ワルキユーレ 第三幕 一場 2 | 神鳥古賛のブログ

神鳥古賛のブログ

古典。読めば分かる。

 リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。

その第一夜「ワルキユーレ」より第三幕一場。

続々とワルキユーレたち集まり、ワルハル城の大神ウオータンのもとに成果を奉る手筈なるに、未だブリユンヒルデ来たらず。







「ワルキユーレ」 第三幕 一場



(ゲルヒルデ)


 森にて休らへ


 馬に草飼へ矣。



(オルトリンデ)


 牝馬をかたみに


 分けさすべけれ、


 益荒男らの


 敵意止むまで矣。



(ワルキユーレたち)


 ハハハハ、等



(ヘルムウイゲ)


 益荒男の怒りは


 芦毛ぞ晴らせれ矣。



(ワルキユーレたち)


 ハハハハ、等



(ロスワイセ、グリムゲルデ)


 ほお、よを、とをほお矣。



(ワルキユーレたち)


 御座在れ矣。御座在れ矣。



(シユウエルトライテ)


 恆(つね)二人なりしや。



(グリムゲルデ)


 行きは別ちなれど


 けふ行き合ひたる。



(ロスワイセ) 


 我れら皆揃へり、


 長く居(を)るべからず。


 ワルハルに向かはな、


 ウオータンに届けものを。



(ヘルムウイゲ)


 我れら八たりのみ。


 ひとり欠けつ。



(ゲルヒルデ)


 異色(こといろ)のウエルズングの


 もとにあれ、ブリユンヒルデは。



(ワルトラウテ)


 待たざるを得ず


 我れら此処に。


 いくさ神、父は


 荒ぶる


 彼れ伴なはざれば矣。



(ジークルーネ)


 ほお、よを、とをほお矣。


 これよ矣。これよ矣。


 脇目も振らず


 来る、ブリユンヒルデや。



(ワルキユーレたち)


 ほお、よを、とをほお矣。


 ブリユンヒルデ矣。はい矣。



(ワルトラウテ)


 樅(もみ)の森へ駈る


 よろめく馬を。



(グリムゲルデ)


 喘ぎぬ、グラーネや


 劇しき走りに矣。



(ロスワイセ)


 曾て見ざる


 ワルキユーレの速さ矣。



(オルトリンデ)


 何んぞ鞍に載せゐる。



(ヘルムウイゲ)


 益荒男ならず矣。