*******


朦朧と時が流れて、放課後。
絢ちゃんが笑顔で駆け寄ってきて、
「買い物につき合って♪」
絢ちゃんとは帰る方向が正反対なのだけど、しょっちゅう一緒に帰っている。
私はいつも誘われるのを待っているような状態で、誘われて断ったことはない。
だけど、気がつくと私は……頭の中でぐるぐると、断る理由を考えていた。
「ごめんね…………頭が痛いから……帰る」
ほとんど他人が喋っているみたいな口調で、唇の間から言葉が出た。
途端に、絢ちゃんが笑顔を崩さずにこわばった。


私は今朝、保身の策を考えて、危険なことはしないって決めたはずなのに……
絢ちゃんに嫌われそうなことは絶対にしないって心に誓ったはずなのに……
何をしてるんだろう。
揺らぎまくっている。
だらしない。
でも、紗季と会うわけじゃないから。
私がやりたいことは、急いで家に帰って、部屋にこもって、汗のついた体のままだけど……


いや。
もし会えるとしたら……
ばったりと、会えたとしたら……
もう一回キスをして、今度はしっかり胸を触って……
その後のことはあんまり考えていないけど……たぶん……


あ、だめ!
考えないでおこう。
そんなのを考えたら、帰り着くまで体がもたないよ……。

*******


昼休み。
一学期まで所属していた文芸部の話し合いがあるからと絢ちゃんに嘘をついて、相変わらず男の子たちに囲まれている紗季を横目に見ながら教室を抜け出した。
紗季が首をかしげるような動作をして、一瞬目が合った。
一刹那、紗季の顔が寂しそうに曇った気がしたけど、それは私の願望が引き起こした錯覚だろう。


行き先はコンピューター室。
目的は、もちろん レ ズ に関する調査。
部屋に誰も入ってこないことを何度も確かめながら、文章とか画像とか、いろいろ検索した。
私の筆力ではとうてい上手く書ききれないようなすごいものが、幾本もの矢のように、私の目に、脳に、胸に、そして……いちばん敏感な、股 間 のあの場所に……突き刺さった。
私はすっかりのぼせてしまい、午後の授業をまともに受けられなかった。
今や、同性への エ ッ チ な願望といえば、絢ちゃんより紗季……。
実感を伴っている分だけ、より強い。
紗季の存在自体が私を殴打する。
切ない。
紗季を囲む男の子たちのことなど、どうでもいい。
あれが女の子たちでなくてよかった!とさえ思った。
私は気づいた。
というより、とっくに気づいていたことを認めた。
認めてはいけない!と自分にはめていた枷を外して、ぴたっと心がかたまった。
とはいえ、仲良くしたくても、してはいけないのだけど、本当の気持ちを自分の心の中で認めることは自由だ。
紗季が……好きなのだと思う。


目を開けていても、止められない。
気の抜けたように座ったまま、視界の隅に映る紗季の後姿に……浮かんでは消えてゆく妄想の中で何をしたのか……疚しいことを遮断する脳内回路の活動によって、思い出すことができない……。

*******


「昨日、鞠川と相合傘したんだって? 梅ぼんが見たって言ってた。あんな奴とどうしてそんなことするの? 理解に苦しむなぁ」
絢ちゃんが私を責めながら、眼球だけを紗季に向けた。
学校に着いたばかりでまだカバンも持ったままの紗季が、さっそく三人の男の子と朝の会話を楽しんでいる。
いつものように、男の子たちがあらかじめ決められたルールに従っているみたいに、順番に均等に紗季に話しかけて、紗季はそれぞれに短くぽつりぽつりと答えているだけだし、みんな声をひそめているから何を話しているのかわからないのだけど、紗季の様子は女の子だけの中にいるときとは全然違う。
基本的におどおどしている態度は抜け切らないけど、表情に生気があって楽しそうだ。
大輪ではないが、笑顔が見える。
軽いボディタッチも行き交っている。
ちょっと前まではこんな光景にムカつきを覚えていたのだけど、どうしてなのか、今はあまりムカつかない。
代わりに、少し、寂しい。
男の子たちに囲まれているから近づけない……距離感というより、障壁。
私と紗季のそれぞれが違う世界に隔てられているような。


……なんて、今は寂しがったりしている場合じゃない。
紗季に対する“不適切な”感情を隠し通さなければいけないのはもちろんだけど、それ以前の問題。
大ピンチが差し迫っているかもしれないのだ。
お喋りで無神経な梅田さんに見られた!
あの人のことだから、面白がって私たちの後をつけて、一部始終を目に焼きつけたかもしれない。
そして、嬉々として言いふらすに違いない。
「濡れてたし……寒そうでかわいそうだったし……この前電車で話をしちゃったから無視もしにくかったし……」
私は最後の審判を受けるような気持ちで、恐る恐る答えた。
「ふうん。美羽ちゃんが優しい人だってことは長年のつき合いでよくわかってるけど、あんまり誤解されそうなことはしないほうがいいよ。変なことしてたら、美羽ちゃんも鞠川みたいに孤立しちゃうよ」
後半は冗談っぽい口調だったけど、目は笑っていなかった。
とりあえず、キスのこととか胸に触ったこととかについては触れられなかった。
致命的な場面は梅田さんに見られていないようで、助かった。
帰り道であんなことするなんて……私としたことが、愚の骨頂だった。
これからは気をつけよう。
いや。道でだけでない。
人が見ていないとわかり切っている場所でも、やめておこう。
紗季は女の子みんなから嫌われているのだから、そんな子と仲良くする人も省かれて当然だ。
とりあえず、最大の友人・絢ちゃんには絶対に嫌われないようにしておかないと、私の安寧の根が失われてしまう。
絢ちゃんに見放されたら、私と仲良くしてくれる人などいなくなるだろう。
それと、夜の エ ッ チ ……
擬似絢ちゃんとのめくるめく……
あれについても、絶対に絢ちゃんには知られないようにしないといけない。
雰囲気とか目つきとかでバレてもいけない。
レ ズ っ気があると誤解されるのは危険だ。
……
レ ズ ……
レ ズ って……どんなのかな……?
私が毎晩絢ちゃんにかわいがってもらってるみたいなもの?
もっとすごいのかな……?


私は自分で抑えが効かなくなった。
すっかり オ ナ ニ ー に染まっているような エ ッ チ 女だから、しょうがないよ。


あの後……
キスをして、服の上からだけど胸を触って……
そこからもっと先に進んでいったら、何があるのか……?


知りたい。
知りたい。
我慢できない。
どうしても知りたい。
知らないでいるほうが、おかしくなりそう。
ちょっと覗いてみるだけなら……
ただ、それだけなら……

どうしてなのか、わからない。
今でもその時そんなことをした勇気、というより蛮勇が、私に湧いてきたメカニズムが理解できない。
とにかく寂しかった。
紗季と離れることが、自分の手足とまではいかないけど、片手の指先くらいをもぎ取られるように感じた。
いや、違うかも。自分の片割れとか影とかを失うような、ものすごいことに感じたのかもしれない。
わからない。
それだけ私は混乱していたのだろう。
電車での出来事を再現せずにはいられなくなった。
能動的に。


「……鞠川さん……」
「……?」
私は紗季にすうっと吸い込まれるように、唇を重ねた。
傘を持っているから片腕で抱き寄せた。
紗季の唇はわなわなと震えていた。
肩も震えていた。
でも、抵抗はしなかった。
汗っぽくて甘酸っぱい匂いが、いちだんと強く薫った。
うっすら目を開けてみると、紗季は真ん丸な目を開けていた。
「目を閉じて」
私がつぶやくと、紗季はぎゅっと目を閉じた。
胸の圧迫と、熱がじわじわ私に伝わる。
私は本当にどうかしていた。
気がつくと、紗季の胸に触っていた。
「あ」
紗季がびくん!と一つ大きく震えた。
「ごめん……」
私は唇と手を離した。
紗季は私と少し距離を置いた。
頭の半分が傘から出て、雨の雫を受けた。
でも、それ以上は離れようとしなかった。


後になってじわじわと恥ずかしさと悔念がこみ上げてきたけど、どうしようもない。
その場を取り繕うために、何か喋ったほうがいいのだけど、頭が混乱して、謝ること以外に喋ることは思いつかなかった。
でも、胸に触ったことはさっき謝ったし、それ以上に謝る気持ちは起きなかった。
謝るほうが失礼だとさえ思った。
だけど、いつまでも無言なほうが気詰まりなので、私はおずおずと口を開いた。
「家まで送る」
関係をうやむやのうちに壊さないためには、これしかない。
「……ありがとう……」
小さい声で紗季が答えて、私たちは歩き出し、数歩進んだところで…・・・
傘を持つ私の手が、ふんわりと温かいものに包まれた。
紗季の手だ。
顔を真っ赤に染めながら、しっかりと私につながってくれている。
そして、前を見つめたまま、思いがけないことを口にした。
「さっきはごめんね……。びっくりして、声を出しちゃって……。今度……お っ ぱ い に……触ってもらえる時があったら、静かにしとくからね……」
夢とかではなく、確かに紗季はこう言った。
こんなことを言うなんて、紗季はずるい。
これでは私は紗季に絡め取られて、どうしても離れられなくなってしまう。
とりあえず今晩。
絢ちゃんとの世界を侵す紗季の幻影を追い払うのに苦労しそうだ……。

*******


私たちは、天気予報が言っている以上の注意と畏怖心を持って空と接するべきかもしれない。
午後からおかしくなってきた空模様はどんどん湿り気を増してゆき、私たちの下校時刻を狙ったかのように雨が降り始めた。
私はいつも折りたたみ傘を持ち歩いているからいいんだけど。


しとしと。
ぽつぽつ。
私は雨が好き。
正確には、雨の音が好き。
傘に跳ね返る雨の音。
トタンの屋根に落ちる雨音。
車の中で聞く音。
家の窓を叩きつける激しい音。
どれをとっても心にしみる♪
……なんて言ってられるのも、私が濡れずに済んでいるからかな。
前を行くあの人にとっては、雨は体温を奪う、ちょっとした悪魔みたいなものかもしれない。
まだ晩夏とはいえ、今日は朝から肌寒い上に、傘をささずに歩いているのだから。


鞠川紗季は一人きりで濡れている。
天気予報では雨の「あ」の字も語られなかったのだから、しょうがないけど。
それにしても紗季、学校から離れて取り巻きの男の子たちがいないところでは、やっぱり一人きりなんだね。
孤独な奴め!
って、私も友達が多いほうじゃないし、現にこうして一人で帰っているのだから、他人のことは言えないんだけど……。


雨に濡れているのだから、走ればいいのに……
紗季はゆっくり歩いている。
とぼとぼ……後姿に覇気がない。
普段から歩みが速いと言われている私は、距離をとり続けることができずに追いついてしまった。
電車の中で嗅いだのと同じ甘酸っぱい匂いが、ふんわりと鼻をくすぐる。
嫌いな人なんだから……
女の子みんなに嫌われている人なんだから……
無視して通り過ぎるべきだったと思ったけど、できなかった。
この前、電車の中でしゃべったし。
それなのに無視するのは、人としてどうかと……。
いや、それだけでは不十分。
本当の理由は、なんとなくわかっている。
紗季の甘酸っぱい匂い。たぶん汗混じりの体臭が、無視させてくれなかったのだ。


「鞠川さん……よかったら、入る?」
横に並んだ私は、傘を少しだけ紗季のほうにずらした。
「え、あ……いいんですか?」
紗季は不思議そうな顔をして、それからゆっくり頬を赤く染めていった。
「クラス…………メートが濡れてるんだから、ほおっておけないよ」
紗季との“つながり”を、私が認めた瞬間だ。
その時の紗季のはにかんだような顔を、私は一生忘れないだろう。


小さな折りたたみ傘に二人で無理して入っているから、頻繁に肩が触れ合う。
会話はぽつぽつとしか交わさなかったけど、声は近い。
呼吸の気配も感じられる。
そして雨のせいで湿った空気が、紗季の匂いを重さのある塊に変えて、私の鼻に降り注ぐ。
親密さが増すのは、どうしようもない。


沈黙が重荷にならない程度に、話をした。
当たり障りのないことを、ぽつりぽつり。途切れ途切れに。
休みの日は何をしてるの? とか、好きなタレントは? とか。
たわいもなさすぎることだけど、何故だか楽しかった。
男の子に囲まれている気分はどう? なんてことは、聞かなかった。
男の子のことなど……本当に忘れていた。
そして、歩き続けるかぎり、いずれゴールに到着する。
私と紗季を分かつ、三叉路にたどり着いてしまった。

*******


「美羽(みわ)ちゃん、昨日電車に乗ってたでしょ。あたしすぐ近くにいたんだよ。鞠川にねちねち絡んでたよね。あはは、痛快痛快!」
絢(あや)ちゃんが本当に痛快そうに私の肩をぽんぽん叩いた。
絢ちゃんは女の子らしい、とてもかわいい子。
たぶんこの顔は、男の子が見ても女の子が見ても、かわいいと思う。
そんな顔をして「痛快痛快」みたいな、昔の豪快男子とかしか使わないような言葉遣いを時々交えたりして、そのギャップがまたかわいい。
友達なんだけど、憧れの対象。
自慢の友達。
私は絢ちゃんと友達になれたことを誇りに思っている。
あまりにも眩しすぎるから、絢ちゃんは屈託なく接してくれるけど、私は心の中で、同等ではないとランク付けしている。


それはいいとして……
絢ちゃんもあの電車に乗っていたんだ!
紗季とキスしてしまったのも見られてるかな?
まぁ、見られてても問題はないんだけど。
あれは不可抗力だから。


「で、勉強会とか言ってたよね。どうやったらあんなに男を侍らせられるのか講義させるんでしょ? 面白そう! 鞠川の反応はどうだった? やっぱりうじうじしてたのかな? あいつ、男がいなくて女だけの時は弱いから。それとも意外と、喜んで先生役を引き受けたのかな? あいつバカそうだからいい気になって。あー面白くなってきた! どうやっていじめようかな? 楽しみだね!」
絢ちゃんは私が電車の中で思いつきで喋った「勉強会」という名の責め会のアイデアに、すっかり乗り気になっている。
私ににゅーっと顔を寄せてきて、
「で、いつやるの?」
甘い息がかかる。
飴の匂いが配合されている。
それを嗅いで、私はまたしても昨日の紗季との口づけを、リアリティを伴って思い出した。
紗季の匂いは甘くなかった。
ざらついた、生々しい息の匂いだった。
そして、甘酸っぱい体臭。
着込んだ服にしみている、汗の匂いも混じっているのだろう。
ぜんぜん性質が違うのに、匂いというものを意識するだけで紗季を思い浮かべてしまう。
ありありと、目の前で形になる。
私はどうかしてるんだ……。


「美羽ちゃん、大丈夫? ボーッとしてない?」
絢ちゃんの怪訝そうな顔。
すぐ目の前。ボールペン一本分の距離。
目を丸く見開いていて、ひときわかわいい。
紗季なんか足元にも及ばない。
「あ、大丈夫! ちょっと寝不足」
「そっか。遅くまで悪さしてたんじゃないの? こいつう!」
へその辺りを拳でぐりぐりされた。
意味ありげな口調で、顔がにやけている。
「悪さって…………違うよぉ! いやだー、絢ちゃんが考えてるようなのじゃないですっ!」
……と答えつつ……
図星だ。
時々 エ ッ チ なことを言ったりする絢ちゃんのことだから、適当に エ ッ チ っぽいことを言ってみて私をからかっただけなのだろうけど、見事に当たっている。
私は昨日の夜遅くまで、悪さをしていました……。
正しくは、“昨日も”。
ほとんど毎日。
しかも……絢ちゃんの面影を借りて。
もちろん、絢ちゃんには内緒で。


男の子が嫌いなわけじゃない。
何度か経験もあるし、それなりに……いや、すごく、気持ちいいと思う。
でも、私だけの世界で、他に誰も入ってこない場所で、エ ッ チ の相手をしてほしいのは絢ちゃんだけ。
絢ちゃんは私に愛しげにキスをしながら、ぎゅっと抱きしめてくれる。
そして私がうっとりしていると、不意に、絢ちゃんの指が……
プロ級の腕前のピアノで鍛えられた、見かけによらずたくましい指が、私の恥ずかしいところに……


あぁん……


これ以上考えたら今この場所で濡れてしまいそうだから、やめておくけど……
憧れが高じて、いつ頃からか、私は妄念の中で絢ちゃんに疲労を与えてもらってから眠るようになった。
大切な習慣。
たぶん……今宵も。
だからそれまで、へそぐりぐりの感覚が消えてしまいませんように……。


「ほら、またボーッとしてる。今日の美羽ちゃん、ちょっとおかしいよ。大丈夫? 熱でもあるんじゃない?」
絢ちゃんは、母親が子供の熱を計るみたいに、互いの前髪をかき上げて、おでこをくっつけてきた。
ぬくもりのあるおでこ、顔にかかる息、黒髪が触れるくすぐったさ。湿り気。
激しい動悸を悟られそう。
すごくうれしいけど、やめて……ここでは。
離れてくれないと、へんな気持ちが抑えられなくなるよ……。
そう。私はおかしいし、熱もある。
でも……
熱を持っているのは、おでこよりも……
どうしてだろう……唇と、胸の表面なの……。


どうしてだろう…………。

『同性ソング』



こんな無名な半分田舎町でも、夕刻の電車は満員になる。
人波が電車を侵し、私は奥へ奥へと押されていった。
最奥の到達点。真ん前に、同じ制服の女の子がいた。
同じクラスの鞠川紗季(まりかわ・さき)だ。
私はこいつが嫌い。
たいして美人だというわけでもないのに、いつも数人の男の子たちに囲まれている。
男にとっては敷居が高くなく、しかも常に浮かべている締まりのない笑顔が愛らしく映るのだろう。
せわしなく体をくねらせたり首を傾げたりと、無駄な動作が多いところも男の子たちが好きそう。
舌ったらずでまわりくどい話し方。
性格にトゲはない。鋭さもない。悪く言えば主体性がない。
そして、胸が大きい。これなら確実に人気者だ。
男の子にだけは。


紗季と目が合ってしまったし、それ以前にそもそも、身動きのとりにくい満員電車でこんなにくっついて離れにくいのだ。
二駅先の大きな駅で乗客の大半が降りるまではこのままだと思うから、何かしゃべらないほうが不自然だ。
何か無難な話題を探すより先に、私の意地の悪い部分が頭をもたげた。
「鞠川さん、友達男しかいないよね」
「え?……あ……」
紗季は最初きょとんとしていたが、だんだん私が言外に込めた意味を察したらしく、締まりのない笑顔が消え、泣きそうになっていった。
そう。私はほとんど言葉を交わしたことのない紗季を、言葉でいじめようとしているのだ。
「女の子の友達、いないでしょ」
「そんな……」
「いつも男の子をたくさん侍らせて楽しそう! どうやったらあんなにモテるの? 技を伝授してくれないかな? 他の子たちも聞きたがってるよ。鞠川さん、尊敬されてるんだ。女子一同の憧れだよ」
意地の悪い口調。
たぶん、顔つきにも意地悪さがにじみ出ていただろう。
「鞠川さんに先生やってもらって勉強会をしようっていう話もあるんだよ」
もちろん、勉強会という名目の責め会だ。


と、その時。
電車が大きく揺れ、後ろの人が倒れかかってきた弾みで、紗季と私の唇が触れ合った。
いや。触れ合った、なんて生易しいものではない。
ぶちゅっと、くっついた。
ぽってりと厚みがあって、温かくて、湿った感触。
不思議なことに、嫌いなはずの紗季のだけど、なぜか不快でない。
胸と胸もくっつき、柔らかな圧迫と紗季の甘酸っぱい体臭。
これも不快でない。
嫌などころか、クラクラと、頭が眩みそうになった。


ほんの一瞬の出来事にすぎないのだろうけど、たっぷりの時間に感じられた。
離した後も、唇が熱い。
ひりひりするみたい。
胸にも紗季の温もりが残っている。
嗅ぎ慣れない匂いが私の制服にこびりついている。
紗季を見ると、真っ赤な顔をして、目を私からきっちり45度逸らして、丸めた手を唇に当てていた。
私はボーッとして……


この人……かわいいかも……


思いがけない感情が、私の中に兆した。
ハッと我に返って、慌ててかき消そうとしたけど、唇と胸の感触とともに、いつまでもこびりついて離れなかった。



つづく (・∀・)

チナミがしゃがんで俺のズボンとパンツをずらした。
パンツに引っかかって下に折れ曲がった イ チ モ ツ がピン!と上に勢いよく跳ね上がるのを見て、チナミは目を丸くした。
「昨日のよりもおっきいね」
嬉しそうにそう言い、さっそく口に含んで唇で カ リ を刺激しながら、先っぽを ぴ ち ゃ ぴ ち ゃ と舐める。
そうしながら竿を掴んで捻じるようにしごく。どこで覚えたのか知らないが、ものすごいテクニックだ。
「あぁぁ…」
俺は声を出してしまった。もう限界だ。
「チナミ!出るよ!出る!出る!」
チナミは俺を見上げて「んっ」と頷き、イ チ モ ツ を口の奥まで飲み込み、小刻みに首を振りながら ぐ ぽ ぐ ぽ と吸う。
「あぁぁぁ!チナミぃぃ!!」
俺はチナミの口の中に驚くほど大量の 精 液 を放った。神の住むこの場所で。
俺が呆けたように突っ立っていると、チナミが立ち上がって、精 液 をごくんと飲み込み、
「ねぇ、チナミもムラムラしてんだけど」
と言った。
手に ビ ロ ビ ロ した物体をつまんでひらひら振っている。
コ ン ド ー ム だ。チナミは用意がいい。というか、俺はこんな展開までは想像していなかった。
俺は瞬時に回復し、いきり立った。チナミもスカートとタイツを膝までずらした。
「狭いから、立ったままで後ろから入れて」
チナミはトイレの木製のドアに手を突き、俺に背を向けて足を開いて尻を突き出した。立ちバックだ。俺は野獣のようにチナミに飛びかかった。
立ちバックはおろか、セ ッ ク ス さえ初めてなのだが、肉 欲 の塊と化した俺たちはいともあっさりと結合した。
俺は夢中で突き上げる。
「あっ、あっ、あ ぁ ん、あん、あっ…」
チナミがドアを爪でひっかきながら腰をくねらせる。そんな 淫 乱 な様子のチナミが愛しくてたまらない。
俺の腰の動きもチナミの反応もどんどん激しさを増し、チナミは頬と胸を数多の悪臭を吸ってきた木製のドアにくっつけ、俺が突き上げるたびにギシギシとドアを押す。
そして…
神罰というものは必ず降るのだ…。
振動が激しすぎて蝶番が外れたのか、ドアがバタンと開いてしまった。
「きゃあっ!!!」「うぉぁっ!!」
俺たちは結合したまま、トイレの空くのを待つ人々の列の前に、前のめりに倒れた。
人の群れがものすごい速さで渦巻く景色の中心で、じれったいほどのスローモーションで、存分に醜態を晒しながら、俺たちは倒れた。
俺たちの醜態はもう巻き戻せないのだ。
脱力しきったチナミの肩を抱くようにして、俺たちは走って逃げた。
俺たちの 痴 態 を見た人々の中にクラスメートに似た顔もあったらしく、チナミは走りながらずっと泣きわめいていた。
神社から脱出しても、俺たちは走り続けた。ちょっと前の過去を振り落とそうと、どこまでも。

チナミと一緒に走り続けているうちに、俺の意識に変化が生じた。
後悔とか羞恥心とかといった負のイメージのものが消えて無くなったのだ。
チナミと一緒にこんなに走ることがとてつもなく楽しくて、幸せなのだ。
チナミも同じみたいで、いつしか泣き止んでいて、いつも以上の、今まで見たこともないくらいの最高の笑顔が弾けていた。
嬉しいというより、今のこの刹那が面白い、といった感じだ。
二人とも大きな笑い声さえ上げ始め、何度も足を止めては口づけを交わし、また走り続けた。
「恋人同士の セ ッ ク ス を見られただけ。ちょっと恥ずかしかったけど、問題ないよ!!」
変な形で一線を越えてしまったが、俺たちの恋と性が本格的に始まったのだ。


終わり


全国的にもそれなりに有名な神社。ものすごい人、人、人の波。
俺たちははぐれないように、しっかり手をつないで歩いている。
どこからどう見ても普通の恋人同士だ。
チナミはこんなに寒いのに 股 間 が見えてしまいそうなほどのミニスカート姿で、白いタイツを履いた長くて形のよい脚が伸びている。
タイツは履いているにしてもこんな寒い夜にミニスカートかよ、と俺は呆れたが、チナミに言わせるとこの格好には仕掛けがあって、これでないといけないそうなのだ。
そのくせチナミは体調が悪いのか、顔色がどことなく冴えず、時々、こみ上げてくるものに耐えるような表情をしている。
大混雑のため非常にゆっくりとしか進めなくて、立ち止まることのほうが多いのだが、その程度の歩みでもつらそうで、息も上がっているみたいで少し荒い。


やっとのことで拝殿にたどり着き、賽銭を投げて願い事を唱え、
「何をお願いしたの?」
「ふふっ、そんなの言えないよ」
などとお約束の問答をしながらの帰り道。鳥居まではまだ遠い。
「あのさ…」
チナミは前を見つめたままささやいた。
「ア ソ コ に ロ ー タ ー 入れて来ちゃった…」
「え!」
チナミはスカートの中に手を入れて、少しまさぐった。
「ほら」
俺の目の前に差し出した指がねっとりと濡れていた。
「外で濡れたら冷たいね…」
チナミは俺の方を見ずに、目を伏せてはにかんだような表情をした。
今夜会った初めからチナミに違和感を感じていたのだが、やはりいつものチナミではなかったのだ。俺の観察眼も捨てたものではない。
「神様に怒られちゃいそうだけど…こういう混んでる所で ロ ー タ ー 入れてたら、集団で触られてるみたいで…すっごく感じるんだよ…」
…俺は唖然とせざるをえなかった。チナミはいつの間にこんな 変 態 になっていたのだ?
だがチナミの 変 態 はそれだけでは済まなかった。
「あのさ…お願いがあるんだけど…」
「…何?…」
「チナミのお尻の穴を歩きながらいじって…」
ものすごく小さい声だった。
だが、こんな喧騒の中でもチナミの小さな小さなささやきはしっかり俺に届く。特にこんなとんでもない内容であれば、確実に俺の鼓膜に突き刺さる。
「尻…の穴…って…えぇぇ?」
「昨日やってあげたじゃん…あれ、気持ちよさそうだったから…チナミもやってほしいの……いや?」
「…いやじゃないけど…こんなところで?…」
「こういう所でやるからいいんじゃん…タイツに穴を開けてるから、そこから指を入れてよ」
俺はちらちら周囲の様子を覗った。混み過ぎていて、見えるのは疲れきってうんざりしたようなたくさんの顔だけだ。
こんな様子だったら 下 半 身 でひっそりと行なわれる 変 態 行為はバレないかもしれない。
俺は意を決してチナミのミニスカートの下から手を入れた。
本当にタイツの尻の穴の位置に穴が開いていたので、そこから指をつっこんだ。その下にはパンツをはいていない。
「ロ ー シ ョ ン 塗ってきたから、ヌ ル ヌ ル で入れやすいと思うよ」
肛 門 の周囲をまさぐってみた。チナミの言うとおり、指が ヌ ル ヌ ル と滑る。
俺はごくっと唾を飲み込み、飲んだ唾が首より下にたらりと落ちたのを確認した後、人差し指の先を蠢かしてゆっくり挿入した。
案外滑らかに入っていった。
俺は指先をピクピク動かしたり、抜き差ししたりした。
俺の頭の中では、くぽ、くぽ、とチナミの 肛 門 が立てているかわいい音が鳴り響いた。
チナミの横顔を見ると、しっかり閉じられた唇がわなわなと震えていて、鼻息がフンフンと荒い。ものすごく興奮しているようだ。
それを見ていたら俺も完璧に 勃 起 して、ズボンの 股 間 がもっこりと盛り上がった。
チナミはそれにちらっと目を落とし、フッ、と大きく息をした。笑ったのかもしれない。
そして滑るようにチナミの手が伸びてきて、股 間 の膨らみに触れた。
軽く触れたまま、掌を左右に動かす。ザラついた布地を通して カ リ が擦られる 快 感 はたまらない。
しかも、人の波が進む時にはチナミはわざと俺より歩みをワンテンポ遅らせるので、その時は掌が強く当たって刺激も強まる。
「あははっ、口があいてるよ」
チナミが小さく笑う。俺はさぞや情けない顔をしていたのだろう。
笑われた仕返しに、俺はチナミの 肛 門 への刺激を強めた。
「あっ…はふっ…んっ…」
チナミが歯を食いしばっているような横顔で俺を睨み、反撃を開始した。
ズボンの上からではあるが イ チ モ ツ をもろに握り、しごき始めたのだ。
さんざん擦られた後にこんな攻撃を受けたらひとたまりもない。
「んんっ…チナミ…やめてよ…我慢出来ない…あっ、もう出そう…」
「しょうがないな、男の子は」
チナミは イ チ モ ツ から手を離し、俺の腕を取って人込みをかき分けて脇道に逸れ、トイレを待つ長蛇の列に並んだ。
トイレを待つ間も時々チナミが イ チ モ ツ を握り、あわやというところで寸止めをする。どうしてこいつは男のタイミングをこんなによく知ってるんだ?
やがて俺たちにトイレの順番が回ってきたので、周囲の怪訝そうな目を無視して二人で個室に入った。
ものすごい悪臭がさらに俺たちの爛れた気分を盛り上げてくれた。

気づいたら俺たちはコタツから出ていて…俺は 下 半 身 丸出しで尻を少し突き出す格好で立っていた。
冷静に考えれば非常に情けない姿なのだが、その時の俺は冷静さを欠いていた。
チナミは後ろから片腕で俺を抱きかかえるようにして、もう一方の手でしばらく尻をさすった後、肛 門 にじわじわと指を差し込んできた。
少し痛かったが、俺は我慢した。やがて挿入具合に満足したらしく、チナミはそれ以上深く入れるのを止め、指をくねらせ始めた。
そうしながら、俺の耳の後ろとかを舐めまくった。涎が俺の首筋を伝った。
肛 門 の痛みはもう感じない。
俺は何とも言えない変な気分になってきて、ぶるんと震えてしまった。
「お ち ん ち ん も触ってあげるね」
チナミは幼児をあやすような口調でそう言い、勃 起 した イ チ モ ツ を握り、上下にゆっくりしごいた。
「あのさ、お ち ん ち ん が気持ちいいってのは想像つくけど、お尻の穴も気持ちいいの…?」
チナミが俺の耳に口をぴったり押しつけて、囁くように聞いた。
「ハ ァ ハ ァ…そりゃあ ち ん ぽ が一番気持ちいいけど…でも……肛 門 も…悪くないな…」
俺は恥ずかしげもなく、感じている通りを打ち明けてしまった。
「へえ、そうなんだ…チナミ、お尻の穴ではやったことないから…あっ、もちろん オ ナ ニ ー だよ!!…チナミ、これでも一応 処 女 なんだからね!!」
俺たちは何という会話を交わしているのだ!
尋常でない状況に、従姉妹とかそういったことは最早どうでもよくなった。
俺も後ろに立っているチナミのスカートをまくり上げ、パンツを膝まで下ろし、夢中で お ま ん こ を探った。
「あっ」
チナミが小さく声を洩らした。探り当てた お ま ん こ はすでに 愛 液 でべとべとになっていた。
「触ってないのにべとべと…」
「んふっ、チナミはイメージトレーニングができてるから、お ち ん ち ん 触っていろんなことを想像するだけで…こんなになっちゃうの…」
「チナミ…好きだよ」
チナミに好きだなんて言ったのはこれが初めてだ。
「ええっ!チナミが い や ら し い こと言った時に好きだなんて…あんた 淫 乱 好き?…そういう大切なことはもうちょっと違う時に言ってよ!」
イ チ モ ツ を握る手に更に力が加わる。
「う…」
絶頂が近づいているのがわかる。だが、そんな時に、チナミが無情で恨めしい科白を吐いた。
俺を焦らそうとか苦しめようとかしているのではなさそうなのだが。
「ねえ、あんたの家ではあんまり落ち着いてできないね」
そうだった。いつもの軽い恋人の真似事程度と違い、今は二人とも 下 半 身 を剥き出しにしているのだ。
「…そうだな…いつババァが帰ってくるかわからないから…」
「ねえ、明日の夜、一緒に初詣に行こうよ!」
チナミはそう言うと、イ チ モ ツ から手を離して俺にキスをした。紅潮しきった、いつも以上に優しさを感じさせてくれるキスだった。
その日はそれきりだった。
中途半端なところで止められた俺は、チナミがいる間中悶々としていた。
しかも俺の指には乾いてしまったとはいえチナミの 愛 液 が付着していて、チナミの お ま ん こ の感触も知ってしまった。記憶ができるだけ新しいうちに オ ナ ニ ー しまくりたい。
この日だけは心の中でチナミに早く帰ってくれと懇願してしまった。


つづく