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もしこの世界がとある映画の巨大なセットだとしたら


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  もしこの世界がとある映画の巨大なセットだとしたら誰がその主人公を務めることになるだろう。昔、僕には小説家を夢見た時期がある。中学から高校にかけて のことだった。その頃書いていた物語といえば駅伝に挑む少年や『小さな恋のメロディ』のような恋愛小説など個人を扱ったものが多かったけれど、より大きな ストーリーを描くことができないかと僕は群像劇に挑んだ。喫茶店でアルバイトする女の子にそのマスター、さらに常連の20歳 の浪人生や近くで働くサラリーマン。そんな風に主人公を一人に限らず、様々な視点を盛り込むことで僕らが生きる営みをもっとリアルに描き出すことが出来 る。そう考えてペンを取るのだけれど、どうしても物語を書き進めていくことが出来なかった。そういった複雑な事柄を書き著すのにきっと僕は若すぎたのだろ う。


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 それから少し時が経ち、僕は渋谷のマンションに暮らす大学生となった。当時の原宿や渋谷では今思い出してもユニークな群像劇が繰り広げられていた。



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  僕の家は神泉の方にあったのだけれど、帰り道に使う道玄坂はチーマーの溜まり場だった。彼らはライダースジャケットにベルボトムのデニム、足元にはエンジ ニアブーツをトレードマークにしていた。当時、僕は髪の毛をとても長く伸ばしていたから彼らによく目をつけられたものだった。パーティー券を売りつけてくるか、あるいは単なる暇潰しの喧嘩か。寄ってくる彼らを吹っ切り、道玄坂を足早に抜けるのが1日を終える儀式のようなものだった。そうして坂を抜けたら今度は無数のラブホテルが立ち並ぶ裏路地に入る。僕の家のちょうど向かいにもラブホテルがあって、時にはドラマで人気の女優が入っていくのを目にした。渋谷は今以上にとてもざわついた街だった。



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  けれど僕の当時の生活拠点はむしろ原宿にあったと言えるだろう。僕は当時裏原系と呼ばれるブランドに熱を上げていて、彼らの作るTシャツを手に入れること に命を賭けていた。真偽のほども定かではない入荷の噂を聞きつけては友人と店の前で何時間も並んだものだ。中でもノーウェアは当時最も人気のあったショッ プで開店待ちの人数も桁違い。なぜそうしたのかは今もわからないけれど、店の前で右側と左側に分かれて並び、オープンと同時に店内へと走るのがルールだっ た。もしその中にワンウォッシュデニムとボーダーを合わせている男の子がいたら渋谷系だと思って間違いない。彼らはフリッパーズギターやピチカートファイ ブの楽曲に魅せられたグループで小奇麗な格好を好んだ。そんな時から僕の横にいたのは、後にglambを一緒に立ち上げる多久和だった。彼のデニムもワンウォッシュデニムだったけれど、古着屋の目利きが見ればすぐにそれがデッドストックの501XXだ と気づくだろう。多久和は古着系で、そのデニムはヴィンテージブームによる価格高騰も手伝って彼のアルバイト代何か月分かに相当するものだった。プロペラ 通りから表参道の方に目をやれば、歩行者天国でロックバンドが演奏しているのが見えた。当時の東京にはとにかく色々な人種が存在して、それぞれが群像劇の 主人公だった。



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 1990年代はどこかのグループに属して、共通の洋服を着ることでアイデンティティを持つことができた。それから20年 ばかりが経って、東京は昔よりずっと自由になったと思う。グループの概念が希薄になった今はむしろ自分自身で着る洋服を選び、組み合わせることで自分の像 を形作っていく時代だ。ロック、モード、トラッド、ストリート。僕らは様々なファッションを思い思いに組み合わせて楽しむことができる。


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  だからこそ今回のコレクションでは作る洋服に明確なジャンルを定めず、僕のこれまでのファッション体験にあるモチーフから幅広く洋服をデザインしていっ た。是非皆さんにもインスピレーションの赴くままに洋服を選び、自分自身を表現するスタイルを作ってもらいたい。きっとその時、昔僕が書くことの出来な かった群像劇が皆さん一人一人を主人公に再び始まるのだろうから。





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glamb designer

古谷