このブログはささっと書けるといいなあ。
2回アカデミー最優秀女優賞を獲得したヒラリー・スワンクが(多分)初めて出た連続テレビドラマ。
シーズン1の途中まで見て結構いいので、ブログを書くことにした。個人的には、アラスカという土地柄、全体的に静かで、人々が暖かいのが都会と対照的な感じでいいなと思う。重大事件を扱っているんだけれど、静かに淡々と語られていて、派手で、センセーショナルな雰囲気が全然ない。そこが気に入っている。
ヒラリー・スワンクは、ニューヨークの大手新聞社に勤める、嫌な性格の持ち主だが、やり手の女性記者、アイリーン・フィッツジェラルドを演じている。彼女の目から見て悪いことをしていると思った人物に対しては、たとえそれが友好国の将軍であっても、他国の首相であっても、著名な政治家であっても、一人で突っ走って、つき進み、記事にして、その人物を公に露出する。彼女の手法や、記事の内容に意見を言ったり、提案をしたり、情報源が信用できないのでは、などと助言する周りのスタッフには、容赦なくきつい、攻撃的な言葉を浴びせて、受け入れようとしない。アシスタントからは、職場のいじめとして訴えられたり、編集者の意見を聞き入れなかったりで、とうとうくびになってしまった。
それから数か月、彼女を雇おうとする報道機関はどこもなかった。彼女は焦っていた。と同時に、あきらめの気持ちもあって、彼女がくびになった原因の出来事について、本を書こうとしていた。彼女はまだ若かったので、引退には早かったが。自棄になっているときに昔の上司が突然訪ねてきた。スタンリー・コーニックというこの男は、昔彼女が駆け出しの記者の時の上司で、すべてのことを教えてくれたいわば恩師だった。スタンリーはずいぶん年を取って、着ている服も昔のきびきびした記者風ではなく、よれよれだった。動作ものんびりとしていた。
この上司は都会の新聞界から引退して、故郷のアラスカに引っ込んでいた。アラスカの小さな新聞会社、アラスカデイリーの所長をやっていた。スタンリーはアイリーンに、1年契約でアラスカに来てほしい、と言った。「好きにやってもらっていい。」アイリーンは笑った。自分がそんな弱小会社に勤めるわけないだろう。帰ってくれ、と。アイリーンは言った途端に後悔した。スタンリーは黙ってアイリーンの屈辱的な言葉を聞いていたが、「近所にまあまあのイタリアンはないか?」と言ってアイリーンを食事に誘った。アイリーンはクビになってからほとんど外に出ていなかった。
食事をしながらスタンリーは、自分の今の仕事を気に入っている、と言った。新聞社もいい仕事をしている、と。「ご存じのようにアラスカ州は広大だ。しかし、わが社は最近縮小されて、100人のレポーターを25人に減らされてしまった。いろんなところで重大な事件が起こっているのだが、カバーしきれないんだ。優秀なレポーターが必要なんだよ。君は一流のジャーナリストだ。君が来てくれれば新聞社の宣伝にもなるし、君がカバーしてくれるストーリーは大々的に取り上げられるだろう。そうしたら、我々は存続していけるんだ。」
Stanley
スタンリーは、エスキモー系の若い女性の写真をアイリーンに見せた。「彼女はアラスカの小さな村の出身でね。2年前に行方不明になり、数か月後、遺体が発見されたんだ。警察は事故と断定したが、母親はそれには同意していない。」「アラスカの女性の殺人事件がなぜ私に関係があるの?」とアイリーンは聞いた。「彼女は原住民なんだ。」とスタンリーは言って、カバンから書類の束を取り出した。「彼女たちも全員、原住民なんだ。」アイリーンの顔が曇った。書類を手にとってぱらぱらとめくっていくと、100人ぐらいいるだろうか。全部、原住民の若い女性の、行方不明、というチラシだった。「こんなに若い女性が行方不明になり、殺害されているのに、被害者が原住民の場合は警察は一向に真剣に扱おうとしない。これらの女性すべてが葬り去られているんだよ。重大事件なんだ。」
家にもどってアイリーンはネットでスタンリーに見せられた女性の調査をした。アラスカデイリーの記事が1枚あるだけだった。アイリーンはスタンリーに電話をかけて、「こんな重要な事件なのに、あなたたち簡単な記事を1枚ネットに載せただけじゃない。」「そうなんだ。警察は全然協力的じゃなかったし、それ以上の情報を得ることができなかった上に、ほかの事件が次から次へと起こったから、それ以来ほっぽった状態になっているんだ。」「そんなのおかしいわ。警察にもっと当たることができるはずよ。調べればもっと出てくるはず。今からだって。」「ということは、君は協力してくれるのか?」アイリーンは黙ってしまった。即答できない。「スタンリー、本だって書き終えたいし」「君の本も重要だ。それは認める。けれど、これは、国全体にかかわる重大事件だぞ。本はアンカレッジで書いたらいいじゃないか。」「まだ心の準備ができてないわ。急にアラスカまで引っ越すなんてできない。」「アイリーン。君は今心穏やかじゃないかもしれない。怒っているだろう。世間を敵に回したいと思っているだろう。けれど、君はまだレポーターとして終わっていない。君だってそう思っているだろう。」「切るわ。おやすみ。」アイリーンは電話を切った。
そして、アイリーンはアラスカに飛んだ。
ニューヨークでトップの記者だったアイリーンが、アラスカの田舎にある弱小新聞社でやっていけるか。
最初は馬鹿にして、批判的だったけれど、だんだんこの小さなニュースルームにも情熱を燃やして事件を解明しようとしている有能な記者たちがいることを知った。特に原住民のレポーターは、若い女性の失踪・殺人事件を自分に起こったことのように、一人で調べ、戦っていた。アイリーンは、彼女の能力の限り、他の記者たちと合同で取材し、事件を解明し、良い記事を書き、新聞社に貢献した。
他の記者たちもだんだんアイリーンを仲間の一人として扱うようになった。新聞社の人間は、自分たちの仲間を家族のように扱う、気の良い人たちだった。大都会ではなかったことだ。
原住民の若い記者、ロズ
アイリーンとパートナーの若い原住民の女性記者は、行方不明になった女性の、地の果てにあるかのような出身地まで訪ねたり、遺体が発見された場所に行った。
そうしているうちに、アイリーンも土地の人間になっていくのだった。
という話。過疎地だからこそ大きな事件が起こっても隠れている。悪い人は誰も注目しないことを利用して、好き放題するのだ。このドラマはそれを静かに、論理的に、淡々と語り、全国で取り扱われるに値する記事にして明るみに出していく。
追加:今最終エピソードを見ているのだが、終わりがものすごい。アイリーンは、最初に見せられたアラスカ原住民の女性の失踪事件を、アラスカ原住民女性である、パートナー記者のロズと追う。アラスカ警察は、失踪した女性の知り合いの原住民の若者を逮捕。二人は誤認逮捕であることを証明するため、犯人を突き止めようとする。
この二人の記者は途中経過を記事に書いてどんどんネットにあげ、不当であるとして原住民男性の無実を訴え続けていたが、それが大都会の新聞社の目に留まり、アイリーンはニューヨークタイムズ紙から、ロズはなんとワシントンポストから引き抜きの声がかかった。
同時に、失踪したアラスカ女性のデータベースが全く存在しなかったため、アラスカデイリーは、独自で過去に失踪したアラスカ原住民女性全員のデータベースを作成した。最後のエピソードでその内容が発表されるのだけれど、あまりの多さに胸を突かれた。アラスカの地図がびっしり埋まってしまうほどの数の女性が殺害されたか、重傷を負わされたか、失踪していた。過去100年の届け出があったものだけを集計すると、1000人以上いるそうだ。警察は、ほとんどどれも事件としてまともに扱っておらず、容疑者とおぼわしき者(全員男性)がいてもそれを記録に残すことなく、全部取り下げ、容疑者は全員釈放されていた。「たかが女性に暴力をふるっただけで犯罪者にしてしまうと、人ひとりの人生が台無しになるから」だそうだ。それを見て、なぜか涙が出た。
残念ながら、思うような視聴率がとれなかったことから、この番組のシーズン2はないようだ。とても重要な話だと思うし、アラスカの生活の様子とか、歴史、人など、まだ知りたいこともいっぱいあった。ヒラリー・スワンクや、編集者のスタンリーを演じたジェフ・ペリーも好演だったので、残念だ。