何年か前に書いたクリスマス小説(´∀`)
『プレゼント』
12月24日と25日の境頃のこと。
粉雪が舞い始めた時間。
ザッ、ザッ……と、外でダンボールの箱を引きずるような音が聞こえた気がした。
しばらくウトウトしていたが、さっきの音がどうにも気になるので、寒さを耐え忍んで外に出てみると、アパートの俺の部屋のドアの横に、リボンのついたダンボール箱が置かれていた。
生き物っぽい気配を感じて、蓋を持ち上げてみると、
「ゔ~、寒いぃ~」
安っぽそうな猫耳をつけた女の子が、毛布をマントみたいに羽織ってぶるぶる震えていた。
猫耳には『みゅー』と書かれた札が結わえつけられている。たぶん名前だろう。
年の頃は10代半ば。なかなかかわいい。
あまりにいかがわしい。
関わりを持つべきでない。
そのまま手を下ろして蓋を閉め、部屋に戻ろうとすると、
「えー!? 放置ですかぁ!??」
箱の中から猛抗議の声。
他の住人の目(耳?)もあるので、とりあえず部屋に入れざるをえなかった。
部屋に入るや否や、猫耳女の子は腕を広げてパッと毛布を脱ぎ落とした。
毛布の下は、お約束のように…… 素 っ 裸 で……
「え、えっとぉ……メリークリスマス♪♪」
努めて明るく、という感じで叫んだ。
「はぁ?」
なんだこいつは?
「あ、あの、ご主人様……なんだこの子は?って顔してますよね……わ、わたし、怪しい者ではないですよ。今日までショップの在庫だったんですけど、今日の夕方、サングラスとマスクで顔を隠してる男の人に買われて、ダンボールに入ってここに来るようにって命じられたんです」
怪しい者ではないなどと本人が言ったところで……こんなの、どう考えても、新手のいかがわしい商売(押し売り 風 俗 とか…?)としか思えないではないか。
俺のこと、ご主人様などと呼んだりもして。
その前に……
「とりあえず、その恰好(裸)では見苦しいから、これ着ろよ。男物だけど、ないよりましだろ」
俺は古いシャツとスウェットパンツを貸して、着させた。
そうしないと ム ラ ム ラ して……こいつに手を出して、大変なことになってしまいそうだから。
「う~ん……裸がわたしの制服なんですけど……でも、服着てるほうがあったかいですね、あは♪」
それから、みゅーは自分の役割を話しだした。
「わたしはずっとずっとご主人様にご奉仕するために贈られたんです。ご奉仕といっても、生まれが卑しいわたしは え っ ち なことしかできませんけど……あ! そうだ!」
さっきまで入っていたダンボール箱の底からトランプを取り出し、
「え っ ち のほかには、これならできます! 神経衰弱とババ抜きをしてから、え っ ち をしましょう♪」
と、フ シ ダ ラ と無邪気が ぐ ち ゃ ぐ ち ゃ になったようなことを言った途端に、みゅーの腹がグ~ッ♪と鳴った。
「腹へってんだろ。食えよ」
明日の朝食にするために残しておいたちゃんこ鍋を、みゅーにくれてやることにした。
「え……わたしなんかに……こんなに優しくしてくださるなんて……」
「いいから食え。こたつに入って」
みゅーはしきりにペコペコしながらも、いったん箸をつけたら我武者羅だ。
そうとう腹が減ってたんだな。
「夜は極寒だから、追い出したりはしない。ここの廊下とかで凍え死なれたりしたら後味悪いからな。朝になったら出てってもらう」
「えー!! それじゃあ契約違反なんですよー。ずっとご主人様と過ごす、っていう約束なんですから」
「とりあえず、早く食え」
みゅーはぶつぶつ言いながらも、盛大に食った。
見事な食べっぷりを見ていると、ほのぼのとした気分が湧き出してきて、俺のこわばった顔の筋肉が緩みそうになった。
「ふー、おなかいっぱいですー♪ あったまったー♪ ありがとうございました、ご主人様♪♪」
「うむ。『ご主人様』は余分だけど」
「ところで、ご主人様……」
みゅーは俺の瞳の奥を覗き込んで、
「わたしは体が凍えてたけど、ご主人様のおかげであったまりました♪ でも、ご主人様は心が凍えたままです! あっためるのがわたしの仕事ですっ!」
みゅーはそう言って俺に擦り寄り、俺の胸に顔をくっつけて ハ ァ ハ ァ 息をかけてきた。
【心が凍えてる!?】
……そうだ。
俺の心は荒涼としている。
こんな初対面の奴が見てもわかるくらい凍えてるんだ。
何しろ、生まれてこの方、いいことなど何一つなかったのだから。
凍えて当たり前だろ。
だけどな、それを面と向かって言う奴があるか!?
俺はカッとなり、みゅーを突き飛ばした。
「出てけ!」
短い嵐が去って、俺はまた一人になった。
なんだか体の奥にぽっかり穴が開いたみたいで、しかも、穴が開いたら軽くなるはずなのに、重苦しい。
俺は20分前までは一人きりだった。
また一人になったとはいえ、一人でなかったのはたったの20分間だ。
それなのに、なんだろうこの寂しさ切なさは……。
コタツの上に、みゅーの唯一の財産であるトランプが残されていた。
それを見た俺の目からポロポロと大粒の涙がこぼれ、止まらない。
気がつけば俺は寒空の下、息を切らして走り回っていた。
……あいつ、あんな薄着で……俺があっためてやらないといけない。あったかい部屋、あったかい食べ物、そして、体の温もり……それから……俺も、みゅーに……あっためてもらいたい!!
奇跡的に、みゅーを見つけ出せた。
みゅーは公園のトイレで……俺が与えたシャツとスウェットパンツの上から胸と 股 間 をいじくっていた。
「あん……あっ、あっ、あ ぁ ん……こうしてたら、あったかいんです……」
極寒の中で、顔を上気させて。
「みゅー! 俺があっためてやる!」
俺は氷のように冷え切ったみゅーの体を抱きしめた。
「かわいそうに……こんなに冷たくなって……」
みゅーの頭に俺の熱い涙がこぼれ落ちた。
俺は認める。退廃していた俺の心に愛の火が灯ったことを。
「わたしなんて……え っ ち なだけの子ですよ……」
みゅーが、おどおどと言った。
「そんなことはない! みゅーちゃんは、ぽわーっとあったかい気持ちにさせてくれる、世界でいちばんかわいい子だ!」
「おなにが趣味の恥ずかしい子ですよ……」
「俺だって工口い! みんな工口いんだ! 恥ずかしくないっ!!」
俺はみゅーのスエットパンツを脱がせて、背中を向けさせて壁に手をつかせた。
そして背後から、みゅーの蕾のような お ま ん ま ん を貫いた。
「あ! あ ぁ ぁ……ご主人様……だ、大好きです……仕事とか、そんなのじゃなくて……わたし、優しいご主人様がほんとに好きです……」
みゅーがかすれたような声を漏らした。
みゅーの お ま ん ま ん は、さっきまでの一人 エ ッ チ で、すでに潤いまくっている。
体の奥をこすって、摩擦で暖めてやる!
俺は夢中で腰を ピ ス ト ン させ、グ ラ イ ン ド させた……
遠くで聞こえていたサイレンの音が次第に近づき、気がつけば警官たちに取り囲まれていた。
「人身売買罪で逮捕する」
「え? 人身売買!!?? 淫 行 とか、ワ イ セ ツ 物陳列罪じゃなくて?」
「人身売買罪だ。お前が人身売買組織からこの子を買った証拠がある」
警官はそう言い、俺に写真を見せた。
サングラスとマスクで顔を隠した男が、人相の悪い男に金を渡しているところが写っている。
顔の半分が隠されていても、わかる……。
これは、俺だ……。
おそらく俺は過度に捻じ曲がった心理作用で、二重人格か何かになったのだろう。
そして、みゅーは、もう一人の俺が、俺自身を救うために贈ってくれたプレゼントなのだろう。
人生を愉しむ気概を蘇らせてくれるために。
************
みゅーが拘置所に面会に来てくれた。
会話は少なかった。
語りたい事はたくさんあるが、今生の別れなどでないことを、俺もみゅーも知っている。
時が過ぎれば、いくらでも語り合える時間を持てる。
俺たちはまだ、始まったばかりなのだ。
俺たちは硬い仕切り板を挟んで、キスをした。
アクリル板に、みゅーの唇の温もりが伝わってきた。
仕切り板に小さくぽつぽつと開けてある穴から、みゅーの唾液が じ ゅ わ じ ゅ わ 溢れ出てくる。
俺はそれを啜った。
「お、おいこらなにをしておるか!!」
看守が俺を羽交い絞めにして監獄に引っ立てて行った。
「ご主人さ……いや、○○さぁぁん、○○さんが出所するまでずーっとお部屋で待ってますよぉぉぉぉ……」
みゅーの声が遠ざかっていったが、俺はもう寂しくない。
終わり