『おまたと、おくちと、わずかな勇気。』



「ふふっ、また神意を問うてみるか、うふふ……」
派手な金髪の巻き毛の、蒼白な美女が、不敵なくすくす笑いを浮かべながらメガネをはずしました。
妖しげなアイドルとかが着そうなゴスロリ風のドレスを脱ぎ、容貌とは不似合いな黒の ボ ン デ ー ジ 風の下着だけの姿になりました。
着痩せするタイプらしく、真っ白で柔らかそうな 乳 肉 が、ぎゅっと締めつけるブラジャーの上下から盛大に溢れています。
彼女は、月明かりに照らされた祭儀用梯子階段をゆっくりと上ってゆきました。
「この前のデブは役立たずだったからね。お姉さま、頑張れー! いいのが当たりますように!」
小さな女の子が、冷徹そうな目で姉を見つめながら、胸の前で手を組んで祈りのポーズを取りました。
なんだか白々しくも見える所作です。
もう一人、大柄な娘が口をタオルで押さえながら何か言っていますが、声が小さくて聞こえません。
階段のふもとには、プリクラよりひとまわり小さい、おびただしい数の男の写真がぎっしりと並べられています。
その数、ざっと十万枚。
巻き毛の女は三十メートルの頂上に達し、そこで物怖じせずにしゃがみました。
それから、ボンデージの股部分をずらして、お し っ こ のひと雫を慎重に搾り出し、ぽたりと落としました。
これで、とある目的遂行のために使役する手下を選ぶのです。
くだらなくて、時には恥ずかしいことを、格式ばって大袈裟に執り行うのが彼女たちの流儀なのです。
三人の女が目を凝らす中、お し っ こ の粒は、一人の不運な青年を射当てました……



いつの頃のことでしょうか。
日本國の何処か……人々に 淫 ら な気持ちをもよおさせるような空気が流れている場所……に、栗都(くりと)三姉妹なる美しくて邪悪で恥ずかしい姉妹が暮らしていました。


長女は栗都リスカ(くりと・りすか)。
とても奇麗な人で、表向きは大手の剥製製造会社で事務員をしていますが、それは仮の姿で、あくまでも副業。
内心では世界征服の野望を露わにした邪気がめらめらと燃えたぎっている、醜いバケモノのような女です。
白銀とレモン色を混ぜたようなきわめて眩しい金髪の、長くて激しくくるくる巻かれているのがとても目立ち、透き通るように白い肌をしています。
化粧で赤味を足したりもしないから、陶器のよう。
だけど純粋な日本人です。
金髪はもちろん、染めているだけですから。
身長は平均的でスタイルが良く、長い手足と形よく膨らんだ胸という理想的な肉体を持っています。
くりくりしているけど気だるそうな目と、薄すぎる肌の色は、彼女を虚弱気味に見せることも度々ありますが、実際にはまったくそんなことはありません。
きわめて強くて残忍な人間であり、肌の白は、制服であり戦闘服である ボ ン デ ー ジ 下着にとてもよく映えています。


次女は栗都莉夢(くりと・りむ)。
大学の三年生で、年齢は姉の三歳下、百八十センチを超えていそうな長身、プラスチックをこねて丸めたみたいなぼーっとして朧げな眼をしていますが、そこ以外は特に癖のない、愛くるしい顔立ちをしています。
太ってはいないけどむちむちで、嘘であってほしいくらいの 巨 乳 が神々しく、他の部位も、どこをとっても美味しそうな体。
肉 弾 ダイナマイトといったところでしょうか。
いささか残念なことに、物心ついた頃からずっと極端に口臭を気にする強迫性障害に罹っていて、常に口をタオルで押さえています。
そうしておかないと怖くて喋れないのです。
実際にはどちらかというと臭くないほうなのに。
タオルはずっと口から離さないから、唾を含んだ息がだんだん滲みて、どうしても次第に臭くなってゆきます。
それがまた彼女にとって強迫観念の裏付けとなってしまうのです。
悪循環。
自分で自分を追い込んでいる、哀れな人ですね。
水色がかった不思議な色の、長めのボブがだらしなく伸びた感じの髪が、おどおどした雰囲気にとてもよく似合っています。
ただでさえ声が小さいのに、いつでもタオルで塞いでいるものですから、聞き取りにくいこと甚だしいのが困りものです。


三女の栗都梨柚(くりと・りゆ)。
まだ小学生で、背丈もスタイルもそれ相応なのに世界の誰よりも妖艶で、姉二人とはいささか年齢が離れていますけど頭脳は桁違いに明晰で冷静。
でも、甘えん坊でかわいらしいところも持ち合わせている。
子供らしさと子供らしくなさとの使い分けが巧みなのです。
顔立ちは端正で、隙がなく整っています。
姉たちのどちらにも似ない天然のウェーブのかかった黒髪、切れ長で憂いと潤いを帯びた目、ぷっくりと艶めかしい、気持ち良さそうな唇。
キスと フ ェ ラ チ オ を永久に繰り返してほしい唇ナンバーワン。
だけど、レ ズ です。
性にまつわること以外の用途に肉体を使役するのを極度に億劫がり、運動神経は優れていると思いますけどスポーツは嫌いです。
その代わり、何時間でも、呼吸さえ感じさせないくらいじっと座っていたり寝ころんでいたりという、人形の真似ができる能力が備わっていて、しばしば役に立っています。


こんなふうに、莉夢にはいささか頼りないところがあるにしても、三姉妹それぞれが逸材で、なおかつ元々あくどい素質を持っていますから、自分たちがその気になればまずは世界の半分(つまり男たち)が征服できて、そこから広げてゆけばすべてを支配できるはずだと安易に錯覚盲信しているのでした。
身近に人生経験を重ねた立派で渋みのある大人がいて、馬鹿げた考えはよしなさいと諭してもらえればよかったのですけど、残念なことに彼女たちにはそういう人たちがありません。
両親も早くに失っていました。
梨柚を作るための 生 殖 活動直後に母親が父親をまるでカマキリのように食してしまい、その母親も出産後、時を経ずして 荒 淫 が祟って呆気なく亡くなってしまったのです。
でも先祖伝来の資産がふんだんに残されていましたから、親戚知人に頼るまでもなく自立を続け、三姉妹が身を寄せ合って「閉じられた」世界を構築するうちに、いつしか世界が自分たちの思うままになるなどという大それた妄念を強めるに至ったのでした。



お し っ こ 籤(くじ)は、世界征服活動なる悪事を手伝わせる手下を神託によって選ぶ、崇高な儀式です。
お し っ こ 珠の軌跡を見届けた後、リスカは三十メートルの高所から軽々と飛び降りて、羽毛のようにふんわりと着地しました。
すかさず、梨柚が目を写真に向けたままリスカにすり寄ります。
頭を撫でてもらうためです。
梨柚はいつもリスカにすり寄ります。
莉夢にすり寄ることは滅多にありませんが、莉夢が嫌いなのではありません。
莉夢の片手はいつも塞がっていて、存分に撫でてもらえないからです。
リスカは梨柚を後ろからふんわり抱きつつんで、頭をごしごし撫でてあげながら、一緒に写真を覗き込みました。
「ほお……」
選ばれし男の顔を見極めて、リスカの口から感嘆の息が漏れました。
手下にしてコキ使うのがもったいないほどの、かわゆい男子でしたから。
「あ……尾奈くん……」
莉夢が、タオルでくぐもった、どうにか聞こえる小声で、名前らしき言葉をつぶやきました。
「お姉ちゃん、知ってるの?」
「莉夢、知っていることのすべてを話して」
姉と妹に問いかけられ、莉夢は緊張してわなわな震えながら……莉夢はいつもここまで弱気なわけではなく、喋らないといけない状況になった時だけ、口臭を気にしておどおどするのです……
「うちらと同じ……げらちお大学の、一年生」
げらちお大学というのはけっこう優秀な大学で、リスカはそこの卒業生、莉夢は現在三年生として籍を置いています。
後輩だと知って、リスカはさらに興奮しました。
「あはは、お姉様の『女』が反応してるよ」
梨柚の背中に当たっているリスカの 乳 首 が、どうやら 勃 起 したようです。
「でも、この子……ゲ イ 術学部だから……」
莉夢はそう言って、自分が不都合なことをしたわけでもないのに申し訳なさそうにうなだれました。
ゲ イ 術学部というのは ゲ イ の技術を磨くところだから、そんなのを学んでいる人間は十中八九、ゲ イ だと思って間違いないのです。
だけど、不屈のリスカは諦めません。
如何なる手段を用いてでも尾奈くんを手に入れるつもりです。
世界の未来の支配者が下僕を従わせるのは当然のことですから。
「男なんて ゲ イ だろうが何だろうが、私が ち ん ぽ いじくり倒してやったら尻尾振ってなびくに決まってるんだからっ!!」
顔に似合わぬ下品な、本領発揮です。

『おまたと、おくちと、わずかな勇気。』



「ふふっ、また神意を問うてみるか、うふふ……」
派手な金髪の巻き毛の、蒼白な美女が、不敵なくすくす笑いを浮かべながらメガネをはずしました。
妖しげなアイドルとかが着そうなゴスロリ風のドレスを脱ぎ、容貌とは不似合いな黒の ボ ン デ ー ジ 風の下着だけの姿になりました。
着痩せするタイプらしく、真っ白で柔らかそうな乳肉が、ぎゅっと締めつけるブラジャーの上下から盛大に溢れています。
彼女は、月明かりに照らされた祭儀用梯子階段をゆっくりと上ってゆきました。
「この前のデブは役立たずだったからね。お姉さま、頑張って! 今回はいいのが当たりますように!」
小さな女の子が、冷徹そうな目で姉を見つめながら、胸の前で手を組んで祈りのポーズを取りました。
なんだか白々しくも見える所作です。
もう一人、大柄な女が口をタオルで押さえながら何か言っていますが、声が小さくて聞こえません。
階段のふもとには、プリクラよりひとまわり小さい、おびただしい数の男の写真がぎっしりと並べられています。
その数、ざっと十万枚。
巻き毛の女は三十メートルの頂上に達し、そこで物怖じせずにしゃがみました。
それから、ボ ン デ ー ジ の股部分をずらして、お し っ こ のひと雫を慎重に搾り出し、ぽたりと落としました。
三人の女が目を凝らす中、お し っ こ の粒は、一人の不運な青年を射当てました……



いつの頃のことでしょうか。
日本國の何処か……人々に 淫 ら な気持ちをもよおさせるような空気が流れている場所……に、栗都(くりと)三姉妹なる美しくて邪悪で恥ずかしい姉妹が暮らしていました。


長女は栗都リスカ(くりと・りすか)。
とても奇麗な人で、表向きは大手の剥製製造会社でOLをしていますが、それは仮の姿で、あくまでも副業。
内心では世界征服の野望を露わにした邪気がめらめらと燃えたぎっている、醜いバケモノのような女です。
白銀とレモン色を混ぜたようなきわめて眩しい金髪の、長くて激しくくるくる巻かれているのがとても目立ち、透き通るように白い肌をしています。
化粧で赤味を足したりもしないから、陶器のよう。
だけど純粋な日本人です。
金髪はもちろん、染めているだけですから。
身長は平均的でスタイルが良く、長い手足と形よく膨らんだ胸という理想的な肉体を持っています。
くりくりしているけど気だるそうな目と、薄すぎる肌の色は、彼女を虚弱気味に見せることも度々ありますが、実際にはまったくそんなことはありません。
きわめて強くて残忍な人間であり、肌の白は、制服であり戦闘服である ボ ン デ ー ジ 下着にとてもよく映えています。


次女は栗都莉夢(くりと・りむ)。
大学の三年生で、年齢は姉の三歳下、百八十センチを超えていそうな長身です。
太ってはいないけどむちむちで、嘘であってほしいくらいの 巨 乳 が神々しく、他の部位も、どこをとっても美味しそうな体をしています。
いささか残念なことに、物心ついた頃からずっと極端に口臭を気にする強迫性障害に罹っていて、常に口をタオルで押さえています。
そうしておかないと怖くて喋れないのです。
実際にはどちらかというと臭くないほうなのに。
タオルはずっと口から離さないから、唾を含んだ息がだんだん滲みて、どうしても次第に臭くなってゆきます。
それがまた彼女にとって強迫観念の裏付けとなってしまうのです。
悪循環。
自分で自分を追い込んでいる、哀れな人ですね。
水色がかった不思議な色の、長めのボブがだらしなく伸びた感じの髪をしているけど、顔立ちは隙がないほど整っています。
ただでさえ声が小さいのに、いつでもタオルで塞いでいるものですから、聞き取りにくいこと甚だしいのが困りものです。


三女の栗都梨柚(くりと・りゆ)。
まだ小学生で、背丈もスタイルもそれ相応なのに、世界の誰よりも妖艶で、姉二人とはいささか年齢が離れていても頭脳は桁違いに明晰。
子供らしさと子供らしくなさとの使い分けが巧みです。
姉たちのどちらにも似ない天然のウェーブのかかった黒髪、切れ長で憂いと潤いを帯びた目、ぷっくりと艶めかしい、気持ち良さそうな唇。
キスと フ ェ ラ チ オ を永久に繰り返してほしい唇ナンバーワンといったところ。
だけど、レ ズ です。
難点は、性にまつわること以外の用途に肉体を使役するのを極度に億劫がることで、実効的な運動神経が皆無に近いところです。

汁流戯毬毬(しるるぎ・まりまり)は希代の ヤ リ マ ン だ。
小学生の頃から二十六歳の今に至るまで、近隣のあらゆる種類の男たちとやりまくり、その数は優に五千人を超えるという。
もはや ヤ リ マ ン などという生易しい言葉で言い尽くせるレベルではなく、重度の セ ッ ク ス 依存症、ここまでくれば 狂 気。
修正の見込みのない壊れた心の領域で、足元もおぼつかなく彷徨っている。
一方では生来勉強が大好きで、それに相応しく、端正で真面目そうで堅そうでおとなしそうな、強度のメガネをまとった優等生の姿形を持っていて、乱れ切った 性 態 とどう結び付けていいのか、ギャップが途方もなさすぎる。
彼女の生活は、猛勉強をしているか、セ ッ ク ス か オ ナ ニ ー で 快 感 を貪っているかのどちらかだけで構成されてきたのだ。
勉強と性という相反するものにともに依存し、セ ッ ク ス の合間に激しく勉強し、集中力が切れそうになれば オ ナ ニ ー をする。
しばらく体をいじり倒したら、やる気がしゃきっと再生する。


幼少の折から 早 熟 で体格も良く、パンツの上からハンカチやタオルをこすりつける幼い オ ナ ニ ー を繰り返していたが、小学生になって セ ッ ク ス というものを知って以来、すっかり病みつきになってしまった。
同級生全員の 筆 お ろ し をしたのに飽き足らず、外で 街 娼 のように声を掛けまくり、大人のテクニックにも触れてきた。
やがて彼女は評判になり、街を歩けば 視 カ ン されたり、ビルの隙間や草むらに連れ込まれて犯されるようになった。
彼女の望んだ世界だった。
それでも勉強大好きで頭脳も生来明晰、肉 欲 に悶え解放しながら年月を重ね、最難関の大倭帝國大学を首席で卒業して外交官になった。
だが彼女の行状は改まらず、外国の貴賓とも セ ッ ク ス、しかも国の恥になるような下品な セ ッ ク ス を繰り返したため、すぐにクビになった。
彼女の初めての挫折だ。

*******


紗季がいなくなり、話し相手もいなくて生きている実感にも欠ける日々が何日も続いている。
身の置き所もなく、心の支えもなく、埋め合わせるものもない。
頭の上に常に重いものがのしかかっているような気分を、必死に踏ん張って耐えていたのだけど、そろそろ限界が近い。
押しつぶされそう。


身の置き所といえば……
何事にもちゃっかりしている絢ちゃんは、数日間は私の様子をうかがっていたけど、だんだんとぶしつけに媚びたような視線を送ってくるようになり、やがて、堂々と接近してくるようになった。
「この前はごめんね。あたし、どうかしてた。一時的に錯乱してたんだと思う。悪いものでも食べたのかもしれないね。ほんとにごめんなさい。男の子たちに襲いかからせた時も、中 出 し だけは止めたんだから、あたしにも善意のカケラが残ってることはわかってくれるよね。まぁこんな具合に本心から深く遺憾の意を表明してるんだから、許してください。また友達になってほしい……」
絢ちゃんが謝ってきた。
こんな、一見ふざけたような、持って回ったような言い方をするときの絢ちゃんは、本気だ。
絢ちゃんが本心から謝っていることは、私にはよくわかる。
かつて親友だったから。
考えてみれば……絢ちゃんも私と離れて以来、一人でいることが多い。
あんなに綺麗で、うわべの性格はかわいいのだから意外だけど、絢ちゃんも孤独。
あんなことがあるまでは気づかなかったけど、絢ちゃんには私しかいなかったんだ。
そうかもしれない。
綺麗すぎてお高いから、妬んでいる人も多いと思う。
私と絢ちゃんが友達になっていたのは、友達がいない者同士だったからということに、ようやく気づいた。
でも、過去のきっかけなど、今さらどうでもいい。
今、和解したら、私の体はすぐに満たされるだろう。
絢ちゃんは私を離さないだろう。
あの人のことだから、手段は選ばないと思う。
私の 性 欲 に訴えて、がんじがらめにしたり……。
紗季とあんなふうになる前に描いていた理想が手に入るだろう。
昔の私なら涙とよだれを同時に垂らして、這いつくばって喜んだはずのもの。
でももう、そっくり同じには戻れない。
本性がわかってしまったから。


尾波くんたち、紗季の元・取り巻きの男の子たちも、しきりに私に秋波を送っている。
あんなに狂ったお祭りのような日々が突然終わってしまって、空虚感は想像を絶するほどのものだと思う。
緊急で埋め合わせが必要で、同じものを失って居場所さえも無くした私が真っ先にターゲットになるのは当然だ。
玉突きみたいに転がって、私が紗季のポジションにおさまれば、丸く解決する。
需要と供給の、奇跡的なまでの一致。
でも、卑怯な彼らは自分たちから声を出して呼んだりせずに、私が歩み寄ってゆくのを待っている。
私が寂しさに耐え切れずに、恨みを捨てて陥落するのを、手ぐすね引いて待っている。
どっちが先に歩み寄るかで力関係が決まるから。


絢ちゃんと、男の子たち。
どちらもひどい。
愚劣。卑劣。
まともでない。
でも、私だって押しつぶされる前に居場所を見つけたいし、どちらかを選ぶしか救われる道がない。
私も孤独だし、きちんとした人間ではない。
あの人たちとたいして変わらない。
そして、どっちとくっついても、私にとってもあの人たちにとっても本質的に虚無であることに変わりはない。
ならば……
どちらにするかは、天秤にかけるまでもなく、決めてある。
私はおもむろに席を立ち、
「校歌なら……私にも歌えるよ……」
曇って視界が悪い中、生ぬるい温度のする方へ。
ゆっくりだけど真っ直ぐに歩を進めた。
うわごとのようにつぶやきながら。



終わり



長らくありがとうございました。

もう時間がない。
自然に抱き合った。
紗季の匂い。
汗っぽい匂い。
柔らかさ。
胸のふくらみ。
息遣い。
髪の感触。
脆そうで壊れそうで怖いけどそこが愛らしい、紗季が全身にまとっている雰囲気。
私は大きく息をして、細胞のひとつひとつに行き渡らせた。
どちらからともなく唇を重ねた。
少し荒れた唇。
嗚咽の音だけが支配する、しょっぱくて弱々しいキス。
卒業したら一緒に暮らそう、なんて紗季は言ってくれたけど、先のことなどわからない。
紗季が無事でいられるかもわからない。
もしかしたら、新しくてもっと濃厚な恋人ができてしまうかもしれない。
私にはどうすることもできない所で。
だから、こんなキスだけで終わらせられない。
「紗季……誰も見てないから……スカートをずらして」
「え?」
人目がないとはいえ、学校の中だ。
紗季は驚いて、目を丸くした。
「……蛇……もう一回、見せて」
紗季は一瞬、わけがわからなそうにぽかーんとしたが、
「そんなに気に入ってくれてたの!?」
紗季の表情が、泣き顔を崩さないまま喜びで歪んだ。
「紗季のいちばん気持ちいい場所だもん。しばらく見れなくなるから、よーく見ておかないとね」
紗季はスカートをはらりと下ろし、パンツもずらして、ブラウスの裾をめくり上げた。
あの稚屈な蛇と薔薇が現れた。
これは紗季自身の写し絵。
彫らせたのは男の子たちだけど、まぎれもなく紗季そのもの。
私は蛇の口、先が割れている舌に、キスをした。
「あ……」
紗季の体がびくんと震えた。
私は紗季の反応を確かめながら、舌を押しつけて、こするように這わせた。
ここさえ舐めれば、紗季との思い出は永遠に私のものになる……そんな気がした。
「あ、あ、あっ、あ、あん、あ……」
紗季の腰が砕け、崩れ折れた。
本当に、どうしようもなく、気持ちいいんだね。
初めて見せてくれた時、すぐに舐めてあげればよかった。
もっともっとたくさん、ずっと先まで、死ぬまで、舐めていたかった。
遠くで無常のチャイムが鳴ったけど、そんなものは鼓膜の手前で遮断した。。
しがらみからも時間からも浮遊して、このままずっと、無限のものだと錯覚したい……。

*******


青天の霹靂とは、まさにこのこと。
学校に着いて早々、とんでもない知らせを受けた。


紗季が、突然転校することになった。
この学校に来るのは今日が最後。
一時間目が終われば帰宅し、そのまま他県の全寮制の女子高に転入する。
朝のショートホームルームで、担任のグドウヒロスミ先生がそれだけを淡々と告げた。
当たり前のことしか書かれていない説明書を朗読するような口調で。
教室には、音のないざわめきが局地的に起きた。
ざわめいたのは、私と、紗季の取り巻きの男の子たち。それと、たぶん絢ちゃん。
他の人たちにとってはどうでもいいことだろう。
グドウ先生の無感情な態度には、かえって、面倒な奴を厄介払いできたという静かな安堵が含まれているように感じられた。
確かに、今までも紗季は先生たちの受けが悪いような気はしていた。
紗季の行動がどこまで学校に知られていたのかはわからないけど、保身第一の彼らの不祥事を怯える小動物のような嗅覚は、紗季の怪しさ疚しさを、かなり把握していたと思う。
でも今さら、そんなことはどうでもいい。
紗季がいなくなる!
遠距離恋愛? それよりももっと厳しい。
紗季の転校先は、素行に問題のある女子だけを受け入れ、特別の許可がない限りは外出を許さずに、学校と校舎内にある寮に閉じ込めておく、半ば監獄みたいな場所として有名なところ。
携帯の所持も禁止だし、噂では、手紙も届かないと聞く。
連絡も取りにくいし、会うことなどめったにできない。
私たちはどうすればいいのだろう……。


一時間目の授業など、まったく耳に入らなかった。
授業の内容はおろか、どの先生が来たのかすら見ていなかった。
授業が終わって、蒼ざめた男の子たちが紗季に駆け寄るのが見えたが、私はそれより早く紗季の腕を掴み、強引に連れ出した。
紗季と話せる最後のチャンスを、あんな人たちには渡さない。


周囲の目など、気にしている場合ではない。
いかがわしい子だと思われてもかまわない。
息せき切らせて、体育館裏の人目につきにくい場所まで駆けた。
「どうして転校するの? もっと前から決まってたんでしょ? どうして言ってくれなかったの!?」
紗季の肩を揺すって責め立てた。
「美羽も一緒に打ち上げをした日の夜……これがばれたの」
紗季は涙ぐみながら、TATTOOのある位置をさすった。
「怒られて、問い詰められて……エ ッ チ なことをしてるのも白状させられて……私みたいなダメな子は厳しいところに閉じ込めて、性根を叩きなおさないといけないからって……お父さんがすぐに転校の手続きをしたの。……卒業するまで帰ってくるな、って……」
親としては、だらしない娘を狼みたいな男の子たちがのさばる場所に放しておくのは心配だろう。
その気持ちはわからなくもない。
でも……
紗季はここにいるほうが絶対にいいと思う。
私がそばにいることだけが、紗季を守れることなのに。
紗季がこれから行く場所。
そんなところで紗季がうまくやっていけるとは、到底思えない。
女の子だけの園では、たぶん紗季は孤立するだろう。
孤立して、いじめ抜かれるだろう。
ボロ切れみたいになるかもしれない。
壊れてしまって、何もできない人になってしまうかもしれない。
私みたいに レ ズ 心を秘めた人と偶然キスをして、それが相手の恋情に昇華する幸運にでも恵まれない限りは。

*******


どうやって家に帰れたかも覚えていない。
そのまま起き上がれる気になれなくて、翌日から一週間、学校に行けなかった。
その間、何を考えていたのか思い出せない。
たぶん、何も考えなかったのだと思う。
じっとうずくまって、癒されることのない痛みに、しかたなくでもいいから慣れるのを待っていた。
一週間で動けるまでに気持ちが回復した。
一週間経っても紗季に対する恋情が消えていないのを確認できたからだ。
紗季のおかげで酷い目にあった。
でも、紗季に悪意が全くないことはわかっている。
たぶん紗季は誰が何をしても憎まない。
人を憎む能力が欠けているのだろう。
紗季をダメな人だとも思えなかった。
紗季が孤独を解消するには、あれより他に道がなかったのだと思う。
私がもっと早く、男の子たちより早く、紗季と出会って恋をしてあげればよかったのだけど、それはどうしようもないこと。
そうならなかった自分の運命を呪うだけ。
紗季が悪くないと納得できたら、愛しさが増した。
無性に会いたくなった。
紗季と肌を触れ合わせて、一週間前に付着した毒を落としたいと思った。
それができるのは紗季だけ。
私には紗季しかない。
だから学校に行けたのだろう。




※ あと3回で終了です。

『物騒寺住職(ぶっそうじじゅうしょく)』



物騒寺住職 第一段


何処かの山中に聳える物騒寺に怪僧がいた。
もう若くはないが顔立ちは珠の如く若い娘の如く美しく、柔らかくて透けるような白肌を持ち、髭は無い。
五厘に刈られた鮮緑の頭髪は、深蒼色の頭肌に白銀の影を差す。
彼が怪僧たる所以は、袈裟の下に秘められたる イ チ モ ツ の奇態振り。
独立した軟体な生き物を身に這わせているかと見まがうばかりの千変万化。
フル 勃 起 の状態で、常軌を逸したほど細くて長くなったり、短茄子のように短く太くなったり。
しかし形は変われども、体積は変わらない。
由って、太くて長くはならないところが無念。


住職は寺の地下牢に稚児を養っていた。
一匹や二匹でなく、おびただしい裸の稚児が肌を密着させてひしめいていた。
仲買人を通して調達したのだ。
一様に、髪を臍のあたりまで伸ばさせたり、足りぬ者には鬘を宛がったりし、女のような風貌をさせていた。
しかし皆、男児であるから肌や ち ん ぽ が擦れ合う刺激で 勃 起 し、至る所で寸断なく 射 精 が為され、皆、ぬ る ぬ る していた。
住職はその情景と物凄い臭いを鑑賞しながら瓢箪酒と干魚を喰らった。
とんだ生臭坊主であることよ。




物騒寺住職 第二段


住職は夜毎に気に入った稚児の一人を選び僧坊に連れ出し、思いのままに犯す。
抱きしめ、口を吸い、転がし、タ マ タ マ 袋を舐めさせ、住職自身も稚児のを舐め、貪り、尻に 挿 入 し、泣き喚きながら激しい ピ ス ト ン を行う。
挿 入 当初は細長かった ち ん ぽ は 欲 情 とともに張りつめ、次第に短く太くなってゆき、射 精 に至る前に稚児の 肛 門 を裂く。
精を放って果てた後、あまりの痛さに失神した稚児の腹を捌き臓物を抜き、火で炙りながら千切って喰らう。
これは日常。
性 交 の直後に相手の肉を喰らう、その味は格別。
「今日の稚児は特に上物じゃ。美味すぎて頬っぺたが落ちそうじゃわい」
住職は手の甲で涎を拭い、からからからと笑った。
とんだ生臭坊主であることよ。




残念寺住職(物騒寺住職 第三段)


隣山の残念寺にも怪僧がいた。
相当な 自 慰 常習者だった。
千年伝わる木魚の皹(ひび)に イ チ モ ツ を含ませ、バチでぽくぽくぽくぽく。
震動と反響で イ チ モ ツ はめろめろになり、至宝の木魚の中を精で汚した。
途端に天誅が降る。
木魚の皹が、唇を閉じるように貼り合わさり、イ チ モ ツ は瞬時に噛み切られた。
こうして貴重な物を失った残念寺住職は痛みと怒りと悔念で怨霊と化し、物騒寺を襲った。
かねてより交遊があり物騒寺の構造を知っていたので、美味しそうな獲物が収納されている地下牢のみを狙い、何体もの稚児の ち ん ぽ を噛み千切ったのだ。
物騒寺住職は懲りて、噛み千切られやすい形状の物を 股 間 に宿していない、女を何体か買って補った。
因みにそれまで住職には 女 色 の経験はなかった。
男 色 和尚の黄昏かな。




物騒寺住職 第四段


買った女に、特にお気に入りの娘が‭一人あった。
娘は住職の元で出家させてほしいと懇願したが、住職は許さなかった。
それどころか、自身でスケスケの袈裟を着て見せて、挑発した。
娘は敢え無く濡れた。
「この寺に破戒僧はワシ一人で十分。お前は俗人のまま、ワシと 性 交 しまくるのじゃ」
何て勝手な住職だこと。




物騒寺住職 第五段


男 色 に染まり切って半生を越えた住職は、女人と接して“ほと”(或いは“つび”)に挿入するよう咄嗟に反応することができず、どうしても誤って 菊 門 に 挿 入 してしまう。
それ故、入れてはならぬ目印として、菊 門 に菊の花を挿した。
その、間抜けだが秀麗な光景を嘆美し、この 変 態 住職にしては珍しく、しばし 挿 入 を忘れ、見入ってしまった。
風流なことよ。




物騒寺住職 第六段


死期を悟った住職は深山に籠もった。
数年後、弟子の小坊主が跡を訪ねると、雨風で傷んだ袈裟の上に 男 根 が一本落ちているだけだった。
その 男 根 は今でも物騒寺に保管されているらしい。



終わり

「見ろよ。俺たちみんながここをしつこく舐めるから、ここがすっかり開発されて、最高の 性 感 帯 になったんだ」
尾波くんがTATTOOを舐めながら絢ちゃんに得意げに説明している。
「人間の体ってすごいだろ。どんなところでも 快 感 を味わい尽くせるようにできてるんだ」
「ふうん、い や ら し い ね」
絢ちゃんは膝で頬杖をつき、覗き込んでいる。
「それで、ここを舐めて 前 戯 してあげた後で や り ま ん お ま ん こ に入れるの?」
「そうだ」
「やってみて」
「え、もう?」
「うん。早く見たい。っていうより、早く見せてあげたい。この人の恋人の美羽ちゃんに」
「そうか。なら、リクエストに応えて」
尾波くんは手早く コ ン ド ー ム を装着して 正 常 位 で紗季にかぶさり、すぐに腰を く ね ら せ 始めた。
「あ、あっ、あっ、あっ……」
紗季の声が悲しいリズムを打った。
「ぬ あ っ、今日は……篠田さんに見られてるから、変な気分になって……一段と気持ちいい……う、す、すごい! 締めつけが……紗季も緊張して、ぎゅっと締まってるんだ! あ ぁ っ……あ、あ ぁ ん……」
尾波くんまで、あられもなく気持ちよさそうな声を出した。
「ところでさー。今ここに三人の女がいるんだけど。鞠川はいつもどおりやられてる。あたしは面白い見世物を見せてもらう代金として腕を舐められてる。あと一人、何もやってもらえてない子がいるよね。その子、寂しがってると思わない?」
悪魔が残りの男の子たちを挑発した。
「で、でも……」
男の子たちは顔を見合わせた。
「あんたたち、意気地なし? 股にぶら下がってるそれって、ただの飾りなの? 女をほっとくなんて、なさけなくない?」
性 器 を馬鹿にされて、いちばん気の短そうな 穴 尻 くんが激昂した。
「うるさい! やればいいんだろ!」
私は服を切り裂くように脱がされ、狭いベッドの紗季と尾波くんが絡んでいる横に押し倒された。
抵抗したけど、力が圧倒的にかなわなかった。
紗季はガラス球のような目で私を見て、口元をふわっとほころばせた。
私は気が遠くなっていった。
その後は入れ代わり立ち代わり、唇をむさぼられ、お っ ぱ い を 揉 み し だ か れ、至るところに ね ち ね ち 触れられ、硬い お ち ん ち ん を 太 腿 にこすりつけられ、無理やり お ち ん ち ん を握らされて 手 コ キ をさせられ……
口に突っ込まれ、ク リ ト リ ス をいじられ、すべての肌に お ち ん ち ん をこすりつけられ……
「挿 入 はダメだよ。妊 娠 したりしたら面倒だから」
絢ちゃんの言葉のおかげで最後の一線だけは越えられなかったけど、お ま ん こ の中以外のすべてを 精 液 まみれにされた。
私はまったく気持ちよくなかったし、喘 ぎ 声 も出していないはずなのに、「チ ン ポ 突 っ 込 ん で ないのにこんなに ヨ ガ る なんて敏感だな」とか「すごく い や ら し い 声。録音しとけば高く売れるんじゃないか」とか、周囲が私を嘲った。
みんなには私の声が、幻聴のように聞こえているのだろうか。
それとも……私は絶対に認めたくないんだけど、無意識のうちに 快 感 に浸って、気づかないうちに い や ら し い 声を出してしまっていたのだろうか……。


悪夢のような出来事について、これ以上は語りたくないけど、二つだけ、言っておきたい。
絢ちゃんは「いい気味だ」とか言いながら、私の顔に次々に男の子の 精 液 がかけられるのを見ていたけど、二周目に入ると、うんざりしたみたいで、苦いものを噛んだような顔で「もういい」と閉会を宣した。
それで私は解放された。
紗季は、い じ く ら れ て い る 私に向かって、
「気持ちいい? よかったね、あはは、みんな友達だー」
曇りのないうつろな目で、確かにそう言った。
いつもと変わらない、空虚な目。
そうだ。その時やっとわかった。
紗季の目はすごく澄んでいて、綺麗。
その美しさの源泉がわかった。
紗季の瞳には、苦しみや悲惨さが、いっさい映らないのだ……。