ワルキユーレ 第二幕 四場 1 | 神鳥古賛のブログ

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古典。読めば分かる。

 リヒヤルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」の日本語版を作成せんとす。

その第一夜「ワルキユーレ」より第二幕四場。

横たはれるジークムントと、気を失へるジークリンデのもとに、二人の運命を告げに、ブリユンヒルデ現る、この劇に多用さるゝ「Wal」なる言葉は「戦死者」との事なり。









「ワルキユーレ」 第二幕 四場

 

 

(ブリユンヒルデ)


 ジークムントよ矣。


 見よかし、我れを矣。


 爾はやがて、


 我が率ゐん身ぞ。



(ジークムント)


 誰そや、もの云ふ、


 気高くも厳かに立たし給ひ。



(ブリユンヒルデ) 


 死にゝ定められある者のみ


 我れをば見るなり。


 我れが見え分くは、


 命の光離(か)れ行くなり。


 いくさのにはに唯だひとり


 尊きにのみ顕はるゝ。


 我れをば見出でしは、


 討ち死にすと我が認めし矣。



(ジークムント)


 その率ゐ奉りて、


 いづこ導く、その益荒猛男を。



(ブリユンヒルデ)


 いくさ神たる父は、


 爾を選び、


 我れは導く。


 爾をワルハルへ、神の城へ。



(ジークムント)


 そのワルハルの城に


 いくさ神の父のみを見るや。



(ブリユンヒルデ)


 果てし益荒猛男の


 見事な群れが


 暖かく迎へん


 いと恭しき禮(ゐや)もて。



(ジークムント)


 見出づべきや、ワルハルに


 ウエルゼを、まことの父をば。



(ブリユンヒルデ)


 ちゝのみの父を見


 出でんウエルズングは將に。



(ジークムント)


 言問ふやワルハルに


 花めくをみなは。



(ブリユンヒルデ)


 望みの乙女らが


 切り盛りす。


 ウオータンの娘子ら


 貴(あ)てにも神酒をばたてまつらん矣。



(ジークムント)


 いとも畏み申す、


 かむろみの尊(みこと)と覚りぬ


 ウオータンの子と。


 されど一つ言問はん、とはなる人よ矣。


 伴はんや、いろせは


 娶れる妹なねを。


 妻(め)を捲くや、ジークムントは


 ジークリンデを、そこに。