしない限り、そのまま運転することは無理だ。
断層の存在は前から分かっていたが、北陸電力は「活断層ではない」と見なし、保安院も09年にうのみにしていた。だが専門家が図面を見れば、すぐ活断層だと分かったのではないか。
当時、審査を担当した保安院の職員は「活断層かどうか確認する意識がなかった」と意味不明の説明をしているが、そもそも確認できる能力があったのかと疑いたくなる。
断層の危険性については、地震や地質の専門家が以前から訴えていた。なのに国や電力業界は、都合のいい「原子力ムラ」の知識と技術で押し通してきたのではないか。原発の安全性を骨抜きにした要因は、その硬直的な姿勢だ。
「河北新報」社説より転載