『おまたと、おくちと、わずかな勇気。』
「ふふっ、また神意を問うてみるか、うふふ……」
派手な金髪の巻き毛の、蒼白な美女が、不敵なくすくす笑いを浮かべながらメガネをはずしました。
妖しげなアイドルとかが着そうなゴスロリ風のドレスを脱ぎ、容貌とは不似合いな黒の ボ ン デ ー ジ 風の下着だけの姿になりました。
着痩せするタイプらしく、真っ白で柔らかそうな 乳 肉 が、ぎゅっと締めつけるブラジャーの上下から盛大に溢れています。
彼女は、月明かりに照らされた祭儀用梯子階段をゆっくりと上ってゆきました。
「この前のデブは役立たずだったからね。お姉さま、頑張れー! いいのが当たりますように!」
小さな女の子が、冷徹そうな目で姉を見つめながら、胸の前で手を組んで祈りのポーズを取りました。
なんだか白々しくも見える所作です。
もう一人、大柄な娘が口をタオルで押さえながら何か言っていますが、声が小さくて聞こえません。
階段のふもとには、プリクラよりひとまわり小さい、おびただしい数の男の写真がぎっしりと並べられています。
その数、ざっと十万枚。
巻き毛の女は三十メートルの頂上に達し、そこで物怖じせずにしゃがみました。
それから、ボンデージの股部分をずらして、お し っ こ のひと雫を慎重に搾り出し、ぽたりと落としました。
これで、とある目的遂行のために使役する手下を選ぶのです。
くだらなくて、時には恥ずかしいことを、格式ばって大袈裟に執り行うのが彼女たちの流儀なのです。
三人の女が目を凝らす中、お し っ こ の粒は、一人の不運な青年を射当てました……
☆
いつの頃のことでしょうか。
日本國の何処か……人々に 淫 ら な気持ちをもよおさせるような空気が流れている場所……に、栗都(くりと)三姉妹なる美しくて邪悪で恥ずかしい姉妹が暮らしていました。
長女は栗都リスカ(くりと・りすか)。
とても奇麗な人で、表向きは大手の剥製製造会社で事務員をしていますが、それは仮の姿で、あくまでも副業。
内心では世界征服の野望を露わにした邪気がめらめらと燃えたぎっている、醜いバケモノのような女です。
白銀とレモン色を混ぜたようなきわめて眩しい金髪の、長くて激しくくるくる巻かれているのがとても目立ち、透き通るように白い肌をしています。
化粧で赤味を足したりもしないから、陶器のよう。
だけど純粋な日本人です。
金髪はもちろん、染めているだけですから。
身長は平均的でスタイルが良く、長い手足と形よく膨らんだ胸という理想的な肉体を持っています。
くりくりしているけど気だるそうな目と、薄すぎる肌の色は、彼女を虚弱気味に見せることも度々ありますが、実際にはまったくそんなことはありません。
きわめて強くて残忍な人間であり、肌の白は、制服であり戦闘服である ボ ン デ ー ジ 下着にとてもよく映えています。
次女は栗都莉夢(くりと・りむ)。
大学の三年生で、年齢は姉の三歳下、百八十センチを超えていそうな長身、プラスチックをこねて丸めたみたいなぼーっとして朧げな眼をしていますが、そこ以外は特に癖のない、愛くるしい顔立ちをしています。
太ってはいないけどむちむちで、嘘であってほしいくらいの 巨 乳 が神々しく、他の部位も、どこをとっても美味しそうな体。
肉 弾 ダイナマイトといったところでしょうか。
いささか残念なことに、物心ついた頃からずっと極端に口臭を気にする強迫性障害に罹っていて、常に口をタオルで押さえています。
そうしておかないと怖くて喋れないのです。
実際にはどちらかというと臭くないほうなのに。
タオルはずっと口から離さないから、唾を含んだ息がだんだん滲みて、どうしても次第に臭くなってゆきます。
それがまた彼女にとって強迫観念の裏付けとなってしまうのです。
悪循環。
自分で自分を追い込んでいる、哀れな人ですね。
水色がかった不思議な色の、長めのボブがだらしなく伸びた感じの髪が、おどおどした雰囲気にとてもよく似合っています。
ただでさえ声が小さいのに、いつでもタオルで塞いでいるものですから、聞き取りにくいこと甚だしいのが困りものです。
三女の栗都梨柚(くりと・りゆ)。
まだ小学生で、背丈もスタイルもそれ相応なのに世界の誰よりも妖艶で、姉二人とはいささか年齢が離れていますけど頭脳は桁違いに明晰で冷静。
でも、甘えん坊でかわいらしいところも持ち合わせている。
子供らしさと子供らしくなさとの使い分けが巧みなのです。
顔立ちは端正で、隙がなく整っています。
姉たちのどちらにも似ない天然のウェーブのかかった黒髪、切れ長で憂いと潤いを帯びた目、ぷっくりと艶めかしい、気持ち良さそうな唇。
キスと フ ェ ラ チ オ を永久に繰り返してほしい唇ナンバーワン。
だけど、レ ズ です。
性にまつわること以外の用途に肉体を使役するのを極度に億劫がり、運動神経は優れていると思いますけどスポーツは嫌いです。
その代わり、何時間でも、呼吸さえ感じさせないくらいじっと座っていたり寝ころんでいたりという、人形の真似ができる能力が備わっていて、しばしば役に立っています。
こんなふうに、莉夢にはいささか頼りないところがあるにしても、三姉妹それぞれが逸材で、なおかつ元々あくどい素質を持っていますから、自分たちがその気になればまずは世界の半分(つまり男たち)が征服できて、そこから広げてゆけばすべてを支配できるはずだと安易に錯覚盲信しているのでした。
身近に人生経験を重ねた立派で渋みのある大人がいて、馬鹿げた考えはよしなさいと諭してもらえればよかったのですけど、残念なことに彼女たちにはそういう人たちがありません。
両親も早くに失っていました。
梨柚を作るための 生 殖 活動直後に母親が父親をまるでカマキリのように食してしまい、その母親も出産後、時を経ずして 荒 淫 が祟って呆気なく亡くなってしまったのです。
でも先祖伝来の資産がふんだんに残されていましたから、親戚知人に頼るまでもなく自立を続け、三姉妹が身を寄せ合って「閉じられた」世界を構築するうちに、いつしか世界が自分たちの思うままになるなどという大それた妄念を強めるに至ったのでした。
☆
お し っ こ 籤(くじ)は、世界征服活動なる悪事を手伝わせる手下を神託によって選ぶ、崇高な儀式です。
お し っ こ 珠の軌跡を見届けた後、リスカは三十メートルの高所から軽々と飛び降りて、羽毛のようにふんわりと着地しました。
すかさず、梨柚が目を写真に向けたままリスカにすり寄ります。
頭を撫でてもらうためです。
梨柚はいつもリスカにすり寄ります。
莉夢にすり寄ることは滅多にありませんが、莉夢が嫌いなのではありません。
莉夢の片手はいつも塞がっていて、存分に撫でてもらえないからです。
リスカは梨柚を後ろからふんわり抱きつつんで、頭をごしごし撫でてあげながら、一緒に写真を覗き込みました。
「ほお……」
選ばれし男の顔を見極めて、リスカの口から感嘆の息が漏れました。
手下にしてコキ使うのがもったいないほどの、かわゆい男子でしたから。
「あ……尾奈くん……」
莉夢が、タオルでくぐもった、どうにか聞こえる小声で、名前らしき言葉をつぶやきました。
「お姉ちゃん、知ってるの?」
「莉夢、知っていることのすべてを話して」
姉と妹に問いかけられ、莉夢は緊張してわなわな震えながら……莉夢はいつもここまで弱気なわけではなく、喋らないといけない状況になった時だけ、口臭を気にしておどおどするのです……
「うちらと同じ……げらちお大学の、一年生」
げらちお大学というのはけっこう優秀な大学で、リスカはそこの卒業生、莉夢は現在三年生として籍を置いています。
後輩だと知って、リスカはさらに興奮しました。
「あはは、お姉様の『女』が反応してるよ」
梨柚の背中に当たっているリスカの 乳 首 が、どうやら 勃 起 したようです。
「でも、この子……ゲ イ 術学部だから……」
莉夢はそう言って、自分が不都合なことをしたわけでもないのに申し訳なさそうにうなだれました。
ゲ イ 術学部というのは ゲ イ の技術を磨くところだから、そんなのを学んでいる人間は十中八九、ゲ イ だと思って間違いないのです。
だけど、不屈のリスカは諦めません。
如何なる手段を用いてでも尾奈くんを手に入れるつもりです。
世界の未来の支配者が下僕を従わせるのは当然のことですから。
「男なんて ゲ イ だろうが何だろうが、私が ち ん ぽ いじくり倒してやったら尻尾振ってなびくに決まってるんだからっ!!」
顔に似合わぬ下品な、本領発揮です。