『バニラ』


第二話  穴には入ってみればいい 



あのバトルがあった日の夜から、汁流戯ミホと尾奈は多摩ナツミに命じられるまま男女交際を始めた。
尾奈にとってはたまたまあの場に居合わせたためにこんなことになってしまったわけだが、多摩曰く、「乗りかかった船なんだからきちんと乗ってほしい」。
それに対して少し苦言を呈すると、
「汁流戯さんがあのフィールドに尾奈さんを連れて行ったということは、汁流戯さんに考えがあって尾奈さんを選んだということ。やっぱり関係ないとは言わせられません」
と、もっともらしいことを言われて、それ以上反論できなくされた。
つまりは、ていよく監視係を押しつけられたわけだ。
尾奈は元来、年下よりも年上のお姉様好きだし、汁流戯ミホの肉体の美味さも確認済みだからそれほど不服はないかもしれない。
だが、汁流戯ミホはあの時イキすぎて戦闘の記憶をあらかた失っているのだから、何故勝手に尾奈をあてがわれたのか理解できていない。
若輩者の言いなりになる謂れなどないはずなのだが、「多摩ちゃんには得体の知れない圧迫感があって逆らえないの」だそうだ。
強敵だったという感触が意識の底に残っているのだろう。


汁流戯ミホと尾奈がつき合っていることは、すぐに周囲の知るところとなった。
ミホがやたらに彼女アピールするからだ。
今まではひたすら無気力怠惰朦朧だったのが、久しぶりに彼氏ができたことによって、妙な具合に元気な人になった。
その元気さには浮わつきすぎた違和感があり、以前よりもさらに変な印象の人になったのだ。
世間はミホに眉をひそめる以前に、よくもあんなのとつき合えるものだと尾奈に対して呆れた。


突然の人事異動で、夢 精 堂 株式会社経理部がどよめいた。
この地味な会社にあまりにも似つかわしくない、びっくり女子がやって来たのだ。
栗丘みなな(くりおか・みなな)という、昨年入社の21歳。
服装は、レース地でピンクのフリフリだらけのワンピース。
鏡にもなりそうなほど反射的に眩しい金髪の頭にも、大きなリボンや花類や中途半端に編み込んだピンクの紐の他に、猫耳付きの髪飾りまで身につけた変人風だが、顔は和洋折衷人形つまりハーフ偶像っぽく繊細さと鋭さを織り混ぜていて、とてもかわいい。
レースの服だからその下のポップな下着を惜しげもなく透かしているのも、大いに人々の気を乱す。
場の空気のみならず、磁界さえ攪乱しかねない存在感だ。
生きたままの動物を半日浸けるだけで簡単に剥製ができちゃう神秘的な薬液『スーパーはくちゃんネオ800』を製造販売している子会社に出向していたそうだが、
「そんな会社あったっけ?」
「栗丘みななという社員の名前も聞いたことないぞ」
「こんな目立つ人のことを噂にも聞いたことがないなんて、不思議だ……」
「薬の名前も初耳だなぁ」
「俺は重度の女好きだから若い女は全員知ってるはずなんだけど……」
と不審顔をしている人々の目の奥の奥を、真正面の至近距離からじーーーっと覗き込んで、相手の顔いっぱいに甘く湿った息を吐きかけながら、
「会社もぉ、薬もぉ、私もぉ、ちゃんと実在してますからっ☆」
と言うだけでみんなを納得させてしまうあたり、この人は只者ではなさそうだ。
「多摩さぁん、よろしくお願いしまぁす! 私は多摩さんの一年先輩だけどここでは後輩だから、優しく教えてくださいね☆」
と、目をくりくりさせて白々しいほど輝かしい笑みを湛えて挨拶する栗丘みななを、多摩ナツミが緊張をはらんだ目で睨みつけたのは言うまでもない。

「あ! そろそろ目覚めそう! まだ出ないんですか?」
「さっき出したばかりだから……」
急かされても、なかなか出るものではない。
普段の尾奈なら と ろ ん と ろ ん お ま ん こ に包まれるや否や、たちどころに儚く散るのが常なのに、一発出した直後であるというだけでなく、他人に セ ッ ク ス を見られている圧迫感、そして脳裏にこびりついている百茎獣の気持ち悪い姿の記憶が邪魔をして、まだまだ果てそうになかった。
「じゃあ、後ろからお尻の穴を刺激してあげます」
多摩ナツミは尾奈の ア ナ ル を く ち ゅ く ち ゅ いじった。
「あ……あぁん、気持ちいいっ! はぁ、はぁ……もうちょっと……」
「ダメ。おしまい。時間切れ。汁流戯さんが起きちゃう。すぐに服を着て、顔を拭いて!」
多摩ナツミは、未練たらしく挿入し続けている尾奈を汁流戯ミホから引っ剥がし、どろどろに溶けたボンデージの中から探り出したつぶれたメガネをかけさせた。
謎の美女が消えて、汁流戯ミホに戻った。
尾奈がしきりに残念がりながら服を着たとたん、
「うぅん……」
汁流戯ミホが身をよじって薄目を開け、その直後、どやどやと人々が入ってきた。
『壊滅の空間』はいつしか会社の会議室に変じていた。
そして同時に、汁流戯ミホは制服姿に戻っていた。
制服も顔も、全身ベトベトのままだが。
「どうした? なんだなんだ? うわ、すごい匂い、春爛漫! ……って……え! えええええ! 汁流戯さん、どうしたんだ!? これはもしや……ザー…… えええ? 尾奈くん、きみがやったのか!?」
「い……いえ……ち、ちがい……」
「部長、これは尾奈のしわざじゃないですよ。一人の人間が短時間でこんなにたくさん 射 精 できるわけないでしょ。汁流戯さんが数十秒前までパソコンに手を置いたまま居眠りしてたのも、みんなが知ってます。思うにこれは、人知を超えた現象でしょう」
桑江係長が探偵然として(しかし何の解決にもなっていないことを)言った。
「それもそうだな。尾奈くんは汁流戯さんの 変 態 じみた姿を見て 股 間 にテントを張ってるだけだ。ううむ、世の中、不可解なことが多すぎる……」
尾奈が目を泳がせると、多摩ナツミが会議室の外、人の輪のいちばん後ろに、無関係そうにたたずんでいた。




『バニラ』 流刑地の牢獄に咲く花だぞ は終わり


次回は、

『バニラ』 穴には入ってみればいい

が始まる予定です。

百茎獣の残骸はドロドロに溶け、水溜りみたいになって床にしみこみ、やがて栗の花の匂いだけを残して、無に帰した。
尾奈は、カ ウ パ ー まみれで泡を吹いて失神している女に見覚えがある気がした。
すっぴんにしてみたりメガネをかけさせてみたり、想像図をこねくりまわしているうちに、閃光の如く気づいて、驚いた。
職場の、尾奈の三歳年上の先輩、汁流戯ミホ(しるるぎ・みほ)だ。
この人の正体って……こんなのだったのか?
職場では、たいてい半睡眠の夢うつつ状態か、菓子をぼろぼろこぼしながら食べているか、たまに熱心に仕事してると思ったらパソコンに向かって顔を真っ赤に染めてハァハァしながら自作の妄想 エ ロ 小説もどきを打っていたりと、まったくダメダメな人なのに。
あのモヤモヤ顔が、メガネを外して派手な隈取みたいなメイクをしただけでこんなにシャープで強そうになるなんて。
パーツそれぞれは特に悪いところがないのだから、しっかり覚醒していたらある程度は整った顔立ちなのかもとは思ってたけど、こんな美人になるとは想像もできなかった。
それに、今まではこの人を見ても残念な場面しか見えないからあんまりじっくり見たことがなくて気づかなかったのだけど、こんなに大きな胸をしていたなんて……。

「尾奈さん、どうですか? びっくりしたでしょ」

多摩ナツミがボンデージ女の正体を汁流戯ミホだと知っていたらしいことは解せないが、今はそれどころではない。
「とりあえず、とどめを刺してあげてください。まぁ、とどめを刺してもどうせまた復活するだろうけど、今日のところはいつものようにボケーッとおとなしくなりますから」
多摩ナツミが言った。
「とどめって……何をすれば……?」
「陵 辱 してあげてください。それがいちばんの薬なんです」
「陵 辱 ……って……」
「んもう! わからないんですか!? 犯すんですよ!! ほら、ここ!!」
多摩ナツミは汁流戯ミホの脚を開かせて膝を立たせて、び ら び ら の目立ついやらしげな お ま ん こ を広げた。
「あはっ、オ ナ ニ ー ばっかりしてるから、真っ黒☆ 知ってます? 汁流戯さん、仕事中にもしょっちゅう オ ナ ニ ー してるんですよ、会社のトイレで。我慢できないんですよね。子供みたい」
そんな話を聞かされて 欲 情 し、また、普段の汁流戯ミホとさっきまでのボンデージ女との二重人格めいたギャップにもいたく感じ入ってしまい……イ チ モ ツ はカチンカチンにそそり立ち……
百茎獣の分泌液が付着するのは気持ち悪いが、欲 望 には抗えず、尾奈は汁流戯ミホの秘裂を深々と貫いた。
失神している人を犯すのはフェアではない気もするが、相手は自分たちを殺そうとした奴だから……と自己弁護しながら、お っ ぱ い にしゃぶりつきつつ、ぐ し ぐ し と出し入れした。
くそう、汁流戯さんの分際でこんな素敵な お ま ん こ を、くそう……と、さんざんだらしない様子を見てきた汁流戯ミホの肉体に溺れてしまう己の情けなさ加減を誤魔化すために胸中で罵倒しながら ピ ス ト ン を続けたが、その叫びは次第に薄く小さくなってゆき、その間隙に濃密な エ ロ ス が流れ込んできた。
尾奈が汁流戯ミホを 陵 辱 する様子を淡々と眺めながら、多摩ナツミが語った。
「ここは汁流戯さんの妄想が生み出した世界。さっきやっつけたキモい怪物も汁流戯さんの空想の産物。汁流戯さんはこことリアル・フィールドの間を、無自覚だけど行ったり来たりできるんです。ここでは女王様になれるかもしれないから、たとえば尾奈さんみたいな弱い人を連れ込んで、いい気になって暴れまくってダークな力を誇示してるの。そうとう鬱憤がたまってるんだろうね。そして、かわいそうなことに、自分で生み出したここが、かえって自分を閉じ込める流刑地の牢獄みたいなものだというのを知らないんです」
タワゴトみたいな話だけど、異様なものに直面しすぎた直後の尾奈の頭には、それなりに筋の通ったものに聞こえた。
「ところで、多摩さんはどうしてそんなこと知ってるの?」
夢中で腰を振りながらも、聞くべきことは聞いた。
「え、あ……あは、あははは……」
うやむやにされた……。
どうやら多摩ナツミにも謎や秘密がありそうだ。

「ぶほおおおおおお!!!」
まだまだ少女の面影が残っている多摩ナツミの美少女振りに 欲 情 し、百茎獣が雄たけびを上げた。
その途端、全身の 陰 茎 が一斉に 屹 立 した。
その気持ち悪さといったら、人間が作った言葉などでは表し尽くせない。
「尾奈さん、ザ ー メ ン に対するには ザ ー メ ン です。ザ ー メ ン を武器にする奴は、他人の ザ ー メ ン には弱いはず。これ、世の真理です」
わけのわからない理屈を唱えながら、多摩ナツミはいつの間にか尾奈のズボン及びパンツをずらしていた。
「うきゃっ! 恥ずかしい!」
「恥ずかしがってる場合じゃないです! 命がかかってるんですよ! あいつに ザ ー メ ン をぶっかけてください!」
「え? な、な……」
「早く 勃 起 してください!」
「え! あんな気色悪い怪物じゃ勃たないよ!」
「あ、それもそうですね……。じゃあ、あたしの顔を見て!」
「そんな……急に 勃 起 しろと言われても……」
「しょうがないなー。うかうかしてたらあたしもやられちゃうから……スペシャルサービスですよぉ」
多摩ナツミは尾奈の唇にむしゃぶりつき、こじ開けて、ねっとりと舌を絡ませた。
そうしながら、手でモノをコキコキとしごいた。
「くはぁっ!」
尾奈は涎を垂らしながら、多摩ナツミの顔に熱い息を吐きかけた。
すっかり 勃 起 していた。
「もうちょっとですね?」
「うぅっ、出そうっ!」
「あ! タマタマがぷるぷる震えてる! よし、発射準備っ!!」
多摩ナツミは尾奈のモノを百茎獣に向け、親指の腹で カ リ ク ビ をひとこすりした。
「あぁぁっ!」
フィニッシュの叫びとともにたっぷりの ザ ー メ ン が勢いよく放たれ、百茎獣の 陰 茎 の先っぽをしたたかに叩いた。
「ぐぎゃううぅぅぅぅぶぅぅ!!!」
百茎獣は叫びながらよろよろとよろけて、ボンデージスーツの女を巻き込んで転がり、そそり立った幾百もの 陰 茎 が女に絡みついた。
「い、いやぁぁぁーっ!!!」
ボンデージ女は泣き叫んだ。
女が叫べば叫ぶほど百茎獣は昂ぶり、全身の 陰 茎 はさらに肥大し、先っぽから汁が滲み出た。
同士討ちだ。
百茎獣は頭は良くないようだ。創造主であるボンデージ女も同じく。
「やだぁぁぁ! やめてぇぇぇぇ! ヌルヌルして気持ちいいよぉぉ!!」
女は気色の悪い怪物に、自ら体をこすりつけ始めた。
「ヌルヌルは殺人 カ ウ パ ー 液」
多摩ナツミがストイックな口調でつぶやいた。
カ ウ パ ー 液 がボンデージスーツを溶かし、女は 素 っ 裸 になっていた。
締めつけられていた肉体各部が溢れ、とりわけその胸は目を見張るほど大きく、ほどよく色素の沈着した尻も綺麗だった。
百茎獣はくねくねと身をくねらせ、素 っ 裸 になった女の 陰 門、耳、鼻、肛 門、口……全身の穴という穴に 陰 茎 を突っ込み、ねちねちと出し入れを始めた。
「あ、お、おし、お尻は……や、やめ、やめれ……うぐっ」
ついには喉の奥にまで差し込まれ、言葉が途切れた。
「う、んっ、ん、うぐ……は、はぁぁ……んぐ、んぐ……」
あまりの 快 感 に女は目をとろけさせ、百茎獣に身をゆだね、びくんびくんと痙攣しながら、陰 茎 を含まされた口をむにむに動かした。
「そろそろ助けてあげないと、この人死んじゃうかも。百茎獣の ザ ー メ ン 飲んだりしたら内臓が溶けちゃいます」
多摩ナツミは微細なトゲだらけの鞭を振り上げ、「やぁっ!」という掛け声とともに振り下ろした。
びしっ!!
鋭い音がして百茎獣が真っ二つに裂け、鞭はそのまま縦に、女の お ま ん こ に食い込んだ。
「ぎゃぁぁぁ! おマタが割れるー!」
女が苦痛に顔を歪めて、白目を剥いて仰け反った。
「もう割れてますよ」
という多摩ナツミの言葉は、もう女には聞こえていなかった。

数年前に原型を書いたままになっているものを、このたび頑張って改訂&書き足ししようと思います。




『バニラ』


第一話  流刑地の牢獄に咲く花だぞ



「壊滅の空間へようこそ」
メタリックブラックのボンデージスーツに身を包んだ女が、不敵な笑みとともに言い放った。
両腕を軽く広げて、握った掌を上に向けた、歓迎のジェスチャーつきで。
年齢の頃は二十代後半~三十代前半といったところの、適度にむちむちした艶っぽい肉体を誇る正統派美人だ。
長身に、ウェーブのかかった栗色の長い髪を蛇のようになびかせている。
恐ろしげで冷酷そうな装いをしているが、どこか見覚えがあるような気がする。
誰だろう……?
それに、ここはどこだ?
さっきまで職場である東証大証NY証券取引所上場、「僕たち剥製、内臓が無いぞ~♪」のCMでおなじみの剥製製造大手、夢精堂株式会社の経理部の自席で仕事してたはずなのに?……
……という尾奈の思案は、すぐに断ち切られた。
謎の美女が世にもおぞましげな怪物を召還したからだ。
「鳥肌立ててゲロ吐きながら死ぬがよい! ゆけ! 百茎獣! けらけらけらけらけらけら!!」
髪を振り乱してケラケラけたたましく笑う女の背後から、二目と見られないような気色の悪い生き物が蠢きながら尾奈に迫ってきた。
大きさは優に三メートルを超えている。
全身にびっしり、大小さまざまな赤黒い突起物がだらりだらりと垂れ下がっている。
突起物の塊ともいえる。
怪物が二本足で歩くたびにペタペタと音がする。
足の甲や踝の下にも長い突起物がついていて、それが地面に叩きつけられて嫌な音を発するのだ。
「私が産み落とした百茎獣の威力を思い知るがよい!」
「な、何だよ? 百茎獣って??」
尾奈はあたふたと逃げ惑いながらも問いを発した。
「全身にいろんな動物の ペ ニ ス を植え付けた獣だ」
女が、百茎獣と呼ばれた怪物の突起の一つを愛しげに撫でながら答えた。
「たくさん、すなわち百もの 陰 茎 を持つ獣だから百茎獣だ」
なるほど。だが、百なんてもんじゃない。少なく見ても七百はありそうだ。
そんなおびただしい ペ ニ ス が時間差で次々に 勃 起 し、粘液の塊みたいなものをぶしゅぶしゅどびゅどびゅ発射しながら、尾奈をわけのわからんフィールドの壁際に追い詰めた。
それから、股 間 らしき部位の中心にそびえる、ひときわ大きな触手みたいな 陰 茎 がむくっと カ マ ク ビ をもたげて、巨大な彗星のような白濁粘液を放った。
あれが直撃したら、ほんとに鳥肌立ててゲロ吐きながら死ぬことになりそうだ。
尾奈は死を覚悟し、脳内の走馬灯の点灯を待っていると、いつの間に現れたのか、真横で見慣れた制服を着た女子社員らしき人がファイティングポーズを構えていた。
女子社員の長くてしなやかな脚が上がり、たぷたぷとした粘液の塊に蹴りが入れられ、飛び散った。
「あーん、くそー! 靴がべちゃべちゃ! 制服にもついた!」
尾奈は命の恩人の美しき横顔を見た。
会社のすぐ近くの商業高校を卒業したばかりの、新入社員の多摩ナツミだ。
肩までの黒髪にも飛沫を浴び、ラメを散らしたようにキラキラしている。

子猿のようにちっちゃい子。
虐げる者と虐げられる者との役割分担が当たり前になりすぎていて、萌夕美がキレるかもしれないなんて想像もできていなかった。
だから、キレた萌夕美にいきなり対峙させられた時に違和感と怯えと焦りが生まれ、その虚を突いてふところにもぐりこまれた。
小さな彼女はいともたやすく密着し、ポジションを占め、私が反撃できる態勢を整える前にその芽を摘んだ。
私が、教師としては短すぎるスカートを履いていたのもいけなかった。
萌夕美は私を仰向けに押し倒すと、逆向きに馬乗りになり、素早くパンツをずらして……小さくて愚鈍みたいにぷっくらしたその手で、私の お ま ん こ をいじくった。

違和感たっぷりの巧みさでいじくった。
ク リ ト リ ス をつまんだ。

上手につまんで、くりくりっ、と、させた。
割 れ 目 に沿って、人差し指から薬指までの指先を使って、こすりながら埋没させた。
スカートは盛大にめくれているらしく、冷たい外気に直接さらされた。
あまりのことに私の動きが一瞬止まったが、すぐに自分の置かれている状況を知り、
「ば、ばかっ、やめてっ!」
腰をくねらせたら、萌夕美がぐらぐら揺れた。
必死に状態を起こし、しがみつきながらなおも お ま ん こ を指でむさぼり続ける萌夕美を、手で思いっきり払い飛ばした。
萌夕美は机の脚に頭を打ちつけたが、すぐに私に向きなおり、
「先生、濡れた」
顔の前でさっきまで私の お ま ん こ をまさぐっていた指を立てて、不敵な顔をしてそう言った。
教師としても、一般の人間としても、肉体関係を結んでいる恋人以外には絶対に言われてはいけないセリフで突き刺された。
「濡れた」
また繰り返す。
周囲の子供たちが私を見る目が、次第に怖くなってくる。
「お ま ん こ が濡れた」
ダメを押す。
私の精神を覆って聖職者と見せかけている、借り物みたいな鎧が、ぼろぼろと剥げ落ちていった。
その下には、儚く脆い、スカスカな肉心があるのみ。
「いつもいじめてるもゆに触られて、お ま ん こ を濡らした!」
声に押されて逃げるように、私はその場から逃走した。

『木洩れ日が駆け抜ける』



*舞台はとある小学校


初対面から気に入らない子だった。
新しい学校の新しいクラスで、凍月夜萌夕美(いてつくよ・もゆみ)の姿が私の目に入った瞬間に、「こいつとは合わない」と、拒絶の方針が決まった。
奇麗だけど生理的に受けつけないタイプだと認識したのだ。
私の実感では印象とは正直なもので、たいてい嘘をつかない。
それに、一般論としては教え子に最初からマイナスイメージを持つのはよくないことだと私も思うけど、私は自分が不完全な人間であり、子供たちを教育しながら自分自身も完成に向けて築かれている途上にあるものだと、無責任だけどそう割り切って職業生活を送っているのだから、申し訳なさもそれほど感じなかった。
私はさっそく、些細な理由をとりたてて、彼女を責め立てた。
一日に何回も何十回も、そして心の中では何千回も責め立てた。


どうしていつもへらへらしてるの?
どうしてへらへらしてるくせに中途半端に勉強ができるの?
どうして怒られてもあんまり悲しそうにしないの?
どうして机の上の消しゴムカスを休み時間のうちに捨てておかないの?
どうして床に泥がついてるの?
臭う気がするけど、犬の糞でも踏んだの?
どうして花に水をやりすぎるの?
どうして走り高跳びが下手なの?
どうして黒板を消すときにこんなに粉だらけにするの?
どうしていつもスカートの裾がだらしなく折れてるの?
どうして鉛筆で袖が黒くなる面積がこんなに広いの?
どうしてうがいをしたらいつも前を濡らすの?
どうして図書室の本を週に三冊しか借りないの?
どうして朝ごはんをしっかり食べて来るの?
どうして箒の使い方が巧みじゃないの?
どうして机にフケを落とすの?
どうして髪の毛の数束がいやな感じに垂れてるの?
前髪、もっと切れないのかな?
どうしてお年玉をもらった額を自慢しないの?
どうして爪の白い部分の形が悪いの?
どうして教科書の余分なところに線を引くの?
どうして教科書の表紙のビニールコーティングが不快な具合に剥がれてるの?
どうして体操服に着替えるのが平均より十秒も遅いの?
どうして体育の後に付着した砂粒を教室に落とす量が他の子より数粒いつも多いの?
どうしてほんのり汗の匂いをさせるの?
どうして給食を静謐に食べられないの?
どうして気に障るリズムでスプーンを打ちつけるの?
どうして食べた後のお皿が他の子にくらべてこんなに汚いの?
どうして頬にご飯粒をつけないの?
どうしてドレッシングで口を汚さないの?
どうしてトイレで用を足した後にきちんと洗っていると言う割にはこんなに清潔感に欠けるの?
どうしてハンカチが気持ち悪く濡れてるの?
どうしてあなたは全てがさしたる謂れがなく見苦しいの?
どうしてあなたは私に嫌われてるの?
どうして私はあなたが嫌いなのかな?
嫌いなのかな?
どうしてあなたの家はお金持ちじゃないの?
どうしてクルーザーを持ってないの?
どうしてあなたの家は貧乏人じゃないの?
どうしてきちんと給食費を払ってるの?
どうしてもっと風邪をひかないの?
お腹が痛くならないの?
目がかすれないの?
指がかゆくならないの?
気に入らないなぁ。
どうしてあなたは私を叱りたくさせるの?
あなたの人格の汚さが、あなたの顔のちょっとした隙間に、鏡のように映し出されているからなの?
どうしても、あなたはそんな人間じゃないといけないの?
雰囲気変えられないの?
どうしてあなたは……あなたじゃなきゃいけないの?
あなたなの?
あなたなの?


衆人環視の中で、いじめのようにねちねちと、本当にくだらない理由で繰り返し叱りながら、頭の中ではさらに肉体的 性 的 な打擲を加えるのを常とした。
そのたびに、彼女が悲しみの内ににやけも含ませた、中途半端に不気味な表情をして私をじっと見据えるのがすごく気に入らなくて、叱っている最中にも次の叱る理由を探しているような、大げさな表現だけど、無間地獄のような境地だった。
私ぐらいになると、いや、私だけかもしれないけど、教師のくせに、チームとしてのまとまりとか、みんな仲良くとか、そういった味気ない平和には興味がない。
なんでこうなのかは知らない。
私に他人の心の中がどうなっているのかを見る術がない以上、比較が不可能なのだから、わからなくて当然だ。

『姉デス。』



姉が、明らかに オ ナ ニ ー 真っ最中というどぎつい死に様で、死んでいた。
素 っ 裸 で、ベッドから危うく崩れ落ちかけていて、淫 ら な形に脚を開いていた。
枕や腰の辺りには、おびただしい種類の 性 欲 を解放する用途の玩具が散らばり、つけっ放しになっているテレビはリピート再生で エ ロ DVDを映していた。
指先にはチーズっぽい臭いのする、垢のようなものがこびりついていた。
大学生の姉は、今日は雨がひどいから一日家から出ないつもりだと言っていた。
シーツにしみた 愛 液 らしき液体の湿り具合と乾き具合には、手で触ってみた感覚ではいろんな段階のものがあった。
それから推測するに、姉は長い時間この部屋にこもって オ ナ ニ ー に浸り続け、何度にも分けて 愛 液 を垂らしたり潮を吹いたりしたのだと思う。
そして急激に疲労しすぎたのか、興奮しすぎて極端な負荷がかかりすぎたかで、心臓が止まってしまったのだろう。


久しぶりに見る姉の 裸 身 は、想像を絶するほど美しくなっていた。
着痩せするタイプらしく、胸は思っていたよりもかなり大きく、乳肌も澄み渡り、最も美しい形に垂れている。
真っすぐで滑らかな太ももは、こうして尻とひと続きに眺めてみると、よりいっそう魅惑的だ。
適度に び ろ び ろ した お ま ん こ は、下品に堕しない程度に ひ わ ひ わ している。
この肉体が滅びゆくのは、死んでしまったのだからしかたのないこととはいえ、とんでもない悲劇。
大袈裟だけど、人類全体の損失だ。
ただ、顔が……。
快楽に包まれての突然死だったのだろうか。
いつもの冷淡さが消えて、へろへろの ア ヘ 顔になっている。
姉としても不本意な最期だろうなと思った。


それにしても、オ ナ ニ ー とは……。
オ ナ ニ ー していて死んでしまうのも問題だが、それ以前に、この姉が オ ナ ニ ー をしていたという事実そのものが幻滅だ。
姉には、男を手玉に取って掌の上で転がすような、お遊びの セ ッ ク ス しか似合わない。
姉が男に本気になってしまう セ ッ ク ス でさえ不相応なのだから、孤独に肉の 快 楽 のみを追求する オ ナ ニ ー など以ての外だ。
しかも、姉が見ていたDVD……
なんだよ、これは。
よりによって、ロ リ コ ン の、というより ペ ド フ ィ リ ア に近い、凌 辱 物ではないか。
姉は 同 性 愛 の ロ リ コ ン 者で、妄想の中でいたいけな女の子を犯していたのか、それとも、密かに自分が幼い少女となって汚される役を演じて愉しんでいたのか……。
いずれにせよ、最悪だ。
幸い、両親はまだ仕事から帰らない時間であり、今のところ、僕が姉の死の唯一の目撃者。
姉の尊厳を守る、つまり姉の死に様を偽装改変できるのは、僕だけだ。
あんなに気高かった姉を、オ ナ ニ ー が原因で死んだことにしてはいけない。
どうしても……最低でも、セ ッ ク ス で死ななければいけない。


いつ死んだのかはわからないが、陰 門 という名に相応しく、暗々と閉じたまま、かたまりつつあった。
そこを ち ん ぽ でこじ開けて、どうにか 挿 入 した。
どうして死んだのだ?
どうして死んだのだ?
死んだのなら、やらせろよ!
姉の肉体に入ったのは、数年前、まだ 射 精 すら経験していなかった頃、姉に 童 貞 を奪われた時以来のことだ。
姉はすでに何人もの男と経験していて、それでも物足りなくて、弟の僕に 触 手 をのばしたのだった。
若気の至りで、性 欲 に勝てなかったのだろう。
さすがの姉も背徳心を感じたのか、一度きりしかしなかったが、僕は途轍もない影響を受けてしまった。
すぐに性に目覚め精が通じ、姉の柔らかさやぬくもりや臭いの記憶を呼び覚ましながら オ ナ ニ ー に耽溺した。
姉は僕が オ ナ ニ ー の虜になっていることを知ると、さんざん馬鹿にした。
オ ナ ニ ー など、寂しくてだらしない、恥知らずな人間のすること。
私は セ ッ ク ス をする。
セ ッ ク ス は オ ナ ニ ー より格段に高尚。
姉は気高い振りをした。
気高くて僕の手の届かない、どんなに足掻いても追いつけない崇高な人になった。
そして何度も僕が部屋で オ ナ ニ ー をしている時を見計らって踏み込んできて、さんざん馬鹿にしたくせに……
自分もやってるじゃないか!
いいよ、それで。
所詮そんな人間だったわけだけど、死人に花を持たせてあげる。
初めての相手だったし、思い出もあるし愛着もあるから、美しかった姉は、僕との セ ッ ク ス で激しく華麗な死を遂げたことにしてあげる。
相手が弟であっても、みっともない オ ナ ニ ー よりはましだろ?


ピ ス ト ン 運動に、多少の怒りも込められていた可能性はある。
乱暴にやりすぎたかもしれない。
姉の亡骸に 射 精 を終え、死者の中で生者が果てた後の お ま ん こ に目をやり、僕はうろたえた。
ち ん ぽ を挿し込んでいた穴がいびつに開いたままになっていて、そこを中心に、弾丸を受けた窓ガラスのような形にひび割れていた。
命を失い、干からびかけたただの固形物に、ち ん ぽ を無理やり突き刺して抜き差しを繰り返した場合にだけ作られる割れ跡だ。
石膏像にひびが入ったような 割 れ 目 から、ところてんみたいなゼリー状の血液が少しだけ押し出されて盛り上がっている。
これでは、僕が死んだ後の姉を犯したことが瞭然だ。
姉を痛々しいほど慕っていた弟、という図式で許してもらえるものだろうか。
セ ッ ク ス で揺らしたからだと思うが、姉の ア ヘ 顔 が崩れ、もっと ア ヘ ア ヘ と、僕を嘲っているように見えた。
僕にとって生涯忘れることのできない セ ッ ク ス が、こうして刻まれた。



終わり

でぶっちょアイドルユニット『ピザピザ』


かわいい